11月26日

 10時過ぎ、部屋を出てエレベーターを待っていると、同じフロアに泊まっているFさんやKさんもエレベーターホールにやってくる。一緒に劇場まで歩く。風が強く吹いている。今日から上演する作品のポスターが街頭に張り出されているのを2度見かけた。「はせぴ、凱旋じゃん」とFさんがつぶやく。10時半からリハーサルが始まる。12時過ぎにお昼休憩となり、裏に戻ると、劇場の方が買ってきてくれた「おのざき」(鎌田店)のお弁当が並んでいる。6種類並んだお弁当を眺めながら、俳優のHさんはしばらく迷ったのち、「いや、今日は肉だな!」と、山賊揚弁当を手に取る。おお、ボリューミーなやつ選ぶねえと思いながらその姿を見送ったのち、もう一つ並んでいた山賊揚弁当を選んで、ロビーで平らげる。ここは公共施設だからか、市民に開かれている感じがあって、5階の大リハーサル室のあたりでもお弁当を食べている人の姿があった。

 14時にゲネプロがあり、フィードバックを経て、初日に向けた準備に入る。迂闊な動きをすると作品を台無しにしてしまうのではないかと怯えつつも、最低限の範囲で記録に向けた写真を撮っておく。19時、定刻通りに初日の公演が始まる。ぼくは下手側の最後列で観劇した(最近はこの場所に座りたくなることが多い気がする)。終演後、小雨が降るなかを、傘もささずにFさん、Jさんと一緒に街を歩く。雨で濡れた街はぬらりと輝いている。数日前に聴いた前野健太「ねえ、タクシー」の歌詞が頭をよぎる。金曜日だからか、街に賑わいがある。観客がいるっていいですねと、Fさんが言う。この作品を観られることに対して緊張していた部分もあるけど、今日の回は良かった気がする、と。

 本番中の皆で焼き鳥屋さんに向かって夕食をとる。俳優のHさんは、ちゃんと一人芝居を完成させられるかということに集中していて、昨日までは一緒に夕食をとる機会はなかったけれど、初日があけた今日はHさんの姿もある。ただ単に奥から順に詰めただけなのはわかっているけれど、Hさんが隣に座ってくれたので、今このタイミングで何か伝えておかなければならないのではないかという気分になり、いくつか言葉を手渡しておく。明日も公演があるので、早めにお開きになる。今日も「鳳翔」に足を運んでおかなければと、皆と別れて向かってみたものの、金曜日とあってかほとんど満席で、その賑わいの中に交わるのは流石に不安なので、すごすごとホテルに引き返す。