4月28日

 8時過ぎまで起きれなかった。今日も良い天気だ。コーヒーを淹れて、洗濯機をまわす。昼、布マスクをつけて外に出る。意外とマスクの内側が湿る。思っていたほどには節穴マスクでもないのかもしれない。三井住友銀行に立ち寄り、1年ぶりに通帳に記帳する。これから諸々申請するときに通帳の写しが必要になるかもしれず、記帳したものをコンビニでコピーしておく。ついでに免許証もコピーしておいた。ドラッグストアに立ち寄り、何が切れかけていたっけと思い返しながら買い物していると、従業員に先導されたお年寄りがやってきて、ぶんどるようにしてキッチンペーパーを2つ手に取る。「すみません、おひとりさま一点まででお願いしてます」と店員に告げられると、お年寄りは手元を数秒見つめたあと、ひとつを放り投げるように棚に戻す。

 いつも行列ができている「兆徳」は、しばらく営業を続けていたけれど、ついに店を閉めていた。「コロナウイルス感染拡大防止に伴う、外出自粛要請を踏まえて、四月二十日から三十日まで休業いたします」と貼り紙が出ていた。どうして30日で区切ったのだろうと思いながら、写真に撮り、知人に送る。「5月からやるんかね」「商魂たくましいね」と返ってきたので、カッとなって返信する。商魂などではないだろう。台風がきたときに田んぼの様子を見に行く農家や、船の様子を見に行く漁師がいる。「こんな状況で何を馬鹿なことをやっているのか、命とどちらが大事なのか」と言ってしまうのは簡単だけれども、ぼくには田んぼを、船を、店を閉めておくことを心配する人の気持ちはわかりようがなく、ただおぼろげに想像するばかり。

 昼は焼きそばを作って食べる。食べていると、急に雨の音が聴こえてきたので、慌てて洗濯物をしまい込んだ。朝はあんなに晴れていたのに。最近はテレビをつけっぱなしで寝ることが減って、天気予報のチェックが疎かになっている。ただ雨が降るばかりでなく、雷まで鳴り始める。何がどう作用するのかわからないまま、ノートパソコンを充電ケーブルから外しておく。

 午後は企画「R」第2回の原稿を書き始める。まずは「たんけんぼくのまち」よろしく見取り図を書き、それから実際に言葉を書いてゆく。なんだか筋力が衰えているのか、椅子に座っているのに疲れてしまって、途中からソファに寝転がりながらキーボードを打つ。19時過ぎ、3000字までたどり着いたところでやめにする。19時半に帰ってきた知人と、ビールで乾杯。今日は知人がいちから作った麻婆豆腐と、ぼくが作る山芋ソテーがツマミである。こないだの日曜に放送された『有吉ぃぃeeeee!』の録画を観る。3月16日の収録だと、番組の冒頭で表示される。半分は街ブラ番組で、商店街やデパ地下を歩きながらお土産を物色するところから始まるのに、今回はそのくだりがなかった。テレビの制作陣は比較的早くから動いていたのだなと思う。その時期、ぼくは沖縄に滞在していた。

 それを観終えると、再生したい録画が見当たらなかった。ドキュメンタリーを録画し続けているほうのハードディスクレコーダーを起動し、少し前に放送されたNHKスペシャル『ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる~』を再生する。知床の番屋で漁をする老漁師を追うドキュメントなのだが、番屋のすぐ近くをヒグマがうろついている映像に衝撃を受ける。それでも老漁師は普通に仕事を続けており、一定の距離以上に近づいてくると「コラ!」とドスの効いた声を出す。すると、ヒグマはくるりと振り返って去ってゆく。すごい関係だ。しかしサケやマスが減り、不漁が続くと、ヒグマも飢えてゆく。ガリガリになったヒグマの姿を見つめながら、プロ野球チップスを開ける。上茶谷大河と山田哲人が入っていた。番組が終わると、今度はBS世界のドキュメンタリー『中国と闘う風刺アートBadiucao』を再生する。そんな状況に追い込まれても表現をしようと思えるだろうかと自問自答する。知人は隣で「NHKしか観るもんなくなってきたね」とぼやきながらチューハイを飲んでいる。