10月10日

 6時過ぎに目を覚ます。7時半にホテルを出て、界隈を歩く。セブンイレブンでアイスコーヒーとサンドウィッチを買い、パラソル通りで朝ごはん。9時過ぎに宿に引き返し、構成仕事をメールで送信。10時過ぎ、「路上」という企画について藤田さんと話した内容(前編)がアップされる。その中で「沖縄に家を保とうとは思わない」という話もしていて、そんな話が公開されたタイミングで沖縄にいるというのは不思議な感じがする。午前中は来週末に掲載される予定の書評を練る。本を持ってくるのを忘れてしまったので、電子書籍で買って読み返していたのだけれど、やはりぼくが那覇で続けている取材と重なるところがある。戦後の闇市に端を発し、それが1960年代になって近代的な施設にするべく再開発が持ち上がり、ビルが建設されたものの、それから半世紀が経ち、再び再開発の話が持ち上がっている。この本をUさんが読んだら何を感じるだろう。

 12時過ぎ、界隈をぐるりと歩き、Uさんのお店へ。今日は小さな写真展と古本市が開催中だ。その写真を、食い入るように見る。路上に商品が積み上げられていたり、商店主たちが談笑していたり――その背景に写り込んだものまで、ひとつひとつ見る。あれはなんという名前なのだろう、白くて、大きくて丸い形状のツバがあって、ふわふわした感じのあの帽子を、商店主たちがこぞってかぶっている写真がある。たしかに強い陽射しを避けるにはうってつけだし、あのふわふわした帽子であるほうが蒸れずに済むとは思うのだけれども、女優とかお嬢さんとか、そんな感じの人たちがかぶっていそうな帽子だから、なんだか優雅な写真に見える。しかし、あんな帽子をかぶっている店主はどこにもいなくなった。

 写真を展示しているTさんは、『Coralway』の連載「家族の店」で写真を撮ってくださっている方ではあるのだけれど、世間話をするために写真展を観にきたわけではなく、写真を観るためにきたのだからと、特にUさんにも挨拶をしないまま店をあとにする。「飯ト寿 小やじ」に入り、生ビールと季節のお浸し、それにアジフライを注文。ビールのおかわりをしたあたりで、Uさんからダイレクトメッセージが届く。「Tさんがお話ししたいことがあったそうなので、もしお時間あれば、もう一度お店に」とあったので、ビールを飲み干すと「ジュンク堂書店」(那覇店)に向かい、ノンフィクションの店ではなく旅行ガイドの棚に置かれていた本を購入する。電子書籍版にだけ掲載されている写真もあるようだったので、紙の本に掲載されている写真はどれかを確認し、写真と一緒に掲載してもらいたい写真を選んでおく。Uさんの店に戻り、Tさんと次回の取材について少し立ち話をしたのち、Uさんに本を手渡す。

 15時、一昨日取材させてもらったお店を再訪する。開店直前に店長の写真を撮影させてもらって、お店の外観も撮っておくつもりだったのだが、14時50分にはもう開店待ちのお客さんの姿があった。それでも店長の写真は撮影させてもらって、日本酒を飲みながら、つくねピーマンを食べる。つくねもウマイがピーマンがウマイ。なんだこれはと思わず手掴みで食べていたら、カウンターの並びで飲んでいた二人組にギョッとされる。日本酒を3杯飲んだ。ホテルに戻り、今度取材させてもらいたいと思っているお店に「どうして取材させてほしいと思っているのか」をまとめた手紙を書き、届けにいく。18時、「うりずん」へ。なかなか空いているタイミングを見つけられずにいたけれど、この時間ならカウンターも比較的空いていた。白百合をカラカラで注文し、クーブイリチーをツマミに飲んだ。帰り際に「橋本さん、これ」と、油味噌をお土産にプレゼントしてくれる。隣の酒場に立ち寄り、最近はずっと同じ姿勢で過ごしている犬のゴン太をしばらく眺めておく。