9月17日

 8時には起きるつもりでいたのに、9時半頃まで眠ってしまっていた。電車に乗って広島市内に出かけ、12時に放送局前で待ち合わせて、コメダ珈琲で打ち合わせ。1時間半ほどで終わり、近くのお好み焼き屋「はぜや」に駆け込む。14時までの営業と書かれていたので、もしかしたら13時半がラストオーダーかもしれないと思ったのだが、14時までは入店できるらしかった。瓶ビールと肉玉そばを注文。お好み焼きは焼きあがるまでにどうしても時間がかかるけれど、今日は朝ごはんを食べておらず、しばらく空腹に耐えなければなと思っていると、あっという間に焼き上がる。これまで訪れたお好み焼き屋さんで一番早いと感じるほどで、驚く。しかも細かく切ってくれていて、飲みながら食べるのにちょうどいいサイズだ。おいしく食べ終える。

 食後は平和祈念資料館を訪れる。展示をリニューアルしてから初めて訪れるが、何度も訪れたことがあり、風景というよりも感情や気分として記憶されているので、前がどうだったのかはさほど覚えていない。エスカレーターを上がると、原爆が投下される前の広島の街並みを撮影した写真が大きく貼られてある。中心部もこんなに木造家屋ばかりだったのだなと思う。元安川のほとりにも木造家屋が並んでおり、家の裏側から川べりまで、それぞれの家から階段がある。そこで洗濯をしていたのだろう。そうした生活が元安川のほとりに――広島の中心に――あったとは、今まで想像したこともなかった。路面電車の軌道があり、路面電車のすぐ後ろを、自動車が走っていることに驚く。馬車もその軌道を走っている。

 そんな写真をまじまじと眺めて、最初の部屋に移動すると、三方の壁にわたって原爆投下後の広島を撮影した写真が大きく展示されている。さっき目にした風景が、一瞬にして灰塵に帰したのだとよくわかる。写真のところどころに人の姿が見える。終盤には、8月7日に掲げられた「復興」と書かれた旗も展示されているけれど、この風景から復興を考えることができたのはすごいことだ。

 1時間かけて展示を観終えて外に出る。展示室を抜けた先に見えてくる、平和公園の緑がとても鮮やかに感じられる。今回はサンダル履きで帰省してしまったけれど、明日からのロケは靴でお願いしたいと依頼され、安いものであれば経費でお支払いしますのでと言っていただいていたので、まずは靴屋を探す。本通りを少し歩いたが見当たらず、市内電車で駅前まで引き返す。もうすぐ取り壊されてしまうという駅ビル――僕が高校生の頃はまだ真新しかった――に「ABCマート」が入っているとGoogleマップが言うので行ってみると、とても小さな店舗である上に、女性ものを中心とした品揃えだ。駅前すぐの百貨店も覗いてみたがスニーカーはあまり売っておらず、諦めて実家の最寄り駅まで引き返し、車で隣町に出かけることになる。ショッピングモールの「ABCマート」でアディダスのスニーカーを物色して、これなら経費として認めてもらえるだろうと、7千円のスニーカーを買い求める。

 靴を買い終えて実家に戻ると、ちょうど夕暮れ時だ。せっかくだから田んぼを眺めて歩いておく。休耕田となり、74歳になった父が草刈りするだけになって何十年が経過した田んぼだ。先日観た『ルイ・ルイ』でこーじさんが「米は作ってみたかったな」と言っていたことが頭をよぎり、この田んぼでどれくらいのコメができるのだろうかと考える。18時半、夕食。シチューとサラダのようなスパゲティである。ビールを2本飲んで部屋に上がり、白牡丹を飲みながらひたすらテープ起こしを続ける。