5月18日

 7時に目を覚ます。昨日のうちにUさんから原稿チェックの返事が届いていた。修正の方向を考えながらコーヒーを淹れて、たまごかけごはん納豆のせをかきこんだ。雨が降っていて、洗濯機は回せなかった。原稿の直しを考える。原稿の中では些細とも言える一点でもあるのだけれど、ではそこをどう直そうかと考えると、いくつか選択肢が思い浮かんで、考え込んでしまう。気づけば雨が止んでいたので、この隙間にとジョギングに出た。今のシューズに変えた日、1キロ6分を切るペースで走ってしまってクタクタになっていたけれど、そのペースにも慣れてきた。昼、カレーライスを平らげ、引き続き原稿の直しを考える。Uさんにメールで送信する頃にはもう夕方になってしまっている。

 今日は『AMKR手帖』の原稿の締め切りの日だ。締め切り日というのは、「その日付であるうちに原稿を送ってくれ」ということではなく、「その日の昼過ぎくらいには送ってくれ」ということだと理解はしているのだけれど、今回は、自宅で過ごす日々を送っていたはずなのに、原稿を練っているうちにこんなタイミングになってしまった。原稿の設計図を書くとき、いつもたんけんぼくのまちのように地図を書くのだけれども、雑誌の性質と、編集者のAさんからのリクエストを踏まえつつ、個人的にどうしても書いておきたいことを繋げようとすると複雑で、どういうルートを繋げればスムーズになるのか、考えあぐねてしまう。悩んでいるうちに知人が帰ってくる。知人はうどんを、僕は麻婆豆腐丼を作って平らげ、ずっと原稿を考える。夜に酒も飲まず、原稿を書くのはずいぶん久しぶりだ。23時になってようやく書き終わる。くたくたになったせいで、これでよいのかどうか自分では自信もなく、布団に倒れ込んだ。

 この日の夜20時に、いよいよ「路上」という企画のウェブサイトが公開となった。去年の秋、上海虹橋空港でFさんから企画を相談され、そのときからずっと、どんなことが可能だろうかと考えてきた。Fさんの最新作は『CITY』という作品で、その先の「新作」を描くために何が手渡せるだろうか――と。これは打ち合わせでは口にしていないことだけれども、たとえるなら村上春樹が『アンダーグラウンド』を通じて考えたようなこと、具体的な都市と、そこにある/あった生活のことを手渡すことで、より具体的な都市の姿を踏まえながら、想像力を膨らませる作品が描かれるようにと、手紙を書くように原稿を書いていけたらと思っている(これはあくまで個人的に思っているだけで、「そういう原稿を」と依頼されたわけではない)。ぼくはぼくとして、この企画をきっかけに、東京のこと、見つめ直せたらと思っている。2020年の東京の「路上」を歩きながら、そこに横たわっているもの、横たわってきたものを考えたい、と。だから、たとえば初回であれば永井荷風を引いていて、それに対して「こいつは永井荷風のことを理解できていない」という指摘は入りうるだろうし、そういう指摘が入ることは避けて、自分に書ける範囲のことだけを書いてきたけれど、これは第一義としてはFさんに、広い意味ではこんな長い文章を読んでくれる同時代の誰かに向けた「手紙」であるので、そんな指摘が入ることはもう目をつぶってしまって、今、ぼくが思っていることをできうる限り綴っておけたらと思っている。

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