10月11日
6時過ぎに目を覚ます。7時にホテルを出て、最後に界隈を歩いておく。取材したほうがよい店をリストにする。毎日同じルートを同じように歩いているだけなのだが、この作業がなければ取材先を選ぶことはできない気がする。ゴミ収集車が「エリーゼのために」を流しながら走ってゆく。8時過ぎにホテルに戻り、シャワーを浴びて、スーツケースに荷物を詰め込んでいると、『サラメシ』が流れている。そこには灘のUさんの姿が映し出されている。『サラメシ』に出演されたとは聞いていたけれど、こうしてこれから神戸に向かうタイミングで再放送されるのを目にすると、不思議な縁を感じる。9時にチェックアウトして、タクシーで那覇空港に向かい、売店で沖縄そばを啜り、スカイマーク592便に搭乗する。後方の座席は比較的空いていてホッとする。神戸空港から三宮に出て、手配してもらっていた旧居留地のホテルに荷物を預けると、すぐに明日の取材先に向かう。一番リーズナブルなメニューを頼んでみようと、チキンライスを頼んだ。チキンライス、これまでぼくの中では「オムライスの卵抜き」というイメージしかなかったのだけれども、びっくりするほどうまかった。チキンがうまいというのではなく、メシがうまかった。バターの塩梅が絶妙なのだろうか。ホテルにチェックインしたあと、15時半に須磨駅でY.Eさんと待ち合わせ。城崎に滞在中に、もしお時間あればお話をと連絡をもらっていたのだが、ドキュメントを書いているあいだはまったく他の余裕がなかったので、「また関西を訪れたときに」と返信していたのだ。海岸沿いに腰掛けて、Yさんの話を聴きながらアサヒスーパードライを飲んで、ぼくに話せることを話す。自分が大学生だったころ、坪内さんの授業のあと、「金城庵」という蕎麦屋で飲み会があり、そこに編集者の人たちがいたことを思い出す。その場にいた編集者の方たちの中で、一番若い世代だった人たちは、今のぼくより若かったはずだ。その人たちが真摯に話してくれたことを思い出しながら、どんな言葉を返せるだろうかと考えながら話す。2時間ほど話したところで電車に乗り、Yさんと一緒にハーバーランドに向かう。メリケンパークでは何やらイベントが開催されていて、人で溢れている。ちょうどコンチェルト号が帰ってきて、再び出航するところで、高浜岸壁も大勢の人がいる。ぼくがこの場所を意識して足を運ぶようになったのは、『ごろごろ、神戸。』を読んでからのことだから、こんなに人で溢れている様子を目にするのは初めてのような気もする。しばらくして、ここで待ち合わせをしていたH.Kさんが自転車に乗ってやってきてくれる。自転車の前かごに椅子がつっこまれているのを目にしながら、コンビニで買っておいた赤ワインのボトルを飲んだ。文章を書くときにかぎらず、なにかとどう向き合うのかということを、いつもぽつぽつ話せているような気がする。15時半から飲み始めたこともあって、この日は早々に酔っ払ってしまい、日付が変わる前に宿に引き返す。