10月1日

 8時過ぎに目を覚ます。朝から知人が「お散歩行く?」と何度か言うので、なにか展覧会でもやっていないかと調べてみる。ああそうだ、東京ステーションギャラリーでやっていた東北へのまなざし展が気になっていたんだったと調べてみると、25日で終了していた……。東京に戻ってきた日が最終日だったらしく、ちょっとそれは、観に行けなかっただろうなと諦める。昼、知人の作るトマト缶とサバ缶のパスタを平らげる。ビールも飲んだ。間違って録画されていた『報道ステーション』に三遊亭円楽のことが取り上げているようだったので、消す前に再生する。「死神」の下げの部分だけ放送されたので、気になり、YouTubeで検索して晩年の談志による「死神」を視聴する。もどかしそう。ビールを飲んだせいか、知人は眠ってしまって、散歩に行こうって言い出したのにと腹が立ち、置いたまま家を出る。有楽町をぶらりと散策し、Bluetoothスピーカーを物色する。音の感じを確かめてみたいと思ったものの、いろんな音が鳴っている家電量販店では確かめようがなかった。15時、根津のバー「H」へ。以前、ここで「露口」の話をしたことがある。この秋から始めるつもりの取材で、松山に何日か滞在し、もし受けてもらえるなら取材をしてみたい、と。その「露口」が閉店すると、数日前にSNSで情報が流れてきた。「仕方ないことですけど、昭和の店がなくなっていきますね」とHさんが言う。ほどなくして知人もやってくる。Hさんの言葉を反芻する。継ぐ人がいなければ、店は消える。どうにか存続させることだってできるけれど、それは「昭和の店」ではなくなるのだろう。仕方のないことだとは思う。どこかの老舗が、SNSで「レトロだ!」とバズって繁盛したとしても、それがお店の存続なのかどうか。同世代の誰かのSNSで、大人数で老舗に押しかけ、写真をパシャパシャ撮って載せているのを目にするたび、違和感をおぼえてしまう。

 バー「H」では、いつもハイボールばかり飲んでいる。Hさんがもともと働いていた銀座の「R」でもハイボールばかり飲んでいた。それは、坪内さんから「ハイボールが美味しい店」として教えてもらって、坪内さんもハイボールばかり飲んでいたから、それに倣って基本的にはハイボールばかり飲んでいた(坪内さんは「この店ではこのお酒を飲む」というのが決まっていた印象がある)。ただ、棚にはずらりと国内外のウィスキーが並んでいることだし、ハイボールをカパカパ飲むと19時過ぎには眠ってしまうので、2杯目はジントニックを、3杯目は「なにか『これ!』というウィスキーがあれば、それをストレートで」と無茶な注文をして、グレンモーレンジィの18年を出してもらう。わかりやすい派手さはないけれど、たしかにおいしい。店を出て、「ベーカリーミウラ」でパンを買って帰途につく。出前館で「老酒舗」の出前を注文して、アントニオ猪木の動画を探して眺めながら晩酌をする。偉大なレスラーだということはわかった上での話ではあるけれど、自分がプロレスに興味を持ったのはG-EGGSやTEAM2000の頃だったせいか、なんだか引っ掻き回す人という印象がどうしても残っている。ワインをかぱかぱ飲みながら頬張っていたせいで、結局のところ20時には眠ってしまう。