7月3日

 9時、ジョギングに出る。せっかくだから少しだけでも海を見ようと、波上宮を目指す。海の近くを走っていると波の上ビーチに出た。名前は聞いていたけれど、ここだったか。泳いでいる人の姿もあるし、浮き輪などをレンタルする店もあって、文字通りビーチである。しかし、視界は橋桁で遮られているのに、わざわざここで泳いでいる人がいるのかと不思議な気持ち。波上宮を見学し、引き返す。セミがすごいヴォリュームで鳴いている様子を動画で撮影していると、それを覆うように飛行機の轟音が響く。那覇高校のあたりに出て、開南せせらぎ通りを走ってゆく。このルートで進んでみると、市場の一帯が窪地であることがはっきりわかる。この坂道のこともいつか書かなければ。「上原パーラー」でじゅーしーおにぎりを買って、ホテルに引き返す。

 午前中は日記を書き、質問リストを練る。14時にホテルを出て、取材。こうして話を聞くと、あまり意識してこなかった生活の姿が浮かび上がってきて、面白い。界隈を歩き、「上原パーラー」でイカ白身魚の天ぷらを買って、「市場の古本屋ウララ」に立ち寄る。今度こそしばらくこれなくなりそうだから、あれこれ話しておく。何か言っておきたいことはありますかと尋ねられ、ほんとは「飲みに行きませんか」と声をかけたかったのだけれど、突然そんなふうに誘われても困るだろうなと思って切り出せなかった。ただでさえ「飲みに行きませんか」と誘ったことがないのに、誰かを飲みに誘うことがとても難しい時代になってしまった。「ミヤギミート」でオリオンのロング缶を買って、パラソル通りで天ぷらを平らげる。あっという間に食べ終わってしまって、350ミリでよかったなと反省する。

 仮設市場を覗き、2階の「道頓堀」へ。生ビールと天ぷら盛り合わせを注文。前にきたとき、市場はまだ日没頃までの時短営業だったけれど、今は夜も営業するようになった。ただ、2階にはあまりお客さんの姿はなかった。「暇なときのほうがね、意外とやらなきゃいけないことが多くて大変なんですよ」と佐和美さんが言う。忙しいときは次から次に仕入れたものがさばけていくけれど、お客さんが少なくなると考えないといけないことも多くなる、と。ビールを2杯飲んで、ホテルに引き返し、『d・v』の原稿を書く。思ったよりさくさく書き進んで、8割程度まで仕上げておく。20時、缶ビール片手にホテルを出る。国際通りにある、路面店の居酒屋を通りかかる。ふと店内に視線を向けると、そこには誰もお客さんがいなかった。金曜日の夜にこれでは本当に大変だ。

 栄町市場はそれなりに賑わっていた。ほとんど満席になっている店もある(そのかわり、店内に1組しかお客さんがいない店もある)。20時45分に「うりずん」の扉を開けると、思ったより空いている。いつものように白百合をと思ったら、ちょうど在庫が切れたところらしく、かわりに暖流を飲んだ。今日はスタートが遅くなったので、1合だけで店をあとにし、「東大」に流れる。扉を開けると、カウンターに島らっきょうが並んでいた。今日はお客さんがこなくてひまだからと、らっきょうの皮むきをしていたのだという。らっきょうのかおりが香ばしく、今日はゴーヤの黒糖酢漬けではなく、らっきょうの漬け物と、ミミガーとマメの刺身を頼んだ。金曜日だというのに、どうしたことだろう。今日はたくさん天ぷらを食べたことだし、やっぱりおでんにしようかと思っていたところで、Mさんが焼きてびち用の肉をひと口食べさせてくれた。それはとてもあざやかな味だった。「焼きてびちに使う肉のことを、『どうせおでんの残りの肉を使ってるんだろう』と言う人もいるんだけど、とんでもない。おでん用のてびちは、出汁に付けてるから、その肉を焼いても美味しくならんわけさ。だから焼きてびち用の肉は、別に仕込む必要があるわけ。でも、こんなふうにお客さんが入らないと、仕込んでも、ね」。結局、今日は焼きてびちを頼んだ。