4月9日

 9時過ぎ、県庁前からゆいレールに乗り、壺川へ。急遽レンタカーの手配をしたものの、いつも利用している格安のレンタカー会社は那覇空港店にしか手配できる車がなく、そこまでタクシーで行くと1500円以上かかってしまうのと、早い時間だと空港からの送迎がない(のと、レンタカーの送迎はぎゅうぎゅうに押し込まれるので避けたい)のとで、比較的近くになる壺川駅でタクシーを拾って、レンタカー会社に行き、車を借り受ける。ダッシュボードを開けると、前の利用客の書類が残ったままになっている。ここの会社は、前の客のゴミが残っていたこともあって、ちゃんと清掃作業が行われているのか不安になる。

 運転中に手が触れる部分は除菌シートで拭いて、車を走らせる。まずは南風原文化センターに行き、「27度線をこえて 『復帰』をめぐる人々の足跡をたどる」という展示を観る。Uさんのお店にポスターが貼られてあって、「27 度線」という境界線を自分が意識したことがなかったこともあり、観にくることにした。わずか半月ほどの展示。27度線というのは、辺戸岬と与論島のあいだにあり、そこから南が切り離されたことを指し示す(もちろんその歴史は知っているけど、「27度線」という言葉を知らなかった)。復帰を求めて、洋上で抗議活動をおこなったり、全国を歩いて復帰を求める行動をおこなっていた人たちの姿が、そこに記録されている。

 展示を観たあとは、だだだっと北上し、13時のフェリーで水納島に渡るつもりでいた。ただ、Uさんから連絡があり、雑誌に掲載する写真が必要になったので、よかったらお店の写真を撮ってもらえないかと嬉しい連絡をもらったので、11時の開店時刻にあわせて市場界隈に向かう。むつみ橋交差点で信号を待っていると、男性にずっと頭を下げている女性の姿が目に留まる。なにかトラブルかなと一瞬思ったが――よく見ると男性は、女性の頭の上に手をかざしている。ああ、これか! 自分で目にするのは初めてだ!と少し感動する。手をかざし終えると、男性はしばらく言葉を交わし、次のターゲットを探している。見ていると、女性にしか声をかけていないことにも気づかされる。数人に断られたあと、その男性は若い二人組に声をかけている。いやーさすがに二人組は無理だろと思いながら眺めていると、二人組がベンチに腰掛けていたので驚く。

 浮島通り沿いの駐車場に車をとめて、カメラを提げて市場中央通りを歩く。どんな感じがよいか、何点ぐらい必要かを確認して、お客さんの顔を写さずに済むタイミングを待ち構えながら、写真を撮る。お客さんが増えたタイミングで、いちどUさんのお店を離れ、自分のWEB「R」の連載で必要になりそうな写真も押さえておく。高速道路をひた走り、15時半に本部町へ。町営市場でジンジャーエールをテイクアウトして、少し立ち話をしていると、「うちの父が『水納島再訪』を読んで、絶賛してました」と嬉しい声を聴く。実はこないだも、仲地さんから連絡があって――と話すと、「それが父です」と言われて驚く。

 16時のフェリーで水納島へ。最終便とあって、乗客は3名だけだ。フェリーが通ったあとにできる波飛沫に光が反射して、うっすら虹が出ている。祥さんが運転する車で宿に向かうと、若い子がふたり、出荷作業の手伝いをしている。ひとりは親戚の子で、ひとりは遊びにきている子だという。例年だとパーラーの手伝いをしているけれど、今年は海開きが遅れていて、農作業の手伝いをしているのだと祥さんが教えてくれた。

 まずは散歩に出かける。与那国で新人の先生がお出迎えされていたことを思い出す。ここにも学校があり、校長先生のための住居があり、教員宿舎もある。花壇も綺麗に手入れされてあるけれど、ここには今年も先生が赴任してくることはなかった。去年はこの時期にはもう営業していたパーラーは、営業している気配はなく、草が伸びたままだ。島をぐるりと一周したあと、ビールを飲んだ。仲地さんも達也さんも不在なので、夜は祥さんとふたりきりで話しながら、与那国で買ったものの未開封のままになっていたどなんを一緒に飲んだ。ここで祥さんが語っていた言葉はとても印象深いものだったから、いずれ原稿に書く。

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