3月16日

 5時に目を覚ます。上の階からこどもの足音が聴こえてくるのを待って洗濯機をまわし、コーヒーを淹れて、昨日煮ておいた小鍋に鶏肉を投入して火にかける。鶏肉に日が通ったところでジャーに移す。このジャーは新しく通販で買ったもので、二層式になっている。下にスープを、上にごはんを詰めて、9時50分にアパートを出る。カメラ一式やボトルを入れるとカバンはいっぱいになるので、ジャーは手に提げて千代田線に乗り、電車を乗り継ぎ与野本町へ。「c」に向けたWORK、いよいよ佳境に至りつつあるところに同席する。もう少し続くところだったけれど、後ろに予定があるので16時50分に稽古場をあとにして、千駄木まで帰ってくる。その道すがら、今週の委員会で諮るつもりだった聞き語りの本に目を通す。あらゆる場所にある生活についての語りに、いろんな人が耳を傾けるようになるといいなと常日頃から思ってはいるけれど、もともとインタビュー形式で収録された言葉を“モノローグ”にする――つまり質問を削る――と、読むときにどうしても頭の中で言葉を補い続けなければならなくなってくる。そうやって読み進めることには、ある程度忍耐力が必要になる。もしも読者が、そんなふうに忍耐力を働かせながらもこの本を読むとしたら、それはそれが被災地で語られた言葉だからだろう。どんな災害に対しても、被災してしまった人たちの言葉に、耳を傾けるべきだという気持ちがある一方で、その振る舞いは被災地を特別な土地として固定してしまうふるまいではないのかとも考えてしまう。すぐにパソコンを開き、オンラインの読書委員会に出席する。1時間半ほどで終わり、とり野菜みそ鍋をツマミながら晩酌。『テレビ千鳥』の広瀬すずの回。馬鹿馬鹿しいけど、面白かった。ただ気持ち悪い放送にも成り果ててしまいそうな企画なのに(そして気持ち悪くもあるのだけれど)ぎりぎりのところで品が悪く感じないのはなぜだろう。