4月6日

 9時、スカイレンタカー那覇店でレンタカーを借り、西原インターから沖縄自動車道に入り、本部へ。10時45分に本部町営市場に到着。まだ「自家焙煎珈琲みちくさ」はオープン前なので、しばらくあたりをぶらつき、11時に市場に引き返す。マンデリンのホット。本部町には書店がないこともあり、『水納島再訪』を委託販売してもらっているお店ということもあり、新刊を献本し、一緒にポスターも渡す。店主がアルバイトの若者に「おーい、これ貼っといてー」と冗談めかして言ったものの、若者にはその言葉がピンときていない様子で、「そうか、『笑っていいとも!』って知らないか」と愕然としている。僕も一緒になって愕然とする。新刊には「本部に生まれ育ち、中学卒業を待たずに那覇で働き始めた」という人も登場するから、本部の人たちにも読んでもらいたい。

 美味しいコーヒーをいただいて、気分をしゃきっとさせて、書店巡りに。名護から順に、書店をまわってゆく。まずは郷土書の棚を眺めて、自分の新刊の取り扱いがあるかどうかを確認して、お店の方が忙しくなさそうなタイミングを見計らってご挨拶する。取り扱いがなければ、A4サイズのポスターを渡し、つい先日リニューアルオープンした牧志公設市場の建て替え工事中の4年間を追った本であること、琉球新報で連載していたこと、那覇の話ではあるけれど沖縄各地のご出身の方が登場すること、明日のお昼のNHKで本の紹介をすること、お店の方に伝える。レンタカーの返却時刻/お店の閉店時刻は19時なので、そのギリギリまでまわり、15軒に足を運んだ。まわりたいお店はもう5軒くらいあったのだが、時間切れとなった。名護から本部は往復1時間かかるので、本部まで足を伸ばさなければもう3軒ぐらいまわれたかもしれないけれど、あそこでコーヒーをいただいたからフレッシュな気持ちでまわれた手応えがあったし(実際、お店でコーヒーをいただいているときも、「自分の本の取り扱いがなかったとしても、心が挫けないように、まずはコーヒーを飲みに来たんです」と店主の方と話していた)、本部町にも本を届けに行きたかったので、これでよかった。まわった15軒のうち、現時点で取り扱いがあるのは3店舗だけだったけれど、取り扱いのないお店の方も興味深そうに話を聞いてくださって、とてもほっとしている。なにより「NHKのお昼の番組に出演する予定で、もしかしたらお客様からお問合せがあるかもしれないなと思って、事前にご案内できればと思った次第です」という一言が、なんというか、心強かった。出演依頼をいただけてありがたい限り。

 19時ちょうどにレンタカーを返却したのち、せっかくだからもう1軒だけ、とゆいレール小禄に出て、「くまざわ書店」(那覇店)にご挨拶。那覇のお店とあって、ここにはもう2面展開で平積みしてくださっていたので、お礼を言ってA3のポスターをお渡しする。宿に荷物をおいたのち、「パーラー小やじ」でビールを飲んだ。何杯か飲んで、さあ次はどこに流れようかと路地を歩いていると、ジュンクのMさんとばったり出くわす。これから飲みにいくところなんです、と誘ってもらって、一緒に飲みにいくことになる。県外から営業にこられた版元の方や、地元の書店・取次関係者の方の飲み会だったので、混ぜてもらっていいのかなと恐縮しながらもついていく。たどり着いたのは浮島通り沿いにあるバーで、そのあたりは夜に歩かないから、そんなお店があることも知らなかった。見落としているものは山のようにある。Mさんが僕のことをバーのマスターに紹介してくださって、「このあたりのことを取材されてて、ほら、煙草屋の翁長さんまで取材されてるんですよ」と本を取り出し、マスターに見せると、こういうお店までしっかり取材しているなんて、とマスターにハグされる。ここのバーのことは存在も知らずにいただけに、申し訳ないような気持ちになりつつも、何度か握手を交わした。

 マスターが最初に出してくれたのはハイボールだった。それを皆で飲んでいたところで、ある版元の方が、「このお店で一番おいしいお酒ください」と切り出す。やっぱり、うちはウィスキーだね、とマスターが答えると、「じゃあ、おすすめのウィスキーをストレートでください。こないだ、『一番おいしいウィスキーの飲み方はストレートだ』って教わったので」と注文していたのだが、その人はあまり強いお酒は得意ではないらしく、あまり口をつけていなかった。こういうところで、僕は人を判断してしまう。その版元に対する印象も、そこで決まってしまう。自分のふるまいも、ふとした瞬間に判断されてしまうのだと考えると、そわそわしてくる。途中で『そして市場は続く』を知っているお客さんがたまたまやってきて、話が盛り上がったこともあり、Mさんを含めて僕以外の皆が帰ったあと、ひとりバーに残り、ビールを1杯だけ飲んだ。