5月31日

 8時過ぎに目を覚ます。シャワーを浴びる前に、頭を刈る。半月に一度、3ミリに整えている。コンビニに出かけて、日刊スポーツを買ってくる。まだスポーツ新聞を買い慣れていないので、店員さんに「ほら、日刊スポーツですよ」と名前がわかるように差し出して、ノータッチのまま会計してもらおうと思っていたら、店員さんが新聞を受け取る。あ、と思うまもなく店員さんは新聞を広げ、バーコードの場所をピッと読み取る。そうか、スポーツ新聞はバーコードがあるのかと今更気づく。午前中はスポーツ新聞を読み込んで、日本ダービーのことを考えて過ごす。自分の予想は正しいのだと補強してくれる情報だけ脳が拾ってゆく。

 昼は「インド富士子」から取り寄せたダールのカレーを食べた。どれも美味しいけれど、今のところ一番好きなのはチキンだ。「Q」に掲載される原稿に向けてリード文やキャプションを考えているうちに、競馬中継が始まる。パドックの様子を見て、知人は「この9番がかっこいい、9番の複勝にも100円賭けといて」と言う。ぼくの夢はワーケアに託して、そこから5点流す形で投票を済ませる。トータルで600円の賭け。「いよいよこのあとは本馬場入場です」とMCが語り、CMに入ると、「本馬場入場するん?」と知人が嬉しそうに聞いてくる。いつだったか、昼からビールを飲みながら日本ダービーの中継を観ていた日に、本馬場入場する馬たちみたいに列をなして、冷蔵庫までビールを取りに歩いたことがあった。今日も馬たちの気分になって、冷蔵庫までぱっかぱっかと歩き、缶ビールを開ける。15時40分にレースが始まる。自分の予想はまったく外れた。がっくりと落ち込んでいると、このレースでコントレイルを外して当たるわけないやろ、と知人に笑われる。

 落ち込みながらも、知人とふたり、外に出る。「バー長谷川」には特に営業再開日を知らせる貼り紙は出されていなかった。「営業再開します」と発表してしまうと、わっとお客さんが押し寄せてしまうから、するりと営業再開するのだろうなと受け止める。「海上海」で黒酢すぶたをテイクアウトして、近くのドラッグストアを覗く。除菌スプレーは売り切れになっていた。トイレットペーパーだけ買って、谷中銀座まで歩いてみる。緊急事態宣言が取り下げられただけあって、かなりの賑わいだ。どぎまぎしながら「越後屋本店」まで歩き、アサヒスーパードライを2杯注文。お店のお兄さんは金髪になっている。以前のように「椅子」を並べてはいないものの、酒のケースを裏返して積み重ねた「机」が何台か設置されていて、立ち飲みできるようになっていた。飲みながら帰るつもりでいたけれど、6Pチーズを1個ずつオマケしてくれたので、その場で立ち飲みしていく。知人とはほとんど話さず、ただビールを飲んだ。

 夕方、「東京の古本屋」の番外編として、臨時休業中の「古書往来座」でセトさんに話を聞かせてもらった記事が公開される。あとがきとして付け加えた言葉が強く、自分で読んで少し驚く。筆を滑らせているというわけではないのだけれど、書くときは普段と違う状態にあるので、あとで読み返して少し驚くということが稀にある。「東京の古本屋」と大きな名前を冠した連載ではあるけれど、すべての古本屋さんを取材することはできなくて、それによって自分は見落とされているような気持ちになる人がいなければいいなと思うと、ああでもない、こうでもないと考えてしまうけれど、今、セトさんに話を聞いておきたいと思っていたので、こうして書き記すことができてよかった。

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