4月2日

 早朝から成田空港に向かい、高松へ。空から見ると山に桜がもこもこ咲いていた。レンタカーを借りて、10時半、まずは「がもううどん」。例によって長い列ができていて、30分ほど並ぶ。前に並んでいたのは若い4人組だった。お店の入り口まで近づき、軒先にある「小(1玉)150円/中(2玉)250円/大(3玉)350円」という表示を見て、「どうする、にたま行っちゃう?」とひとりが言う。同じ看板を見て、自分は「ふたたま」と読んでいた。地域によって差が出るのだろうか。「いや、今日は4軒まわるから、さすがに1玉でしょ」と、別のひとりが言う。ぼくは中を頼んで、せっかくだからと玉子とちくわとゲソの天ぷらをのっける。盛りだくさんだ。

 せっかく近く(?)まできたのだからと、高速道路で瀬戸大橋を渡り、倉敷へ。「蟲文庫」を覗くと、Tさんがコーヒーを淹れてくれる。もしよかったらどうぞ、と丁場の横に椅子を置いてくださったので、しばらくぽつぽつ話す。以前、「将来的には、各地にある、いろんな謂れのある石を取材したいと思っている」と話したのをおぼえてくれていて、仕入れた本の中にある石の記述を教えてくれた。危口さんの話をぽつぽつしていると、弟さんがふらりと入ってこられて驚く。

 観光地について、最近考えていることもぽつぽつ話す。「私も、こういうところでお店をやっているから、そういうことをよく考えるんです」とTさん。かつて危口さんは「観光地とは土地の演技である」と書いていて、観光地として「昔ながらの風景っぽいもの」の演技を続けている美観地区と、昔ながらの建物でありながら、生活に合わせて適度に現代的に改変されている本町の街並みを対置していた。ただ、それから時間が過ぎ去って、ここ数年は本町もすっかり観光地になりつつある。

 取材を受けると、どうしてここでお店をやっているのかとよく質問されるとTさんが言う。その質問にうまく答えるのは難しくて、あくまでここで本屋をやっている理由に絞って答えているそうだ(観光地だから、普段は本屋にあまり立ち寄らないお客さんも入ってきてくれることがあるから、そういう方たちが本を手に取るきっかけを作れたら――と)。話は変わり、僕が名護のクリーニング店に立ち寄ったときのことを話すと、Tさんも同じようなこと(この先お店を閉じる日がやってくるのだとすれば、自分で片付けたいから、その体力があるうちに――)を考えると話していたのが印象に残っている。

 本来なら今日は高松に1泊して、明日は倉敷に宿泊するつもりでいた。ただ、急遽友人のA.Iさんたちと与那国に行くことに決めたので、倉敷には宿泊しないことになった。倉敷でもコンサートを観るつもりだったので、チケットが余ってしまう。そうだ、せっかくだから、もしタイミングが合えばTさんに譲ろうと思い立ち、相談すると「ぜひ見てみたいです」と言っていただけたので、ネットから分配手続きをする。Tさんにぴあの会員登録をしてもらって、分配したところでお店をあとにする。

 時計を見ると15時過ぎだ。長居し過ぎてお仕事の邪魔をしてしまったかなと反省しつつ、危口さんのお墓参りをする。コンビニで缶コーヒーを買ってお墓に向かうと、お墓にはいくつも缶コーヒーが並んでいる。自分で買った缶コーヒーを飲みながら、高松に引き返す。「本屋ルヌガンガ」と「YOMS」で何冊か本を買って、ホテルにチェックイン。開演時刻は30分後に迫っている。コンビニでビールのロング缶とおにぎりを買って、頬張りながら会場に向かう。同じ道を、少し急いだ足取りで歩いて行く人たちがちらほらいる。ヒールのある靴を履いていた人が、それを脱いで駆けてゆく。18時過ぎ、カネコアヤノ単独演奏会のツアー初日が始まる。「明け方」が印象に残る。私には歌しかないんだと、芯から叫んでいるような歌声だった。その歌に圧倒されると同時に、その切れ味が鋭過ぎて、歌っているとき以外の自分自身のこともすぱっと切れてしまいそうで、少し不安になってしまうほどだった。YUKI FUJISWAの布が舞台の奥に吊るされていて、そのひかりがとても美しかった。

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