3月12日

 6時に目を覚まし、いそいそと洗濯機をまわす。コーヒーを淹れて、昨日稽古場に同席しながら合間の時間に書いていたRK新報の原稿を読み返し、メールで送信しておく。同じ場所を扱った記事が昨年秋に出ていたということが発覚したので、「そのときの記事とは内容が重複しない」ということを判断してもらうために、まだ粗めの状態の原稿ではあるけれど、送っておく。あまり同じ人/場所ばかり取り上げると公平性に欠けるということなのだろう。前に「末廣ブルース」を取材したときも、お店の共同経営者の方を同じ文化面で取材したばかりだったということで、掲載が難しくなりそうだったのだけれども、「末廣ブルース」があの場所にオープンしたこと、あのお店のビジュアルが界隈に与えたインパクトは大きいこと、また、界隈に増え続けているせんべろとは一線を画す酒場であることからどうしてもオープン直後に取材しておきたくて、共同経営者おふたりの連名なら、という話になり、無事に取材できたということもあった。今回はどうなるだろう。

 8時、インターホンが鳴り、佐川急便からの荷物が届く。一昨日ネットで注文したヨセミテストラップがもう届いた。スマートフォンを首からぶら下げるためのストラップ。同じストラップを知人がしばらく前に買っていて、ずっと欲しいと思っていた。密着取材をしているとき、いかに手を空けるかが問題になる。カメラで写真を撮る、メモを取る、ICレコーダーを向ける――この3つを同時にやろうと思うと、とても混乱する。ノートにメモを取ると、カメラを構えるには、一度ノートをしまうか、畳んで脇に挟む必要がある。写真を撮っていたところから、メモを取ろうとすると、ノートを開き、ごそごそとペンを探す必要がある。そうした数秒にタイムラグが生まれて、写真をとりそびれたり、大事な言葉の最初数秒をレコーダーで録り逃がしたりしてしまう。録音に関しては、しばらく前にピンマイクを買ったことで解決した。残りはメモだ。最善なのはケータイでメモを取ることだけれども(それなら後で読み返して判読できないということもなくなる)、ケータイでもメモを取るにしても、カメラを構えるたびにいちどしまっていると、微妙なロスに感じるときがある。ネックストラップがあれば、それを解消できると常々思っていたのだけれども、一昨日の稽古場で、衣装のT.Aさんが首からケータイを提げているのを見て、すぐに注文したのだった。ただ、ロスで言うと、外で作業をしているときはマスクをつけているのでFACE IDが使えず、頻繁にパスコードを入力するのも手間といえば手間だ。先月末に古書店の取材をしたときは、それが億劫でパスコードの設定自体をオフにしていたら、その状態ではセキュリティの問題でWallet機能が使えなくなり、改札口の近くで慌ててパスコードの設定をオンに戻し、WalletにモバイルSuicaとiDを登録し直さなければならなくなったこともある(と、こうして日記を書きながら、「パスコードを要求されるまでの時間を変更すればよかったのでは?」と気づいた。最初の設定では、パスコードを要求されるまでの時間は「即時」しか選べなかったけど、iPhoneのロック解除にFACE IDは用いない設定にすれば他の時間も選べるようになると知った)。

 午前中は、先月末に古本屋を取材したときの音源を起こす。ほとんど捗らないまま昼になり、サッポロ一番塩らーめんに、豚コマとニラともやし炒めをのっけて平らげる。午後もあまり捗らず。最近は、なんだろう、取材めいた取材といえばいいのか、掲載される雑誌の編集者が同席して、取材相手がいて、取材相手のマネージャーがいて、、という、かっちりした感じの取材が少ないせいか、毎日ただ楽しく過ごしているような気になってしまうけれど、毎日取材しているといえば毎日取材しているとも言える。「この日はただ休んで過ごす」という日を作ったほうがいいのかもしれないなあとぼんやり思いながら、あまり捗らないテープ起こしをする。

 15時半に買い物に出る。今日は焼肉が食べたいと知人からリクエストがあったので、肉を買いに行く。団子坂下のスーパー「野村屋」を覗くも、焼肉セットは見当たらず、よみせ通りの「マルエツプチ」まで足を伸ばす。肉と、それにあきたこまち5キロを買っておく(団子坂上の八百屋にも米は売っているのだけれども、そこだと2キロのお米しか売っていない)。普段なら米袋を肩に担いで歩くところだけど、今日は部屋着で出かけてしまったので、念には念をと腕まくりをして、腕で抱えながら歩く。じんわり汗をかく。一度アパートに荷物を置き、近所の肉屋で200グラムだけ上等な肉を買う。今日はロースを選んだ。19時、パソコンで『相席食堂』を観ながら、キッチンのコンロで立ち食い焼肉をした。ロースはうまかった。