7月21日

 目を覚ますと、少し喉に違和感がある。朝から企画「R」の原稿を書く。ツイッターでこの日記を紹介してくださっているアカウントがあり、ぎゃっ、と非公開にしたくなったけれど、ぐっとこらえる。午前中からそわそわ郵便受けを覗きにいく。楽しみにしている「日記」、日曜の夜にはもうメルカリに出品されているのを見つけ、クレジットカードの残高がフルになってしまっているのでコンビニ支払いを選択し、一刻も早く支払い完了となるように、夜のうちにセブンイレブンまで走っていた。その甲斐あって月曜午前のうちに「発送しました」とメールが届き、これなら明日届くのではと期待で胸を膨らませていたのだが、昼過ぎになっても郵便受けは空のままだ。

 近所の八百屋まで買い物に出る。豆腐屋の表にあたらしい貼り紙が出ているのに気づき、嫌な予感がする。しばらく前から「臨時休業」と貼り紙が出ていた。これまでにも時々臨時休業することはあったので、深く考えないようにしていたのだが、そこには「閉店のお知らせ」の文字があった。「永年のご愛顧ありがとう/御座いました/都合により閉店させて/頂きます/店主」。簡潔にそれだけ書かれていた。今の場所に引っ越してきたとき、何十年と続いてきたのであろう古いお店がいくつもあり、どこも恒例の店主が切り盛りしていた。もしもぼくが10年くらい住むとすれば、その閉店を見届けることになってしまうのだろうと思って、その前にお店の歴史を伺っておきたいと思って、『不忍界隈』を創刊した。最初に話を聞かせてもらったのがその豆腐屋だった。『不忍界隈』を創刊したのはたった2年前なのに、取材させてもらった6軒のうち、半分が閉店した。いつか話を聞かせてもらいたいと思っていた隣の酒屋もなくなった。

 昼はサッポロ一番塩らーめんの野菜炒めのせ。午後も企画「R」の原稿書く。ようやく少し進んできた感じがするけれど、明後日までには書きおけなければならないことを考えると、かなりギリギリだ。6月に自分が感じていた違和感を思い返しながら、書き進める。16時にアパートを出て、千代田線で大手町へ。喉に違和感が少し残っていて、車内で咳が出ないように気を張る。16時35分にYMUR新聞社にたどり着き、読書委員会。気になる本はいくつもあるけれど、それを書評するにはぼくより適任者がいるのではと思うと、手に取るのを躊躇ってしまう。それに、順番がまわってくるのは多くても月に二度。委員会が二週間に一度開催されていることを考えると、一回の委員会で一冊以上選んでしまうと、選んだものの順番待ちの本が増えてしまう。そうすると発売から時間が経ってしまうことになるので、「これぞ」という一冊以外は手に取るのを躊躇ってしまう。今回の委員会に並んでいた本の中に、きっと他の委員の方も「書評したい」と思うだろうなという本があったのだけれど、やはりこれはぼくが書評するべきだと自分に言い聞かせ、選ぶ。

 20時過ぎに委員会が終わり、ハイヤーで送っていただく。団子坂の途中で降ろしてもらう。知人と待ち合わせて「たこ忠」へ。最初に案内された席に座ると、隣のテーブルと、斜め後ろのテーブルがやけに大声で話しているのがどうしても気がかりだったので(本当に、コロナが流行する前の世界にワープしたかのようだった)、端っこのテーブル席に移動させてもらう。入店するときにもっと神経を集中させないと駄目だ。そうでなければ、店員さんに余計な手間をかけさせてしまう(ぼくたちが一度座ったテーブルも消毒することになってしまう)。委員会でビールを1本飲んでいたので、最初から日本酒を選んだ。夏酒がメニューに並んでいて、今はたしかに夏であるのに、なぜか季節外れに感じてしまう。メニューに生ハムと白桃のサラダがあるのを知人が見つけ、注文する。いちばん好きな果物は桃であるのに、食べると耳の中が痒くなるので、スーパーに並んでいても買わずにやり過ごしている。でも、サラダに入っている程度の量なら大丈夫だろうと、頼んでみたのだ。耳は痒くならなかったけれど、そのかわり、どこか物足りなさが残る。