5月23日

 朝8時に起きて、たまごかけごはんを食す。今日も納豆と青ネギを混ぜた。布団にくるまったままケータイを見ていた知人が「退職金6000万だってよ。信じられん」とぼやくので、反論する。たしかに「おいおい」と言いたくなる気持ちはわかる。しかし、「退職金なんて」という言葉が口をついて出るとき、ひとつには、自分の心情に嫉妬が混じっているように感じてしまう。こっちは貯金もなしに生活してるのに、6000万ももらえるなんて、ええ身分やのう――と。もうひとつ、そこには「罰を与えたい」という気持ちも混じっているように感じてしまう。自分が「悪」だと判断した人間に、金を与えるだなんて、と。その感覚はおそろしいものだ。「上級国民」という言葉はほんとに嫌な言葉だなと思うけれど、「上級国民」には「上級国民」の生活がある。彼と、その家族が思い描いていたこれからの生活があるはずだ。それを全部なしにさせるということは、ぼくにはとてもおそろしいことだ。そんなことを言い出したら刑罰というものが存在し得なくなってしまうこともわかっているけれど、ひとが思い描いていた未来を奪うというのはおそろしい。これは岡村隆史に対して降板を求める署名が始まったときにも感じたこと。

 ほどなくして『王様のブランチ』が始まる。ここ数週は早い時間帯の『王様のブランチ』を観ていなかったけれど、視聴率ランキングの仕組みが変わっている。前はTBSの番組のうち最大瞬間視聴率の上位を紹介していたのが、今は「視聴率」ではなく「視聴人数」を出している。え、なにこれ、どういうことと戸惑っていると、「人数を出したほうが、『ほら、こんなにたくさんの人がテレビを見てますよ』ってなるからじゃない?」と知人が言う。その番組についてつぶやかれた数を発表する「ツイート数ランキング」まで始まっていた。今週は「Googleマップトラベラー」という、Google マップで旅気分を味わおうという企画だ。和歌山のアドベンチャーワールドの園内をストリートビューで「歩き」ながら、実際に行くと4800円だけど、これなら無料なんですなんて言っている。そのフリーライドに何も感じないのかと思うと同時に、こういうテーマパークを定期的に紹介している番組がそんなこと言って大丈夫なのかと余計な心配をしてしまう。

 昼は「インド富士子」のキーマカレーを食す。思っていた以上にボリューミーで、これは酒のツマミにもなりそうだ。土曜日だから、ビールも1本だけ飲んだ。知人が「土曜日なので」と言いながら2本目を開けようとするので、さすがに飲み過ぎやろと静止すると、ソファで昼寝を始める。飲ませてやればよかったかなとも思ったけど、どうせ昼寝するなら飲まなくても同じだったかもしれない。14時半、BSのテレビ東京にチャンネルを合わせ、競馬中継を観る。今日は朝からJRAのアプリをケータイにダウンロードして、東京の9レース「カーネーションカップ」に絞ってあれこれ予想を巡らせていた。出走馬の中に、父方の祖父にエアグルーヴを持つ馬がいて、エアグルーヴがもうおばあちゃんかと思う。JRAのアプリはとても優れもので、出走馬の過去のレースの映像も観られる。やっぱり予想をしたほうが熱心に見るだろうと予想をして、インターネット投票できる環境を整えて、1、2、3番の馬連をボックスで購入し(それぞれ100円ずつ)、レースを見守る。こうやって予想をしてしまうと、自分の馬がゴールをする展開ばかり妄想する。この、近い未来が自分の予想通りになることを思い描く感覚というのは不思議な感覚だ。その感覚に包まれていると、実際のレース展開をしっかり見届けることができなくなってしまうから、一長一短だなと思う。予想は外れた。

 午後は少しだけテープ起こしを進めて、16時半から『ENGEIグランドスラム マチネ』を観る。この状況下でどんなふうにオンエアされるのかと不安に思っていたけれど、この状況を際立たせつつ、アクリル板で仕切りを立てて、マイクを2本立ててネタを披露してゆく。出演者に若手が多いせいか、「この状況下でネタをやる」ということをうまく取り込んでいて面白かった。17時半に番組が終わると、知人とふたり、買い物に出る。ぼくは部屋着のままだが、知人はちゃんと着替えていた。「ベーカリーミウラ」で食パンを2斤買って、「海上海」でイカと紫蘇の炒め物をテイクアウト。街には人が溢れている。通りかかったドラッグストアの店頭には消毒ジェルが並んでいた。ぼくの生活圏内だと、ようやく店頭に並び始めたという感じがする。せっかくだからと谷中銀座まで出て、「越後屋本店」で生ビールを買った。ぼくが坊主になっているのを観て、何、なにか悪いことしちゃったの、とお母さんが笑う。夜は『インヴィクタス』を観てから、21時に始まる『ENGEIグランドスラム リモート』を観た。夕方に比べると圧倒的に退屈に感じて、ずっと文句を言いながら酒を飲んだ。