1月19日

 4時50分に目覚ましで起きる。シャワーを浴びて、コーヒーを淹れる。半分は知人用に、半分は自分用に水筒に入れる。アプリでタクシーを呼び、日暮里駅に出る。いつもはギリギリに駅に到着することが多いのだけれども、今日は時間に余裕がある。ホームを見渡してみると、待合室でスカイライナーを待っている人が数人いる。朝早い時間だと、電車の乗り換えの都合もあって、そうしてしばらく待合室で過ごしている人がいつもいるのだろう。何度もこの駅を使っているのに、初めて目にする光景だなと思う。今日は「残り329席」と表示されていたけれど、思ったよりか席が埋まっているように感じた。空港第2ビルで電車を降りて、第3ターミナルまで歩く。チェックインを済ませて、ローソンで枝豆と塩昆布おにぎりを買って、保安検査場を通過する。出発ロビーはがらがらだった。隅っこでおにぎりを食べて、飛行機に乗り込む。3割ぐらいしか埋まっておらず、感染リスクを考えるとホッとするものの、これで経営は大丈夫なのかと不安にもなる。

 機内アナウンスで、使用したティッシュペーパーやマスクを捨てる場合には、エチケット袋に入れた上で乗務員に渡すようにと呼びかけられている。ここ数日見かけた情報だと、沖縄の成人式に参加した若者たちが、基本的にはマスクをつけて行動していたにもかかわらず感染したという報道も見かけた。思い浮かぶ節があるとしたら、写真撮影のために屋外で少しマスクを外したときくらいで、そのときも特に会話はしていなかったという。実際のところ、どれぐらいの感染力があるんだろう。オミクロン株に限らず、マスクをしていたところで飛沫をすべて防げるわけではないから、マスクをつけていても大声で会話をしていたら感染リスクはあるのだろうけれど、どれぐらい怖がればいいのか、オミクロンに関してはわからなくて、不安だ。これから先、暖かい季節がやってきて、沖縄への旅行客が増え始めると、飛行機に乗っているのがかなり不安になりそうな気がする。通い続けて、取材を続けられるだろうか。

 11時に那覇空港に到着する。小雨が降っている。傘を買おうと空港のコンビニに行ってみたものの、空港だからか、傘は売っていなかった。預けた荷物が出てくるのを待っているあいだ、ふとあたりを見渡すと、ガラス越しに沖縄そば屋の様子が見えた。いつもはわりと埋まっている店内に、客はひとりしかいなかった。ゆいレールもがらがらだ。県庁前駅で下車し、ほんの少しだけ雨が降るなか、国際通りを歩く。ホテルまでの数百メートルのあいだ、すれ違った通行人は両手で数え切れる程度だ。旅行客だけでなく、地元の人もほとんど歩いていない感じがする。ホテルランタナ那覇国際通りに荷物を預けたのち、市場界隈を歩く。静かだ……。休業中の店もかなりある。

 今回はとりあえず、2泊3日の旅程で航空券と宿を手配してある。ただ、その日程で取材しきれなかった場合に備えて、帰りのフライトは少し多めの額を払って、変更可のものにしておいた。とにかく、取材先を決めなければ。ぐるぐる歩いたのち、やはり事前に想定していたお店に話を聞かせてもらいたいと思い、買い物をしたのち、過去の紙面のコピーを手渡して打診する。断られるかもなあと心配していたことが嘘のように、トントン拍子に話が進んで、「このあと、14時から」と決まる。ホッとしながら、むつみ橋の「KDY」に向かうと、お店の方たちが店の前の水路を掃除しているところだ。この時間でもお客さんが少ないのかと驚く。店内に入り、先月記事を掲載させてもらったお礼を言い、ロースそばを注文する。記事の反響は大きくて、数十年ぶりにきてくださったお客さんもいたんですよとお店の方が言う。ただ、感染が拡大するなかで人通りがかなり減って、臨時休業にしてもいいんだけど、「閉めるのも面倒だから、開けてるんだよ」と笑っていた。

 ホテルのロビーで質問リストを作り、14時ちょい過ぎに取材先に出かける。1時間半ほど取材する。取材を終えたあと、あらためて界隈を散策する。もう1軒、3月の回に登場していただきたいと思っているお店を訪ねる。前々から「いつかお話を聞かせていただけませんか」とお願いしているお店なのだけれども、いつもお仕事がお忙しそうで、聞けないままになっている。今日も仕事が立て込んでいる様子で、今日明日でどうこうというのは難しそうだったので、お時間のあるときにぜひお願いしますと伝えて引き返す。以前取材させてもらった鰹節の「MTMT商店」を通り掛かると、「今日は八百屋さんの取材だったの?」とお店の方に声をかけられる(今日の取材先と「MTMT商店」は100メートルと離れていないので、外観を撮影している姿をみられていた)。「最近は取材を受けてもらいやすくなってきたんじゃない?」と、ずばりと言い当てられる。いつも歩き回って取材先を探す姿を見られていたこともあり、「昔はちょっと、不憫に思うぐらいだったから」と店員さんが笑う。

 宿に引き返し、さきほどの取材のテープ起こしに取りかかる。17時15分に宿を出て、栄町市場へ。開店直後の「うりずん」で、お客さんが入り始める前にさくっとビールをと思っていたけれど、到着してみると臨時休業中だ。去年はアルコールが提供できない時期でもノンアルコールで営業していただけに、あらためてオミクロン株の影響力を感じる。そのまま引き返し、「赤とんぼ」でタコライスを買って、宿に戻って平らげる。今日はもう休肝日にすることにして、飲み物はコカコーラ・ゼロにしておく。部屋でテープ起こしを進めたのち、21時過ぎに夜の市場界隈を眺めに出る。蔓延防止のアレが出ていることもあり、21時とは思えないほど静まり返っている(ただ、今のようにせんべろが増えるまでは、夜は静かな街だったのだろうけど)。営業している酒場も数軒だけあるけれど、普段賑やかなせんべろの店はほとんどが臨時休業に応じている。コンビニでウィルキンソンを買って、国際通りも練り歩く。ここでも営業しているのは2、3軒くらいのもので、真っ暗な道を県庁前広場までただただ歩いた。

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