3月8日

 7時過ぎに目を覚ます。コーヒーを淹れ、朝食の支度をする。納豆ごはん、インスタント味噌汁、ひじきの煮物、ししゃも3匹。今回は「減塩」と書かれたインスタント味噌汁を選んでみたけど、そんなに薄味とも感じなかった。新刊のポスターをデザイナーのTさんに作ってもらうお願いをしてあるので、入れてもらう文言の案を作り、編集のMさんに送っておく。シャワーを浴びて、秋葉原に行き、PCR検査を受ける。海外からの旅行客だろうか、あるいは日本に暮らしているのだろうか、中国の方が検査を受けにきていて、「このお名前は印字できないんです」と説明されていた。

 上野駅で乗り換えて、三河島に出る。改札を出たところの道路がゆるやかにカーブしていて、ちょっと珍しいなと感じる。駅前にはキムチ屋さんがあり、インド料理店があり、路地に入ると八百屋とスナックがあった。ほとんど来たことがなかったけど、気になる町だ。数分歩いて、いつもの病院へ。どういうわけか今日は過去最高の混みっぷりだ。こんな日に限ってパソコンを持ってきていなかったので、持参した文庫本を読んでしまうと暇になる。70分ほど待って、ようやく診察を受ける。術後3週間が経過し、今日は中の状態も確認される。今日はいつもと違って女性の医師で、順調ですね、と言われる。明日から飛行機で出張なんですけど、気をつけたほうがいいことはありますかと尋ねると、しばらく考えて「ないです」と医師が言う。便通だけ気をつけてもらえたら、とのことだった。

 帰り道は西日暮里で電車を降りて、よみせ通りの西のはじっこあたりにある花屋に立ち寄り、ミモザを買う。これまで何度か花を買ったことがあるけれど、今日という日にミモザを選んだせいか、プレゼント用という前提で話が進みかけたので、「すみません、自宅用です」と伝えて、簡単な包装にしてもらう。今日は国際女性デーだ。それを知ったのは数年前、この季節にイタリアを訪れたときのことだった。その日僕はフィレンツェにいて、そこかしこでミモザを売っているのを見かけ、ミモザの束を買って女子楽屋にプレゼントした。その翌年は神戸にいて、ミモザを売っているお店を探して歩き、Hさんに「もしよかったら、お子さんに」と花束を渡したことを思い返す。

 そこからずんずん歩いて、「往来堂書店」へ。『文學界』と『新潮』、『dancyu』に『あまから手帖』などを買う。レジでO店長に「新刊、今日入荷しましたよ」と声をかけてもらったので、「並べてもらっているところを写真に撮らせてもらおうかなと思っていたんですけど、ちょっとくるのが早かったですね」と伝えると、まだ店頭に並んでいなかった新刊を並べてくださる(「並べてくださる」も何も、著者がそんなふうに言ってきたら並べざるを得ないので、「暴力的」な物言いだったのは自覚しているけれど)。お礼を言って、写真を撮らせてもらって、ツイッターに写真を投稿する。

 帰宅後に適当に昼食を済ませて、夕方までは仕事を進めたあと、夜は知人と晩酌をする。酒を飲みながら、国会図書館で複写してきたデータを、ひたすらスキャンしておく。旅先にまで紙の束を持っていかなくても、iPadで確認できるようにしておくのは、最近は生命線になりつつある。