3日前の長野の夜を、まだ思い返しています。打ち上げの席で、ぼくはテーブルを少し移動して、色んな人と話していました。あるタイミングで、隣に、同じく東京からやってきたライターのKさんが座りました。そのとき、「おふたりはライターさんなんですか?」と訊ねられて、「いえいえ、ぼくはライターと名乗っていいのかどうかわかんないです」と答えました。

 Kさんは、自分がやりたい企画や書きたい原稿を載せてもらうために、いろんな編集部に売り込みをしています。その甲斐があって、いろんな雑誌で仕事をしています。それに比べて、ぼくはいちども売り込みをしたことがないのです。

 売り込みをしたことがなくても、ときどき仕事をもらうことはあります。インタビューだったり、対談の構成だったり、ルポルタージュだったりと様々ですが、どれも編集部の方が企画された仕事です。そういう仕事がつまらないというわけではなくて、面白い現場に行けたり、貴重な話を聴けたりはするのですが、企画から携わるということはほとんどありませんでした。

 普通、ライターを名乗る人であれば、書きたい何かが、実現したい企画があるはずです。でも、ぼくはなんとなく仕事をもらうようになってはいたものの、投げられた球を打ち返すばかりで(打てていたかどうかはわかりませんが)、自分でボールを投げることはありませんでした。そんなぼくだからこそ、いつも「ライターと名乗っていいんだろうか?」と疑問に思っていたのです。

 そんなぼくが、初めて「これを取材したい!」と思ったテーマがドライブインでした。だから、今回の『TV Bros.』――「ドライブインに魅せられて...」という特集を組んでもらった『TV Bros.」には、特別の思い入れがあります。自分が初めて「書きたい!」と思ったテーマに、どこでどう知ってくださったのか、面識のなかった編集者の方たちが反応してくれて、特集として世に出すことができたのですから。ぼくのことに興味は持ってくれなくていいので、ぜひ今回の特集は読んでみてください。あそこには入りきらない話や思いはたっくさんありますが、3ページの範囲にはできる限り詰め込んだつもりです。

 発売中のテレビブロス。95ページから3ページに渡って掲載してもらっている特集「ドライブインに魅せられて...」(タイトルは編集の方が付けてくれました)、ひとりでも多くの人に読んでもらえれば嬉しいです。ドライブインについては、あそこに収まりきらない話が山ほどあるのです。