4月30日

 8時過ぎに目を覚ます。昨日はちょっと長めに走っただけなのに、筋肉痛だ。コーヒーを淹れて、たまごかけごはん。今日は納豆と青ネギも入れる。少し前に炊飯器を買ってからというもの、たまごかけごはんばかり食べている。たぶんきっと、そのうち飽きて、全然別の食生活になるのだろう。これまでたまごかけごはんを食べるとき、たまご意外には何も入れなかった。いつだかM&Gの稽古場で、K.Yさんのソウルフードだという、天かすやらなにやらがトッピングしたたまごかけごはんを食べたとき、しみじみした気持ちになったけれど、それはK.Yさんが食べてきた味に思いを巡らせていただけで、自宅で食べるときはたまごしか入れてこなかった。それが、どういうわけか今、冷蔵庫にあるものをあれこれのっけている。習慣というのはそんなものなのだろう。

 天気がいいので布団を干して、シーツも洗う。花粉症がぶり返したかと心配したが、ここ数日は鼻の具合もよい。昼は咖喱屋カレーをチンして食べた。こないだ普段とは別のスーパーで買い物したときに見かけ、近所では見かけないこともあり、辛口を3箱買っておいた。100円くらいで安かったから買ったのだが、湯煎するか、容器に移してチンしなければならないタイプだ。セブンイレブンのなら、同じ値段でも箱ごとチンできるのに――と、すっかり箱ごとチンの便利さに慣れてしまっている。上京して一人暮らしを始めた頃は、箱ごとチンするレトルト食品なんて、見たこともなかったというのに。咖喱屋カレーを器によそってみると、なんだか食品サンプルみたいに均一な色をしている。

 午後は企画「R」の原稿を考える。日が傾きかけてきたところで布団を取り込んだ。イヤホンで耳を塞ぎ、タイムフリーで『ハライチのターン』を聴きながら、布団に掃除機をかける。ポーンと、立て続けにメールが届いた音がするが、無心で掃除機をかけ、ホコリを吸い取る。5分ほどで終わり、ケータイを確認すると、届いていたのはヨドバシ・ドット・コムからのメールだ。14時52分に「ヨドバシエクストリームサービス便 配達開始のお知らせ」というメールが届き、そこには「お届け予定日時/14時55分頃」と書かれている。そして14時56分に再びメールが届き、「投函できず持ち帰りました」とある。ちょうど掃除機をかけ始めたタイミングでメールが届き、終わる直前にチャイムが鳴ったのだろう。これは申し訳ないと思うべきなのか、いやでも配達員からしたら「いねえじゃねえかよ」と舌打ちのひとつもしたくなるだろうなと思いながら、再配達の手続きをする。

 ずっと天気が良いので、布マスクをして散歩に出る。半袖に半パンで出かけてみたけれど、肌寒いと感じることはなかった。今年の夏は一体どんな気持ちで過ごすことになるんだろう。「ベーカリーミウラ」に立ち寄るも、好みのパンはすべて売り切れだ。何も買わず、「往来堂書店」へ。今日も盛況で、そわそわしながら棚を見る。どうぶつの森のガイドブックが欲しかったのだが、見当たらなかった。どうぶつの森どころか、ゲーム機も持っていないのだが、ツイッターに誰かが投稿するのを見るたび、その世界が気になっている。ゲームを買ってしまうと仕事にならないのは目に見えているけれど、せめて気分だけでも味わいたい。それに、今この時代に、どうぶつの森に没頭してる人は大勢いるはずだ。ゲームのガイド本みたいなものは古書として残りづらい気がするので、資料としても手元に置いておきたい。数日前にコンビニで『道の駅ハイパーガイドブック2020-2021』というムックを買ったのも同じ動機による。

 「往来堂書店」でも結局何も買わなかった。せっかく布マスクを使っているのだからと、スーパーにも立ち寄ると、焼肉セットがあった。しばらく前から知人が「焼肉がしたい」と言っていたので、焼肉セットを2つと、ちょっとだけ良い肉と、焼肉のたれを買い求める。帰り道、細い路地を歩くと、こどもたちが縄跳びをしている。僕の少し前を、お年寄りが歩いていた。そのお年寄りに気づくと、こどものひとりが「あ、おばあちゃんのお友達だ!」と声をあげ、近寄ってゆく。こどもはマスクをしていなかった。お年寄りは、邪険に扱わずにすむように、会釈をしながらスススと通り過ぎてゆく。近くで見守っていた母親が「ずいぶんおばあちゃんに詳しいねえ」と、こどもに微笑みかけていた。アスファルトには白いチョークでいくつも丸が描かれている。これはどうやって遊ぶんだっけかと思い返しながら、団子坂を上がってゆく。

 郵便受けには今日も続々と本が届く。自分が興味を抱いて買ったのだから当たり前の話だけれど、どれも面白そうだ。でも、これは来月の課題図書だからと、再び今月の原稿に取りかかる。しかし、なかなか贅沢な作業だ。どの街を取り上げようかと時間をかけて練り、そのためにはどの本を読まなければならないかと考えて、本を読んで過ごす時間がある。その上で原稿を書くのにも5日くらいは費やしている。こんなに贅沢な書き方をすることが今後あるだろうか。

 テレビでは『news every.』が始まっている。これから人が増える時期だけど、引き続き皆さんの「努力」をお願いしますとアナウンサーが言う。「努力」という言葉にギョッとする。いよいよどうかしてしまったのだろうか。数日前まではせめて「ご協力を」と言っていたのに、ニュース番組が視聴者に「努力」を呼びかけている。そして、休業要請に応じていなかったパチンコ店がついに休業し、都内のパチンコ店はすべて休業となったと報じられている。行政からだけでなく、さまざまな「声」がきっと届いたのだろう。パチンコ店がそうした「声」によって閉まるというのは、よく考えたらすごいことだ。

 17時過ぎにチャイムが鳴る。カクヤスが酒を届けてくれた。隣が酒屋だということもあり、なるべくビールは隣で買うようにしてきた。でも、もうすぐ閉店してしまうことになって、店にはもうビールはほとんど残っていないので、カクヤスで箱買いしたのである。最近はウィルスに対する神経症が度を増してしまっていて、買い物から帰ってくると、ハイターを薄めた液でひとしきり拭くようになってしまった。毎日のように缶を拭く生活を繰り返しているうちに、「まとめ買いしておけばこんな作業をしなくて済むのでは」と気づき、箱買いしたのだ。こんなに毎日ビールを飲んでいるのに、箱買いするのは初めてだ。

 知人が帰ってくるまでのあいだ、キッチンをきれいに掃除しておく。洗い物の水切りカゴもどかして、コンロのまわりを焼肉コーナーにする。あとは、テレビだ。ただ焼肉を食べるだけでなく、なにかバラエティ番組を観ながら食べられたらより幸せなのだけど――キッチンを見回していると、まな板壁面ホルダーが目に留まる。これをちょっと位置をズラして、コンロの前におけば、動画を観ながら焼肉を楽しめる。すべての準備が整ったところで、知人が帰ってくる。なんとか4月を生き延びることができたので、乾杯し、焼肉を堪能する。肉はふたりで2000円ちょっとだったが、思っていた以上に楽しく、満腹になる。定期的に焼肉屋を開店したい。

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