7月29日

 4時過ぎに目を覚ます。扇風機が首振りモードのまま回転している。たぶんきっと、知人が風邪を引き掛けているのもこれのせいだと、首振りを止めて、足元に一番弱い風がかすめるように角度を調整し、二度寝する。6時半に布団から這い出し、今日の天気を確認する。ウェザーニュースだと10時から雨、アメミルだと午後に雨雲がかかり始める。カーテンをあけて空を見て、これならいけるだろうと洗濯機をまわす。ストレッチをして、コーヒーを淹れ、新聞に目を通す。「沖縄振興 自民が提言案 来年復帰50年『発展に資する』」の見出し。

 テレビをつけると、『スーパーモーニング』が卓球女子の選手を特集している。幼稚園の頃から「毎日7時間以上練習→深夜2時に及ぶことも」と、ボードで紹介する。練習が大変で泣き出すことがあっても、最後には自分で「やる」と言って練習に取り組んできた、とスタジオの誰かが解説する。これは美談として報じることなんだろうか。親がこどもに卓球をやらせようと必死になっているときに、こどもは「やる」と言うしかないだろう。でも、どのような環境で育つにしても、ホワイトキューブのような空間にいて、本人の意思で選んだものにだけ触れていく――とはいかないのだと考えると、自分にこどもがいないことにホッとしてしまう。

 9時から原稿を書く。雨は降らず、洗濯物はすぐに乾いた。昼はセブンイレブンに出かけ、ちょっと前に新商品として並んでいたスパイスカレーを食べるつもりでいたのに、もう棚から消えている。悩んだすえに、麻婆焼きそばを選んだ。午後も原稿を書く。15時過ぎ、集中力が途切れたところで、コンロの掃除をする。コンロの掃除は億劫で、ついほったらかしてしまう。正確にはコンロの掃除が億劫というよりも、コンロをきれいに掃除したあとに、布巾を洗うのが億劫だ。布巾なんて適当に洗えばいいのかもしれないけれど、清潔に保つためにはちゃんと洗剤を使ってミニ洗濯板で洗って、しっかりすすいで、ハイターにつけて除菌して、またすすいで――という手間を重ねるのが億劫で、同じ布巾をしばらく使い続けてしまって、結果的にかえって不衛生になるという悪循環から抜け出せずにいる(テーブルはアルコールを染み込ませたキッチンペーパーで拭くので、布巾の出番が少ないというのもあるけれど)。今日は久しぶりに洗った。

 日が暮れるまで原稿を書き、とりあえず最終日まで書き終えることができた。団子坂をくだり、コーヒー豆を買って、スーパーで惣菜を買い、「乃池」というお寿司屋さんへ。向かいにある「砺波」にはよく通っていたけれど、ここのお店は「いつも繁盛しているなあ」と眺めるばかりで入ったことがなかった。書評を書いた本に登場していたこともあり、電話で穴子寿司を注文しておいてテイクアウトする。店内にはいたるところにしっかりアクリル板が設置されていて、2組のお客さんがお寿司を頬張っている。いつかカウンターで食べたい。帰りに「伊勢五本店」に立ち寄り、日本酒を買う。「乃池さん、美味しいですよね」とお店の人に話しかけられる。知人の帰宅を待って、体操女子個人決勝を眺めながら晩酌。甘い味付けが苦手な知人も、目を丸くして穴子寿司を頬張っていた。体操のことは記憶に残っていない。