11月8日

 7時過ぎに目を覚ます。9時にアパートを出て、千代田線とJRを乗り継ぎ、郊外の駅にたどり着く。F.Yさんと待ち合わせ、今年で70歳を迎えたニッターさんのお宅にお邪魔して、お話を聞かせていただく。しっかり話を伺うことができてホッとする。こうしてお話を伺うとき、ぼくはどうしても幼少期の話も尋ねてしまう。今回であれば、その人が小さい頃に手編みのニットはどんな存在だったのか、小さい頃に将来をどんなふうに思い描いていたのかも質問してしまう。それによってするする語ってもらえた話があって、「こんな話、初めて話しました」と言ってもらえたのでよかった。

 電車を乗り継いで帰途につく。セブンイレブンカップヌードルBIGを買い求めて、自宅で湯を入れて啜り、再びアパートを出る。千代田線と日比谷線を乗り継ぎ、広尾。大きな犬が散歩に出ている後ろ姿を見つめながら進んでいく。有栖川公園は人で溢れ返っている。マスクをしている人は比較的少ない感じがする。普段大きめの公園に行くことなんて滅多にないから、これが広尾だからなのかどうかわからないのに、勝手に土地柄を感じてしまう。こどもたちが駆けまわる隙間を縫って、14時半に都立中央図書館へ。入館は基本的に事前予約制になっているのだが、当日利用もひと枠あたり75名まで受け付けると書かれていたので、14時からの枠を目指してやってきたのだ。しかし、入り口にはすでに「現在の時間は当日利用では入館いただけません」と立札が出ている。念のためにと、「これはもう、待っていても入れないっていうことなんですかね?」と入り口で尋ねてみると、「いえ、何時というお約束はできないんですけども、お客様が帰られたら入館いただけます」とのことだったので、しばし入り口で待つ。10分ほどで入館して、郷土本のコーナーをじっくり眺めながら、『B』誌から依頼された選書を練る。

 16時過ぎに図書館をあとにして、恵比寿経由で池袋に出て、「古書往来座」を覗くと、セトさんがなにやら作業をしている。現状では棚の一番下の段にまでぎっしり本を並べているところを、一番下の段は何も入れない状態に変えようとしているらしかった。作業がひと段落したところで「だいぶ風通しがよくなった」とセトさんが言う。その感覚というのは、こうしてたまに足を運んでいる側からすると、すぐには感じ取れないものだ。セトさんは最近ずっと、パンパンに本が詰まった状態の店ではなく、その「風通しのよさ」というのを目指しているように感じる。それは、ずうっと店で過ごしているなかで感じる感覚なのだろうし、そこから時代の流れを察知して「風通しをよくしなければ」と感じているのだろう。その感覚を、客としてふらりと訪れているぶんには明確には感じ取れないものだけれども、店に対する印象として無意識のうちに蓄積されるものなのだろう。

 18時に帰宅し、知人に作ってもらった麻婆豆腐を平らげる。ぼくが丸美屋の素で作る麻婆豆腐はあっという間に完食してしまうのだけれども、知人がヤマムロの「陳麻婆豆腐」で作ると、チビチビ食べることになるのでツマミにうってつけだ。麻婆豆腐を完食すると、ゴーフルをツマミに芋焼酎のお湯割りを飲んだ。今日の取材では、取材させていただく方を含めて3人の方と会うことになっていた。その取材は本来、11月1日におこなわれるはずだったのに、飛行機が欠航になった影響で日程を組み直してもらったのだ。そのお詫びにと、新神戸から新幹線に乗る前にゴーフルを4箱買ってあったのだけれども、持っていくのを忘れてしまって、すべて自宅用になってしまった。知人が「芋焼酎に合うやつや」と喜んでいて、訝しく思いながらも芋焼酎のツマミにしてみたところ、思いのほか合う。