6月2日

 昨晩は20時半に眠ってしまったらしく、1時半に目が覚めてしまう。そこから2時間近く寝付けなかった。このままだと町内で過ごしているだけなのに時差ボケしてしまうので、深夜ラジオの録音を再生しているうちに、再び眠りに落ちる。昨日が休肝日のはずだったけれど、休業明けの「バーH」に行くことを優先したので、今日が振替休肝日となるはずだった。ただ、夕暮れが近づいてくると、なんだか物足りないような心地になる。これは黄信号だなと思いながらも、知人に探りを入れるメッセージを送ってみると、「今日は早く帰れそうだし、こんなに天気が良いんだから飲みたい」と言う。それなら仕方がないと理由をつけて、18時、谷中銀座で待ち合わせ、「E本店」でビールを飲んだ。土日に比べれば、さすがに人出は落ち着いている。軒先で生ビールを立ち飲みしているあいだ、マスクをずらしてビールを飲んで、またマスクをつけるを繰り返す。テレビの情報番組を眺めていると、再開された居酒屋で乾杯している人たちの姿が映し出されるたびに、「おー、マスクせずに談笑している」と反射的に思ってしまう。毎日飲んでいる人間でさえそう思うのだから、酒をあまり飲まない人は「酒を飲んでいる連中のせいで第二波がくる」と思うかもしれない(実際、この日の都知事の会見でも再び「夜の街」が標的にされていた)。節度を持って飲んでいる酒飲みだっているのだと、誰に頼まれたわけでもないのに、通行人に向かって表明するような気持ちで、マスクをちまちま上げ下げした。常連のお客さんたちはマスクを外し、大きな声で談笑している。自分は感染していないという確信があるのだろうか。それとも外だから大丈夫だと思っているのだろうか。ぼくはまだ不安だ。今月後半に沖縄に行くつもりだから、「ウイルスを運ぶわけにはいかない」という気持ちが強くなっている。

 ビールを2杯飲んだあと、蛇道を抜けて根津に至る。最近よくテイクアウトで利用している中華「HSH」を覗いてみると、他に誰もお客さんがいない様子なので、店内で食べていくことにする。知人はビールを、ぼくは紹興酒をボトルで入れて、ラム肉の炒め物と、野菜の炒め物を2皿注文した。たまにテイクアウトを受け取りにくるお客さんがいるとはいえ、閑古鳥が鳴いている。本当は2皿だけで帰るつもりでいたけれど、あさりラーメンも追加する。ラーメンを半分くらいまで食べたところでトイレに立ち、席に戻ると、隣のテーブルにカップルが案内されている。隣かー、と思う。隣のテーブルだと、手を伸ばせば触れられる距離だ。他に客はいないのに、どうして隣に通すんだろう。男のほうはマスクをあごにずらしたまま注文している。早めに平らげて帰ろうと、ごそっと麺を器にとり、啜る。隣の客が注文を終えると、店員さんは厨房のほうに引き返していく。そこに男が「あ、すいません! あとキュウリも!」と、大きな声で注文する。必然的にぼくのほうに向かって声を発している格好になる。ここにはもういたくないなと思って席を立ち、会計をお願いして、そのまま外に出る。知人もすぐに出てくるだろうと思っていたが、2分、3分と経っても出てこなかったので、「あの環境で残り続けるって、ありえんやろ」とLINEを送り、ひとりでアパートに帰る。「残すのが嫌なんやもん」と知人から返信が届く。自分の行動を正当化するつもりはないけれど、一ミリでもリスクがある状況に留まりたくない。そうしなければ誰とも会えなくなってしまう。この日の夜は喧嘩しているうちに終わってしまった。どうしてこんなことになっているんだろう。