12月9日

 7時過ぎ、上の階からこどもが飛びはねる音がして目が覚める。こう書くと、どうしても騒音に不満を抱いているようになってしまうけれどそんなことはなく、朝からあんなにエネルギーを爆発させられるんだなあと思うのと同時に、もう洗濯機を回しても大丈夫だなと思うだけだ。今日は洗濯物がかなり溜まっているので、早々に洗濯機をまわして、ゴミを出す。昨日整理した領収書を机に並べて、未登録のままになっているデータを「freee」に登録していく。

 もうちょっとお腹が減ってからたまごかけを食べようと思っているうちに、気づけば10時半を過ぎている。これならもう、朝ごはんは食べなくていいかとコーヒーだけ飲んだ。ここ数日は自分の食欲を意識しながら過ごしている。数日だけでも感覚は変わるものだなと思う一方で、自分の意識や身体を管理したところで何になるのかという気持ちも湧く。12時にパスタを茹でて、落合シェフのカルボナーラソースと和えて平らげる。まずくはないのだけれど、ベーコンがやっぱりレトルト食品で、自分で作っていたキャベツとベーコンのパスタのほうが満足感はある。

 午後は風呂に湯を張り、入浴しながら『言葉を失ったあとで』を読む。少し読んでは閉じ、少し読んでは閉じと繰り返しているので、ようやく半分ぐらい。16時半に家を出て、新宿へ。今日は久しぶりの観劇なので、ちょっと浮かれた気分のまま思い出横丁「T」。瓶ビールを注文して、さてツマミは何にしようかとメニューを見る。壁に貼られていたメニューは姿を消していて、黒板に書かれた本日のおすすめと、あとはラミネート加工されたメニューがカウンターに数個置かれている。黒板に目をやるとたこさんウィンナーがあり、おお、今日これから観る作品でも「たこさんウィンナー」が登場するんだよなと注文。瓶ビールを3本飲んだ。

 18時50分に「LUMINE 0」へ。19時になると開場し、特に整列させられることもなく、ぞろぞろ入場する。下手の端っこの最後列にマフラーを置き、展開されているtrippenの靴を眺めたり、別作品の舞台装置を眺めたり。19時半、『BEACH』が開演。一ヶ月ちょっと前に善通寺で観た上に、台本と記録映像も送ってもらってここ10日間ぐらいぐるぐる考えていただけに、前回とは違った解像度で作品が見える。耳に残ったのは音だった。終演後、ZAZEN BOYSの「ASOBI」を聴きながら街を歩く。イルミネーションが灯っている。甲州街道明治通りの交差点を通りかかり、ああ『トーキョードリフター』のオープニングはここだったなと思って立ち止まり、写真を撮り、前野健太「鴨川」を再生する。

 新宿三丁目「F」で焼酎の水割り。店員以外マスクなんて誰もしていない。真隣りに座ったお客さんがマスクをカウンターに置き、しゃべりだしたことにそわそわしてしまう。小一時間ほど過ごしたのち、地下鉄を乗り継いで根津のバー「H」に入ると、今日も賑わっている。端っこの席に座り、無言のままハイボールを出してもらったあとで、「すみません、そこにあるビフィーターを使って、何か甘めのカクテルを作ってもらえませんか?」とお願いする。Hさんはジンフィズを作ってくれた。ここでもお客さんは誰もマスクをしていなくて、楽しそうに飲んでいる。そんなことに神経質になる人間はもう、酒場に足を運ぶべきではないのかもしれない。夕方、チャンネルをTBSに合わせていると、ニュースキャスターが「ゼロリスクはありえない」「他にも気にするべき感染症はある」と強調してから、新規感染者数を発表している。帰り際、Hさんに、こないだ読んだ小説に、ビフィーターばかり飲んでいる男が、それもたっぷり砂糖を溶かして飲んでいる男の小説が出てきて、それを読みながら、今度ここにきたら甘いカクテルを作ってもらおうと思っていたんですと伝え、お店をあとにする。