4月3日

 14時半に家を出て、まずは新宿へ。西武新宿駅の向かいあたりにある木下グループPCR検査センターでPCR検査。場所柄なのか、軒先に外国語で書かれた注意書きとQRコードが張り出されていて、ひとだかりができている。秋葉原でも稀に海外の方を見かけるが、ここではその比率が圧倒的に多い。ここでPCR検査を申し込むと、Googleフォームが送られてきて、事前にそのフォームに回答を入力する必要がある。ただ、そのルールの適用具合はセンターごとに(あるいは時期によっても)違っていて、秋葉原でも昔は「フォームに回答いただけないと受けられません」という感じだったのが、今だと「唾液の採取が終わったあとでもいいので、登録しといてください」くらいのゆるい運用になっている。ただ、海外の方が多いからなのかなんなのか、新宿店ではルールが厳格で、「先にフォームに回答していただかないと、検査は受けられません」と、海外の方達が説明を受けていて、その行列ができている。あるいは、予約していなかったけどどうしてもすぐに受けたくてやってきたのか、店員にスマートフォンで翻訳されたテキストを見せながら何かを懇願している人もいるが、「すみません、ここでは対応できません」と、首を振りながら日本語で説明している。

 ぴやっとPCR検査を受け、山手線で高田馬場に出る。こないだ来た時にも同じことを感じたが、駅前のビル(一階がパチンコ屋、2階がマクドナルドのビル)、外観がかなり変わっていて、ああ、もう自分はこの街に住んでいないのだなと感じる。那覇のことを考える。僕は自分がかつて住んでいた高田馬場にはもうほとんど足を運んでいなくて、街のうつりかわりに普段は関心を向けず、こうしてたまに訪れては「変わったなあ」なんて考える。それなのに、住んでもいない那覇の市場界隈には毎月足を運んで、その変化を眺めて取材して、市場の一時閉場やリニューアルオープンのときにワット人が集まっている様子を目の当たりにして、「普段から足を運べばいいのに」なんて考えている。シェアサイクルのポートがないかとアプリを開いてみると、さかえ通りにあるようだった。栄通りもすっかり変わっている。八百屋さんは、昔いた店主ではなく、そのひとつ下の世代の店員さんが切り盛りしている。

 自転車を借りて、前住んでいたマンションを眺めたのちに明治通りに出る。明治通りも工事中だ。まずは往来座に行ってみると、今日は月曜日で、カレンダー通り店は閉まっていた。そうか月曜日か。買取をお願いしようと段ボールに本を詰めたところ、トートバッグに入るぐらいの数だけ入りきらず、これは直接届けに行こうかと持ってきたのだ。このあとセトさんと合流する予定ではあるけれど、そこで渡すと荷物になるかなと思い、駐輪されていた自転車のかごに預けておく。

 急な坂をくだり、ザキ先輩の新居へ。今日は昼過ぎから先輩の引っ越しがおこなわれていて、新居にはエレベーターがないので、荷物を運び上げる作業だけでも手伝おうとやってきたのだ。部屋に着いてみると、Kさんが留守番をしていた。学生の頃にきたことはあるけど、それだってもう随分昔だから、全然変わっていて浦島太郎みたいとKさんが言う。僕が坪内さんの授業を受けていたのも2005年のことだから、それだってもうすぐ20年前になる。いつのまに時間が流れているのだろう。今からそれと同じだけ時間が流れるころには、もう還暦も目の前だ。たったそれだけの時間しかないのか――と、これは日記を書いた今考えたこと。

 ほどなくしてムトーさんが歩いてやってきて、それと同じタイミングで荷物を積んだ車が到着する。あまりにもタイミングよく皆が集まったので、「さすがボエーズ」とKさんが感心しているのがおかしかった。皆でリレー方式で荷物を運ぶと、あっという間に作業は終わった。先輩が買ってきてくれた黒ラベルと、イオンで(まだ17時前だというのに)割引になっていたサンドイッチを広げ、乾杯。部屋に西日が射し込んでいる。あとは冷蔵庫の到着を待つばかりなのだが、その配送業者はまったく問い合わせができないタイプの業者で、朝9時から「配送中」と表示されているのに一向に届かないらしかった。缶ビールをちびちび飲んでいるうちに日が暮れる。

 冷蔵庫が届く気配はなかった。目の前の道路は一方通行で、車もあまり行きかわない閑静なエリアだから、車がとまる音がするたび外に出て下を覗き込んでみるが、それは別の配送業者だ。そんなことが何度か続いたところで、「張り紙しといて、飲みに行くっていうのはどうですか?」とFさんが言う。「到着したら連絡してください」と張り紙をしておいて、すぐに引き返してこれる近所の店で飲んでいるのはどうですか、と。じゃあ、張り紙になんて書こうかと話していたところに、皆の缶が空になったことに気を回してそっと買い物に出掛けていたセトさんが、アサヒスーパードライのロング缶6本パックを持って戻ってくる。

 張り紙作戦はやめにして、じゃあ、冷蔵庫が何時になるか予想しようと、皆でそれぞれ予想を立てる。おそらく配達時刻は20時までだろうと、先輩は20時を予想していた。一番遅い時間を予想したのはムトーさんで、20時46分だ。予想時刻を紙に書き込んだあたりで、18時36分、先輩のケータイが鳴る。電話の相手は配送業者で、今から10分か15分後ぐらいに配達に伺いますとの連絡だった。こういうとき、「まだまだ時間がかかるだろう」って話をすることで、早く届くようになるのだと、先輩が話していた。人手はたくさんあるので、「手伝いましょうか」と声をかけたものの、やってきた配送業者はひとりで冷蔵庫を担ぎ、3階まで運び上げた。その人がバンドマンだったか、誰かに似ていると、Fさんが画像を検索し、皆に見せている。新居に鍵をかけ、早稲田から都電に乗って東池袋に出て、「サン浜名」で先輩の引っ越しを祝って乾杯する。