10月20日

 5時に目が覚めてしまったので、夜明け前の市場界隈の様子を写真に収めて歩く。公設市場のすぐ近く、松尾二丁目中央市場のあたりには、現在では酒場がたくさんある。「こんなふうに酒場ができるまでは、日が暮れると真っ暗だった」とよく耳にするけれど、その暗さを実感する。真っ暗なところは写真に撮れていないけれど、立ち入るのを躊躇ってしまうほど真っ暗な路地もあった。

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 ホテルに戻り、「空気階段の踊り場」を聴く。しばらく聞きそびれていたので、ようやくキングオブコント直後の生放送回を聴く。最後の最後に、リスナーに向かって「ひとりじゃないぞ!」と呼びかけるところで番組が終わる。これをリアルタイムで聴いていたら――キングオブコントで爪痕を残したあとに聴いていたら――感慨深く思っただろうか。あれから時間が経って聴いてしまったこともあり、「それをそのまま言葉にするんじゃなくて、違う形で感じさせるために、皆が必死にもがいているのではないか?」と思ってしまう。

 番組で流れていた銀杏BOYZの新作はアップルミュージックで聴けるようになっていたので、それを聴きながらジョギングに出る。年齢を重ねて、あのころとは違っていることも、誠実にうたわれているように感じる(と、聴いた瞬間に感じたけど、「誠実」とは何だろう)。初期衝動とは遠いところにたどりついた今でも、きらきら輝いているように感じられるものについてうたわれているように感じる。YUKIと16年ぶりにコラボした曲があったので、その曲を聴いたあと、16年前にコラボした「駆け抜けて性春」も聴き、そこから「あいどんわなだい」も聴く。銀杏BOYZのことは、ライブを観に行くほどに熱心なファンだったわけではないけれど、この曲は好きでリリースされた当時に何度となく聴いた。この曲を聴いていると、あの時代は未来が明るく見えていたわけではないはずなのに、どこからか強烈な明るさがやってくる。この明るさは何だろう。ぼくが勝手にこの曲に感じているだけなのか、それともあの時代の自分の感覚を曲に投影してしまっているだけなのか。

 9時半に那覇市立中央図書館に行き、品切れになっていて手に取ったことのなかった地域情報誌『み〜きゅるきゅる』の創刊号を複写する。そこからは歩いて引き返し、「上原パーラー」でじゅーしーおにぎり買う。店頭に立つお兄さんの髪型ががらりと変わっている。「あれ、坊主にされたんですか?」と尋ねると、帽子を取り、「上はあります」とお兄さんは笑う。サイドをばっさりと刈り上げているから、坊主であるように見えただけだった。ホテルに戻り、ウェブ連載の原稿を書く。昼過ぎにようやく書き終えて、取材させてもらったBさんと編集のTさんにそれぞれメールで送信する。お昼を食べようと部屋を出て、エレベーターに乗り込むと、金色の髪の母子と乗り合わせた。母親はそれまでマスクをしていなかったけれど、ぼくが乗り込むのと同時にマスクをつける。そして娘にも、「マスクをつけなさい」と促したのか、娘のほうもマスクをつける。母親が何と言ったのかはわからない。英語ではない外国の言葉だった。海外からやってきたのだろうか?――今、海外から日本にやってくることはできるのだろうか?

 昼は「パーラー小やじ」の系列店「飯ト寿 小やじ」に入り、カレーライスとビールを2杯。食後はセブンイレブンコピー機で写真をプリントして、今度取材させてもらいたいと思っているお店に渡しにいく。そのお店というのは公設市場のすぐ隣にあって、囲いを隔てたところでお祓いが行われている様子を写真に収めておいたのだ。2メートルくらいまでは囲いで覆われているけれど、その上に、お店の外壁が見えている。店主の方はこの角度から外壁を目にすることができないのだと思うと、せめて写真を手渡しておきたくなった。写真なんて渡されても、という反応になってしまうかとも思ったけれど、喜んでもらえてほっとする。

 午後は「ひばり屋」でアイスコーヒーを飲みながら、吉行淳之介安岡章太郎の本を読み返す。1時間ほどで店をあとにして、市場界隈を歩いていると、居酒屋「信」の前で信さんがなにやら作業をしている。最近は通りかかっても営業していないことが多かったので、お会いするのは久しぶりだ。「今日は営業されてるんですか?」と尋ねると、「あい、入ってけ」と言われるが、まだ15時過ぎなので「日が暮れるころにお邪魔します」と伝えてホテルに引き返す。夜まで読書を続けて、18時半に「信」をのぞく。組合長もいたので(信さんは組合長のお父さん)、今日の地鎮祭のことをぽつぽつ話しながら、ビールを飲んだ。ビールを3杯、そして泡盛を1杯飲んで、餃子がついて1300円である。まだ寝るには早いので、「足立屋」でチューハイを飲んでから帰途につく。