11月3日

 6時過ぎに目を覚ます。『東京の古本屋』とツイートしている人がいないか、なにか感想を言っている人がいないかとネットで探す。あるランキングでは、「書店部門」で1位、とある。ただ、もっと大枠のジャンルの「エッセイ部門」だと数千位だ。難解な言葉で書かれた専門的な本ではなくて、ごく平易な言葉で綴っているものだから、もっと多くの人に手に取ってもらうことだって不可能ではないだけに、がっくりくる。そういえば知人もまだ、『東京の古本屋』を読み終えていない。知人を起こし、「今日は何の日や」と声をかける。無言だ。3回繰り返すと、「誕生日の1ヶ月前」と知人が言う(ぼくは12月生まれなので)。違うやろ、その前に文化の日やろ、だからまず、「なんか文化的なことせえよ」ってやりとりがあって、その上で「誕生日の一ヶ月前やし、その人が書いた本を読めえよ」って言いたかったんやろ、と文句を言う。「文化の日って答えたら、絶対『文化的なことせえよ』って言われるのが嫌やけ、答えんかったんやろ」と、知人は知人の不満を言う。

 昼は知人の作るトマト缶とサバ缶のパスタを平らげる。午後は原稿に向けて、もろもろテープ起こしを進める。16時になると、昼寝をしていた知人も起き出してきたので、一緒に散歩に出る。近くの医大は工事が終わり、囲いが取れている。囲いがあった先は、ちょっとした庭のようになっていて、急に風景が開放的になって戸惑ってしまう。根津神社を抜ける。バー「H」が空いていたら、と思っていたら、今日は水曜だから定休日だった。あかじ坂の貼り紙を見て、坂上でなにやらロケが行われている横を通り過ぎ、ぐるりと歩く。歩きながら、今後の取材の案を知人相手に話す。少し先を歩いていた「観光」客が、道の真ん中で立ち止まり、風景に見入っている。どうしてそこで立ち止まるかなあと思いながら、その人たちを追い抜く。取材の案を話し続けていると、知人はほとんど相槌を打たなかった。「さっきみたいに、風景を見ながら歩いてる人たちのことを邪魔だと思っている感じの人が、どうしてそういう取材をしようとするのか、意味がわからんなと思って」と知人が言う。