8月25日

 朝から本を読み返し、YMUR新聞の書評を練る。昼、サッポロ一番塩らーめんを作って平らげる。13時過ぎにアパートを出て、本駒込から四谷を経由し新宿に出る。14時、小田急百貨店の屋上で待ち合わせ、企画「R」に関連した話をあれこれ。1時間ほど経過したところで、そのまま別件の打ち合わせに移行する。こんな状況ではあるけれど、将来の企画が舞い込んでくるのは嬉しいことだ。こちらで明解に思い浮かんだアイディアがあり、それを伝える。2時間でビールを2杯飲んだ。16時過ぎに皆と別れ、ぼくはそのまま屋上に残り、アイスコーヒーを飲みながら書評を書き始める。まずはコピー用紙に手書きでメモを書き綴り、なんとなく方向性が決まったところでパソコンを広げ、書く。17時過ぎにとりあえず書き終えて、原稿をケータイで読めるようにしておく。

 思い出横丁「T」に移動し、瓶ビールとつくねを注文。しばらくこれないなと数日前に思ったばかりなのに、「この時間なら空いているだろう」と、またきている。さすがにまだお客さんはほとんどいなかった。ビールを飲んでいると、アルバイトの留学生の子が、「店長、これは?」とメニューを指差し尋ねている。「真ほっけ」とマスターが読んでみせると、「マ、ホッケ」と留学生の子が繰り返す。「うん――だけど、この『真』は皆言わないから、『ほっけ』でいいよ」とマスターが言う。「店長、これは?」と、留学生の子はまた別のメニューを指差す。「桜えび、さくらはわかる?」――そんなやりとりを聞きながら、瓶ビールを2本飲んだ。

 18時半、渋谷に出る。ハチ公口を出ると、スクランブル交差点はなかなかの人出だ。不安に駆られながら歩き出すと、行き交う人たちの9割5分以上がマスクをしている。渋谷、繁華街、若者は槍玉に挙げられがちだけれども、感染が再拡大するなかで、案外皆、警戒しながら過ごしているのだなと感じる。百軒店を抜け、7thFLOORの前に出る。このあたりにはライブハウスが立ち並び、この時間帯には人がわさわさ行き交っていたけれど、今は閑散としている。そういえばここで向井さんとバッタリ遭遇したことがあった、向井さんは今、何をして過ごしているのだろう。7階に上がり、まずはドリンクチケットをビールに交換して、一番後ろの席に座る。今までも最後列が好きだったけれど、今の状況を踏まえると、後ろに誰もいない最後列が落ち着くのだなと思う。ビールを手にベランダに出て、パソコンを広げ、書評をメールで送信する。

 途中でおかわりをしたくなるのは目に見えているので、ワインをボトルで頼んでおく。19時過ぎ、ライブが始まる。「Hour Connection vol.2,5 × うたう見汐麻衣vol.19」。ライブを観るのはいつぶりかと数えてみると、半年ぶりだ。最初にバンドセットで演奏が始まると、そのヴォリュームにびっくりする。このボリュームで音楽を聴けるのは、ほんとうに久しぶりだ。3曲目の「はなしをしよう」を聴いていると、とても不思議な感慨にたどり着く。こんなふうに、目の前で演奏している人たちがいて、それを目の当たりにしながらお酒を飲む――そんなことが叶わない日々に置かれていたせいで、「ライブを観る」ということは、ずっと昔にだけ可能だったことのように錯覚してしまっていた。だから、今こんなふうに歌を聴きながら過ごせていることに、感慨深くなる。

 とても贅沢な時間を過ごし、会場をあとにする。21時過ぎに会場をあとにして、渋谷の路上を歩いていると、急に今の時代に引き戻される。さっきは9割5分がマスクをしていたのに、客引きの女性たちも、行き交う人たちも、マスクをしていない人が目立つ。ギョッとさせられたのは、行き交う女性たち――彼女たちはマスクをしている――に話しかけ、ナンパもしくはスカウトしようとする男たちのほとんどが、マスクをしていなかったこと。ほとんどテロだ。歩道を歩いていたら感染してしまうのではと不安になり、車道の端っこを歩き、渋谷駅から帰途につく。