10月3日

 昨日はお酒を飲まなかったのに、8時半まで眠っていた。まずは茹で玉子を作り、食べながら琉球新報を読む。1面から3面まで、アメリカが日本に新型中距離弾道ミサイルを配備する計画を進めているという記事でほぼ埋め尽くされている。情報元となっているのは「ロシア大統領府関係者」へのインタビューであるのだが、名前も明かされていないところが気にかかる。それは、「名前も明かされていない記事は信じるに値しない」ということではなく、「そのようにしてロシア側の意向がリークされること(およびその場所としてメディアが用いられること)」に対して思うところがある、ということだ。実際、「関係者」が発信しているメッセージは、ミサイルが配備されればロシアとしても日本にミサイルを向けざるを得ず、それでは北方領土問題が進展するはずもない、というものだ。メディアの側も、この取材にメッセージを持たせようとしており、「そんな中、日本政府は時代遅れの米海兵隊の軍事基地を沖縄に造ろうとしていることをどう思うか」という質問を投げかけている。これに対して「関係者」は、「時代遅れではない」と第一声で断った上で、「沖縄の軍事基地を米国が必要としているのは米軍機を展開できるからだ」「米国の軍事専門家は大なり小なり今後2、3年に米国と中国の軍事衝突は避けられないとみている」とコメントしている。続けて朝日新聞を読んでみると、これに関連した記事は一切掲載されていなかった。もちろん「新型の中距離弾道ミサイルを沖縄に配備する」ということは、決定事項として発表されたことではないけれど、アメリカが中距離核戦力廃棄条約を更新せず、8月2日で失効させたのは、この同盟とは無関係である中国がミサイル開発を進め、10月1日の軍事パレードでも脅威となる新型ミサイルがお披露目された今、アメリカとしても中国を牽制するためのミサイル配備を考えているのは確かだろう。琉球新報の記事を読むと、アメリカの新聞や雑誌では、中距離核戦力廃棄条約が失効したことを受けて、アジアに新型中距離ミサイルを配備するのは間違いないだろうという議論が掲載されているようだ。でも、今日の朝刊だけでなく、過去の記事を検索してみても、朝日新聞では「中距離弾道ミサイル」に関する記事は8月以降ほとんど掲載されていない(数少ない例外が、玉城デニー県知事が全国キャラバンでこの問題に言及した記事くらい)。こうして二紙を併読していると、「本土」と沖縄の距離を改めて感じる。琉球新報を読むようになって、せめて「こんな記事が掲載されていた」ということを沖縄以外に暮らしている人の目に留まったらなと、気になった記事のことをつぶやいているけれど、今朝のこの記事に関するツイートは2つ「いいね」がついただけだ。その数時間後に、「水口食堂」でアジフライを食べたツイートに21個も「いいね」がついているのを見ると、別に政治的なことを訴えたいわけでもないけれど、なんだか唸ってしまう。

 新聞を読み終えるとジョギングに出た。不忍池の少し手前で引き返す。シャワーを浴びて、バスで浅草に出る。「水口食堂」に入り、まずは瓶ビールとアジフライを注文。皿に3枚も載っており、これだけでほとんどお腹いっぱいになりかけていたけれど、せっかく「水口食堂」まできたのだからと、炒り豚も食べた。僕はたまねぎがそんなに好きではないのだけど、ここの炒り豚に入っているたまねぎはとても美味しく感じる。

 14時ギリギリに「フグレン」に行くと、お店の前でKさんが待ってくれている。コーヒーをご馳走になりながら、そして向かいの「正ちゃん」に入れ替わり立ち替わりやってくるお客さんを眺めながら、ぽつぽつ話す。1時間ほど話したあとで、近況についてあれこれ話す。仕事に関連した話をしていたところで、「もうちょっと食べ物のことについて踏み込んでもいいと思う。踏み込んでも、全体が崩れることはないと思う」とKさんが言う。いつも痛いところを突かれる感じがある。2時間ほどで店を出て、Kさんと別れる。そのままバスのりばに向かったものの、せっかく浅草まできたのだから、どこかで1杯飲んで帰ろうかと引き返し、ホッピー通りを歩く。でも、小洒落た若者ばかりで、ここで飲むことが本当に楽しいと思えているのか、と自問自答して、結局バス停に引き返した。

 千駄木3丁目でバスを降りると、少しだけ雨がぱらつき始めている。「越後屋本店」に立ち寄り、アサヒスーパードライを注文すると、すみません、10月に入って値上げしたんです、とお店の方が言う。アサヒスーパードライは350円から370円に、琥珀エビスは400円から420円になっている。雨が本格的に降り始めるのではと心配になって、急いでビールを飲み干して、買い物をしてアパートに戻る。20時に帰宅した知人と晩酌。鯖のみりん干しや、総菜屋で買ったマカロニサラダやナスの煮浸しをツマミにチューハイを飲んだ。テレビが改編期に入っているので観たい録画がなく、Amazonプライム・ビデオで『万引き家族』を観た。樹木希林に圧倒されたけれど、映画としては最後の30分くらいでだれてしまう。モノローグに聞き入るということは、とても難しいことだと思う。