2月7日

 昨晩はいくつか夢を見て、目を覚ますと汗をかいていた。一度目は、僕が書いた本のせいで何かネガティブなことが起こり、問い詰められるという夢だった。そのあと、沖縄をテーマに今更こんな書き方をするなんてと批判される夢も見た。6時過ぎに布団から這い出し、浜に出て、灯台を目指して歩く。作品に引用された風景を、動画で伝えておこうと思って、いくつか撮影してInstagramに載せておく。今日は日の出が見られそうだったのに、8時近くになっても太陽は見えなかった。宿に引き返し、シャワーを浴びる。シャワー室はなかば屋外なのでかなり凍えることを覚悟していたけれど、お湯がしっかり温かかった。

 8時半、朝食をいただく。目玉焼き、ソーセージ、サラダ、卵をおとした味噌汁、それに焼きのり。今日は肌寒いからかホットコーヒーも入れてもらえた。書籍のポスターがあることをお伝えして、どこか本部町内で貼ったらよさそうな場所(地元の方が「ああ、こんな本出てるんだ」と気づいてもらえるような場所)はありますかねと尋ねると、何枚かもらえたら、自分が貼ってもらえるか頼みにいきますよと言ってくださったので、いくらかお預けする。9時半発のフェリーで本島に引き返す。ちょうどTさんも今日から島を出る用事があって、同じ船に乗っていた。Tさんが海運の事務所に案内してくれて、「ポスター、どこかに貼っていいか?」と許可を取ってくださって、チケット売り場の窓の近くと、待合所のガラスにそれぞれ貼らせてもらった。

 町営市場でコーヒーでもと思ったものの、開店まで少し時間があるので、今帰仁方面にドライブ。エンジンをかけると、ナビが「今日はオリンピック・メモリアルデーです」と言う。鼎談シリーズで話題に出たタピオカサンド店まで行ったあと(週末だけの営業なので当然ながら営業していなかった)、同じ道を引き返す。ずっと同じ場所に佇んで、行き交う車を眺めているお年寄りがいた。町営市場でホットコーヒーをテイクアウトして、観光協会を覗く。前に少し情報をいただいた方にと、本を届けに行く(ご本人は不在のようだったので、別の方に預けておく)。博物館の方にも謹呈したかったところだけど、今は臨時休館中だ。名護に出て、書店を巡る。店員さんが忙しいタイミングを避けるように、しばらく様子を伺ってからご挨拶をする。もうすぐこういう本が出る予定でして、島の皆さんも「親戚に配るぶんを買いに行く」とおっしゃっていたので、問い合わせがあるかもしれないなと思い、事前にご案内できればと思った次第です。と伝えながらも、やっぱり店員さんは(朝だから当然)お忙しそうで、心苦しくなる。イオンの入り口にはバスが止まっていて、それは日ハムのキャンプ地へのシャトルバスだった。

 今日はこれから那覇まで南下しながら、書店をめぐるつもりでいた。名護の書店であれば、さっきみたいに「島の方たちが買いにこられるかもしれないので」と伝えられるかなと思うけれど、この先はどうしよう……。根本的に自分は営業というものに向いてないのではという気持ちを抱えつつ、金武町、そして沖縄市の書店に立ち寄る。タイミングを見て、おそるおそるお声がけすると、思っていた以上に朗らかに迎えてくださってホッとする。「え、著者の方がおひとりで……?!」と驚かれた店員さんもいた。14時過ぎ、プラザハウスの前を通りかかったので、「セニョール・タコ」を覗くとがらがらで、お客さんは1組だけだ。タコスを1プレート(3個)注文し、ぱくぱく食べる。並びにある「ローズ・ガーデン」というお店では、去年の春、ステーキハウス「サムズ」の創業者の方が自伝を出版され、著者自ら店頭販売していて、1冊購入してサインをしてもらった記憶がある。ただ、その自伝は第1巻で、ぱらぱら捲っても「サムズ」創業よりずっと前の話が続いていたので、続編が出るのを楽しみにしていた。店頭には、おそらくその続編とおぼしき本が並んでいたけれど、その最後のほうをぱらぱら捲ってみても、まだ「サムズ」の話は出てきていなかった。駐車場を出ようとしたところで、向かいの警察署の入り口に、パトカーがランプを光らせながら停まっているのが目に留まる。ああ、そうか、ここにある警察署が沖縄警察署だったのかと、今更ながら気づく。

 今日の締めくくりに、ライカムの書店に立ち寄ると、最初は文芸担当の方に繋いでいただき、「せっかくなので色紙に何か書いていただけませんか?」と言ってくださる。最終的に店長の方まできてくださって、店長さんが「それで――うちは何冊入る予定になってるの?」と店員さんに尋ねると、「すみません、今のところ予定がないみたいです」という話に。入荷の予定がないところに、勝手に押しかけてしまって本島に申し訳なく思っていると、注文を入れておきますと言ってもらえてホッとする。

 「カフェユニゾン」に立ち寄り、アイスコーヒーをテイクアウトで注文する。いろんなチラシが置かれている場所があって、そこには『Light house』のポスターも貼られていたので、「すみません、あの作品に引用文献としてクレジットしてもらっている本を書いたものなんですけど、もしよかったらチラシを置かせていただけませんか」と声をかけてみる。チラシをお預かりするのは1ヶ月までというルールがあるんですけども、それでもよかったら、と受け取ってもらえた。アイスコーヒーは、これがフレーバーコーヒーというやつなのだろうか、今まで飲んだことがない香りがして、へえー、と感心しながら飲んだ。

 那覇まで引き返し、メインプレイスの書店に行ってみるも、まだ並んでいないようだ。夕方になってお客さんも多い時間帯なので、気後れしてしまったのと、明日あたりには入荷されているのではということで、また明日お邪魔することにする。坂を下り、コインパーキングに駐車したのち、「ラテラ舎」へ。福田和也『ろくでなしの歌』など数冊買う。おふたりとも『Light house』をご覧になっていることもあり、「公演、お疲れ様でした」と声をかけられたものの、いやいや僕は取材してるだけなのでと返す。ふたたび車を走らせ、ホテルの近くのコインパーキングに駐車する頃には16時半近く。ホテルに荷物を置き、ジュンク堂書店那覇店へ。今日11時の時点で、ネットで確認すると「在庫あり」になっていたので、どのあたりに並んでいるんだろうかと探して歩く。1階の新刊台には見当たらず、2階に上がってみると、沖縄本の新入荷の棚に並んでいる。そうか、北部にある小さな離島の話だと、やっぱりちょっと遠くの話なのかなと思う。

 市場界隈をぐるりと巡ったのち、レンタサイクルを借りる。「みかど」に電話をかけ、何を頼むか迷ったけれどやっぱりコンビーフとやさい炒めを注文しておき、自転車でとりにいく。自転車を返却し、ビール6缶セットを抱えて、宿を目指す。ちょうど夕暮れ時だ。今日はいちにち運転していた上に、慣れないことをしたのでくたびれている。あーあ、こんな日は屋外のテーブル席で、ジョッキに注がれたビールをぐびぐび飲みたいんだけどな! あーあ! と心の中で思いながら、西日に向かって国際通りを歩く。ホテルにたどり着き、ビールをぐいぐい飲んだ。どこにも出かけずホテルで過ごすのは、何日も続けるのはなかなかタフだ。本当は10日に帰京する予定だったけれど、もろもろスケジュールを調整し直し、9日の便に変更する。ぐいぐい飲んだせいで、20時半には眠ってしまった。