2月10日

 8時近くになって目を覚ます。外ではもう雪が降り始めている。昨日の晩酌の余韻がシンクに置かれたままになっているので、洗い物をして、コーヒーを淹れる。今日はさすがに、知人も在宅で仕事をするという。ただ、オンラインでミーティングがあるらしく、今日はお昼ごはんが少し遅くなる可能性があるので、10時近くまで我慢してから、たまごかけごはんを平らげる。午前中は書かないままになってしまっていたS・Iのドキュメントを書き進める。12時45分に炊き上げられるように、米をしばらく水に浸けておき、炊飯ボタンを押す。13時、青唐辛子ラムカレーと、はちみつバターチキンカレーを知人と分け合い、二種盛りにして平らげる。昨年末に知人が通販で買った、「エリックサウス」のレトルトカレーもこれで最後だ。なかなか贅沢な食事だった。

 ごはんを食べていたところに、メールが届く。来月刊行予定の書籍、ついに表紙の案が届く。知人に見せて反応を伺いつつ、すぐに返事を書く。

 午後もS・Iのドキュメントを書く。15時までに2本書き上げることができた。インターホンが鳴り、荷物が届く。昨日、書店で買えなかった『文學界』をネットで注文していたのだが、こんな日に配達してもらうことになってしまって申し訳ない気もする。ネットで注文していたのは『文學界』だけではなく、携帯用ウォシュレットと、ルヴァンのクラッカーも買っていたので、一緒に届く。携帯用ウォシュレットは、痔瘻の手術後に備えて買っておいた。うちには温水便座がないんですけど、携帯用みたいなやつを買っておいたほうがよいかと尋ねたところ、執刀医は「あったほうがベター」という感じの反応だった。最初は温水便座を導入することも考えたが、電気代が節約できる(そして衛生的な)タイプのものだと、安いものでも5万以上はする。今はなかなかの火の車状態なので、そんな余裕はさすがになく、携帯用を買っておくことにした。手術後にいきなり使うのは怖いので、今のうちにテストで使って慣れておこうと、手術前に届くように買ってあったのだ。

 クラッカーはと言うと、入院中に病院食だけだと小腹が減りそうな気がするので、おやつの持ち込みが可能なのかどうかわからないけど(食生活に制限が出る病気でもないし、入院案内にはお菓子の持ち込み禁止とは書かれていなかった)、こういうときはヤマザキナビスコのクラッカーだろうという考えがなぜか浮かんだ。ただ、近所のコンビニやスーパーではまったく見かけなかったので、これもついでに注文しておいた。5箱まとめて届いた。『文學界』も同じ梱包につつまれて、よれた状態で届く。さっそくクラッカーの箱をひとつ開けて、久しぶりに食べてみる。なんてことない味だけど、うまい。そういえば小さい頃はこのクラッカーをよく食べていたような気がする。今の実家ではなく、その家を建てる前に暮らしていた借家には、台所と居間のあいだの通路のような場所に石油ストーブがあった(今思えば、なぜあの位置にストーブがあったのか不思議だ)。そこでストーブにあたりながら、コロコロコミックを読んでクラッカーを食べていた。

 気づけばもう金曜日だ。日が暮れた頃になって、入院に向けた荷造りをうっすら始めたり、ウェブ連載の原稿を練り始めたり。NHKのニュースを見るでもなくつけていると、「マスク 来月13日から個人判断」という見出しが映し出される。これは2020年の5月に「県を跨ぐ移動 解禁へ」と報じられたのと同じぐらい衝撃を受ける。これまでだって、法的には個人の判断だったのではないかと思う一方で、この春で自分の行動も結構変わるのだろうなと考える。ちょうど新しい市場がオープンして、新刊が出るタイミングでもある。そのニュースに関連して、厚生労働大臣という肩書きの人間が記者会見する様子が映し出されるのだが、会見直前にマスクを外し、ジャケットの内ポケットにしまって話し始めている。その扱いからして非衛生的で、感染防止の効果もなく、こんな人が厚生労働大臣をやっているのかと思ってしまう。日が暮れたあとに近所の八百屋に行き、鍋の食材を買って帰り、晩酌をする。