7月26日

 5時過ぎに目を覚ます。やけにお腹が減っているので、冷凍ごはんを解凍し、たまごかけごはんにして平らげる。同じ日に知人とぼくとが10個入りのパックを買ってきてしまったせいで、卵を食べきれず、昨日で賞味期限は切れてしまっている。まあ5時間過ぎた程度なら大丈夫だろう。ふたたび布団に潜り、うとうと二度寝しながら、今日が締め切りの書評を練る。7時半に起き出し、残りの卵をゆで玉子にして、コーヒーを淹れ、書評を書き始める。ムックとして出版されているということで、通常であれば書評の対象外になると言われていたのだけれども、これは単著と言えると思うんですとお願いして、書評することになった一冊。でも、どう書評したものかとページを何度も繰っているうちに、2つの回が対照的で、そこを軸に書けばいいのか、と思うとすぐに書き上がる。

 郵便受けに朝刊を取りにいく。一面には大きく柔道金メダルの記事が掲載されている。連載されている小説「黄色い家」を読んで、ふと上の書評欄に目を移すと、「ホテルを悪者 理不尽」という見出しが出ている。都内のホテルがエレベーターに「日本人専用」「外国人専用」と貼り紙を掲示した問題について、「確かに、表現に問題はあったが、ホテルが一方的に悪者にされるのは理不尽」という大学生の意見が掲載されている。数ある投書からこれを選んで掲載した人の良識を疑う。10時過ぎ、茹で玉子を2個食べて、テープ起こしを進める。お昼過ぎには22日取材ぶんを起こし終わる。そのころには仕事に出かけた知人も帰ってきたので、『ジョブチューン』という番組――チェーン店やコンビニの味をプロが評価するという企画をよく放送していて、なんというかその会社の雰囲気が透けて見えるのが面白くて、放送されているとつい見てしまう――で、江部シェフが披露していたアレンジレシピのことを思い出し、作ってみる。エスビーのたらこソースを、ミニトマトとトマトジュースとカレー粉を混ぜるアレンジレシピ。食べてみるとまあ美味しくはあったけど、カレー粉が入っているせいかガツンと鶏肉でも入れたくなる味だった。

 午後は23日取材ぶんのテープ起こしを進める。16時45分ごろに集中力が途絶え、洗い物をしたり、洗濯物を取り込んだりしながら、新規感染者数の発表を待つ。17時になる少し前に、東京の新規感染者数は1429人、先週月曜日より702人増、とNHKの画面に表示される。えっ、倍増ってことかと呆然とするまもなく、画面はオリンピックの話題に戻ってしまう。日が暮れてからはビールを飲みながら仕事を続けて、20時に起こしを終える。あとは原稿を書くだけだ。知人が「みほり峠から揚げの素」を使って揚げてくれた唐揚げと、枝豆をツマミに晩酌。みほり峠の唐揚げは山口のソウルフードらしいのだけれども、このから揚げの素はたしかに癖になる味だ。

 今季のドラマは、面白そうな雰囲気のものは多いけれど演技や演出に耐えられずに途中で止めてしまうので、今日は「シソンヌライブ[dix]」を観ることにした。7月7日から本多劇場で上演中の単独ライブで、初日の7月7日、中日の7月20日、千秋楽の8月1日には撮影が入り、2400円で配信されている。7月7日のぶんを購入して、テレビに繋いで観る。何本目かのネタで、居酒屋バイトの同僚が自分に興味を示してきて、それがあまりにしつこいので鬱陶しくなり、最後には「きもちわりいんだよ」と吐き捨てるように言って殴り倒す――というオチに、一気に引いてしまう。シソンヌならもっと別の展開を描けたのではないか。

 その一本前にかけられていたのは、工事現場で高校生と警備員が出会うコントだ。その工事現場では、かつて駐車場だった場所がフットサル場に作り替えられているところだ。高校生はその駐車場で過ごすのが好きで、工事を中断させようとする。そうして何日もやりとりしているうちに、高校生と警備員がどこか通じ合っていく、「世界がこんなふうであったらいいのになあ(しかし現実にはそんなことはほとんど起こり得ない)」と思わされるコントだ。その、どこか絵空事の世界に没入することを避けたかったのだろうか。あるいは、その高校生のキャラクターは、「シソンヌライブ[trois]」に登場した中学生に似ている。その中学生は、「先生はいつ覚醒するのか」と、担任の教師に問いかける。自分の親世代は、中学時代に教師に殴られた経験があり、自分はいつ殴られるのかと教師に問い詰めてゆく。そこでイメージされていた暴力も、どこか頭をよぎりはするけれど、こんなふうに誰かを「きもちわりい」と切り捨てて殴るオチを描くというのは、一体どういうことだろう。そこで会場から笑いが起こったことにも腹が立った。と、ぼくがぶつくさ言い出すと、「もう観るのやめえよ」と知人が困ったように言う。「一回そうなったら、全部『つまらん』って言うじゃん」と。その言葉通り、それ以降のコントに対してはずっとぶつくさ言っていた。途中でウトウトしながらも、最後まで観終わると、眠気のピークを超えてしまった。チャンネルをまわすと、卓球男女混合の決勝戦をやっていたので、試合が終わるまで観た。