12月13日

 7時過ぎに目を覚ます。昼、知人の作る鯖缶とトマト缶のパスタ。ビールも1本だけ飲んだ。午後は新聞とは別に依頼があった書評のための本を選んで過ごす。15時になると競馬中継にチャンネルを合わせ、友人が応援しているソダシのレースを見守る。1着でゴールを切った瞬間を見届けると、すぐにアパートを出て、東京国際フォーラムへ。今日は映画の試写会に呼んでもらった。ライターとして仕事をするようになって10年以上経つけれど、映画に関係する取材をしたり原稿を書いたりしたことはゼロに近く、試写会というものに呼ばれたことはなかった。

 普通の試写会がどういう雰囲気なのかまったく知らないけれど、まわりからギョーカイ的な会話ばかり聴こえてくる。指定された席につくと、周りは談笑する人たちで溢れていて、KN95マスクをつけてきてよかったなとホッとする。マスクを外して会話している人の姿もあった。試写が終わると、近くの席に座っていた男がおもむろに立ち上がる。男性はマスクを外して号泣していた。トイレにでも立ったのかと思ったが、30秒とたたずに席に戻ってきて、涙をぬぐっている。その振る舞いはあまりにもシアトリカルに感じられた。まるでこの映画に感動している自分の姿を周りに提示しているように。

 舞台挨拶の様子はテレビなどで観られるだろうからと、試写が終わったところで劇場をあとにして、水道橋を目指す。ラクーアで知人と待ち合わせ、そこで開催されているクリスマスマーケットを覗く。週末には週替わりで古本屋さんが出店していて、今週末は「ブックギャラリーポポタム」と「丸三文庫」が参加しているというので、遊びに行く。すっかり日が暮れていることもあり、古本を物色しているお客さんはほとんどいなかったが、「丸三文庫」のFさんがひとりで店番をしていた。「ひとりで店番してて、寂しかったんです」と、あれこれ話に付き合ってくださるFさんに、『Hの雑誌』の連載についてあれこれ相談させてもらう。

 ラクーアには、クリスマスマーケットに合わせて屋台も出店している。その屋台でソーセージとレバーパテを購入し、すぐ近くの「成城石井」でビールを4本、それに割引になっていたたこ焼きを買う。これまでラクーアの中には数えるほどしか入ったことがなかったけれど、思ったよりも地元とおぼしきお客さんが買い物していた。クリスマスマーケットに合わせてか、ラクーアには飲み食い用のテーブルと椅子が用意されており、毛布も置かれている。毛布を使う勇気は湧かなかったけれど、そこでビールを飲んだ。園内を見渡すと、モデルを撮影するグループや、犬を撮影するグループが混在している。背景に映り込んだメリーゴーランドが動き出すまで、犬は大人しくポーズを構えて過ごしていた。