12月15日

 7時過ぎに目を覚ます。午前のうちに検査結果が届き、無事陰性だとわかる。11時半にタクシーを拾って日暮里駅へ。スカイライナーは残り346席で、たっぷり余っている。11時45分発のスカイライナーに乗り、成田空港にたどり着く。やっぱり早朝よりこの時間のほうが人が少ない気がする。チェックインして荷物を預け、マスクを外して談笑する人がちらほらいるなあと怯えつつ、リンガーハットのちゃんぽんを平らげる。飛行機はがらがらで、並びの3席をひとりで使っている状態だ。今日は乗客が少なそうだったので、窓側の席を選んであった。フライト中はiPadで『ロッキー』を観ながら、ときどき窓の外に目をやる。富士山がとても綺麗だった。窓側を選んだのは、上空から水納島を眺めたかったからだけど、今日の航路からは水納島は遠くにしか見えなかった。

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 16時半に那覇空港に到着し、ゆいレールで県庁前に出て、スカイレンタカーで車を借りる。特にナビは使わず、国道58号線から松山の交差点を右折し、県庁前を通り過ぎ、開南方面に左折する。右車線を走ってしまっていたので、開南の交差点を右折し、「まあ、ここで右折しても、どっちにしても330号戦に出るから問題ないだろう」と思っていたら――これが大失敗だった。時刻は17時10分、330号線は大渋滞で、ほとんど動く気配が見えない。数分に一回、車数台ぶんだけ前に進める。たった1キロの距離を1時間近くかけて進んで、ようやく「HOTEL AZAT」にたどり着く。この道路はきっと、いつも混むのだろう。国際通り〜蔡温橋を右折というルートを選べば、ここまで酷い渋滞には巻き込まれずに済んだはずで、今後はこのルートを避けるようにおぼえておく。去年の11月に知人と一緒に沖縄を旅したときにもこのホテルに宿泊して、この地下駐車場への入り口がわからなかった上に、本当に駐車できるのかという狭いスペースしか残っていなくて大変だったなあと、地下の駐車場を目にした瞬間に懐かしく思い出す。

 ホテルにチェックインして、シャワーを浴びたのち、「うりずん」を覗く。ちょうど開店時にやってきたお客さんが帰り始めたタイミングのようで、カウンターが空いていたので入店。店長のSさんから「橋本さん、ずっとこっちにいるんですか?」と尋ねられ、いえいえ行ったり来たりしてますと答えて、1杯目のビールを飲んだ。ビールを2杯飲んで、白百合を2合。あとから隣に座ったお客さんはプロスポーツ選手らしく、すらりとした姿に、テーブル席で模合をしていたお客さんに声をかけられ、一緒に写真に撮られている。カラカラを飲み干したところでお店を出て、隣の酒屋さんの前を通りかかると、ゴン太の姿は見当たらなかった。ベッドがわりの段ボールも見当たらず、少し動揺しながら「東大」に流れ、カウンターでおでんをつまんだ。カウンターに置かれたテレビでは、「新たな沖縄振興法は5年に」とニュースが報じられている。

 おでんを食べ終えたところで酒屋に引き返し、「あれ、ゴン太は」と尋ねる。ああ、ゴン太はね、3週間ぐらい前だったかな、そこの道路で事故に遭って、とお店の方が言う。昔からずっと放し飼いになっていて、夏の暑い日にはクーラーの効いたATMに入り込んでいることもあった。酒を飲んだ帰りにその姿を見つけ、「これ、ゴン太! ここはもうすぐシャッターが閉まるけ、帰れんようになるで!」と話しかけて、どうにか外に出させたこともあった。最近はすっかり年老いて、ほとんど寝たきりになっていた。でも、最後にその姿を見た一ヶ月前には、よろよろと表を歩き回っていた。その頃にはもう、ほとんど目は見えなくなっていて、慌ててお店の方が止めていた。轢かれてしまって、ゴン太は苦しかっただろうか。それともそんなに苦しむこともなく逝けたのだろうか。缶ビールを買って、宿に引き返す。