2月22日

 6時過ぎに目を覚ます。早めに洗濯機をまわして、『つげ義春流れ雲旅』を少しだけ読んだ。半世紀前に綴られた文章で、『一九七二』ではないけれど、この時期は日本の風景が大きく移り変わる時期だったのだろうなあと感じる。たとえばテレビに関する記述(テレビが普及したことで、高齢者もテレビで流れる流行歌を歌っているという話)や、万博に関する記述に、時代を感じる。今ではもう、テレビのほうが役割を追えつつあるくらいだ。時代を感じるのは、この時代に文章を書く立場の人がまとっている知識階級のにおいが、時々顔を覗かせる。あるいは、「どう見ても山賊集落のようにしか見えない佇まい」という記述も、書く側と書かれる側の関係が一方通行だという感じがある。これは、その特権性を批判したいがために書いているわけではなく、時代の変化を感じるというだけのこと。

 布団から這い出し、コーヒーを淹れる。今日もずいぶん冷える。週間天気を確認すると、1℃や2℃まで冷え込むのは、向こう1週間でもあと数日だけのようだ。コーヒーを淹れ終わると、朝食の支度をする。納豆ごはん、インスタントの味噌汁、きんぴらごぼう、ししゃも3匹。9時過ぎから、ウェブ連載の原稿を書く。いい加減完成させなければまずい時期に差し掛かりつつある。

 午前中のうちに、ネット通販で注文していた諸々が届く。入院前に買っておいた携帯用ウォシュレット、これは本当に買っておいてよかったと思っているのだが(今の状態で、トイレットペーパーでおしりを拭くなんておそろし過ぎる)、使い終わった携帯用ウォシュレットには、水タンクの部分に水が残っている。水気が残ったままだと雑菌が繁殖しそうだから、水切りカゴのようなものに入れておきたいのだが、いくらなんでも洗い物用の水切りカゴに入れるわけにはいかない。ネットであれこれ探した結果、ちょうど良いサイズの箸立て(ステンレス製で、水切り用に穴がいくつも空いている)があったので、この箸立てと、それをぴったりおけそうな珪藻土マットを買っておいた。それが届いたので、さっそくトイレに携帯用ウォシュレット置き場を拵える。しかし、ウォシュレットがない国だと、痔の患者はどうやって過ごしているんだろう。

 14時過ぎになってお昼ごはんにする。スーパーで買ってきた冷凍食品の牛丼の具(すき家のやつ)を解凍して、ごはんの上にのっけて平らげる。ブロッコリーミニトマトもつけた。15時過ぎになってようやく原稿が完成し、まずは取材させてもらった方たちの確認にまわす(普段なら編集者のM山さんに送り、「この方向性でOK」と返事が届いてから確認にまわすのだが、今回はもうタイムリミットが迫っている)。今日は在宅で仕事をしていた知人は、16時過ぎに出かけてゆく。夕方以降は、昨日の打ち合わせを経て、出版後の諸々に向けた準備をする。まずは取材させてもらったお店の住所をエクセルにまとめ、すぐに献本してもらえるようにしておく。お店の住所は検索すれば出てくるのだから、僕じゃなくてもまとめられるような、と思いつつも、何名かは店舗がない方もいるので、電話をかけたり、メッセージを送ったりして、お届け先を確認しておく。

 18時過ぎ、買い物に出る。近所の八百屋は特に買いたいものが見つからず、団子坂下にあるスーパーまで足を延ばす(コーヒー豆を切らしていたのも理由のひとつ)。明日のお昼ごはんに向けて鶏胸肉と、100円で売っていたシウマイも買っておく。不忍通り沿いにある、ちょっと上等な果物を取り扱っている小さな果物屋に立ち寄って和歌山県産みかんを買い、「やなか珈琲」で豆を買って引き返す。原稿チェックをお願いしていたお一方からはすぐに返事があり、「誤りや勘違いが多いので、ワードで送ってほしい」と言われ、そんなに勘違いしていた箇所があっただろうかと落ち込んでいたのだけれども、赤字が入った原稿がすぐに届き、修正を確認するといいまわしが変わっているだけだったので、ほっとする。

 今日の夜は知人が不在なので、19時を過ぎても作業を続ける。テレビではチョコレートプラネットがMCに近い立ち位置で『ニッポン超緊急事態シミュレーション もしも怪獣が襲ってきたら』という番組が放送されていて、こんな怪獣が出現した場合には、自衛隊がこういう兵器で対応できる、と明るく放送している。いやな感じがする。夕食は昨日と同じものを平らげて、デザートのはっさくは知人が帰ってきてからと思っていたのに、日付が変わっても帰ってくる気配はなく、布団を敷いて眠りにつく。