4月19日

 6時に目を覚まし、テープ起こしに取りかかる。7時、近所のローソンでサンドウィッチと冷やし中華、それにホットコーヒーを買う。宿に引き返し、サンドウィッチを頬張りつつ、テープ起こしを続ける。8時10分にホテルを出て、たぶんこっちなはずとクルマを走らせ、8時15分に渡久地港にたどり着く。いそいそと乗船券を買い、荷物を運び出してフェリーに向かうと、宿のYさんの姿がある。今日はかりゆしウェアだ。今日のお昼は用事があって島にいないと聞いていたけれども、もうこちらに渡っていたのか。船に乗り込んでみると、マリンスポーツの会社が臨時休業に入った影響で、半月前に比べると観光客はめっきり少なくなっている。船のデッキで海を眺めている人は誰もおらず、みんな屋内の席に座っている。ぼくはデッキに立ち、昨日出かけた瀬底島をまじまじと眺めたり、写真を撮ったり。今日も8メートル近い風が吹いており、それなりに船は揺れた。

 8時45分に島に到着。乗船していた観光客は、ぼく以外に4組いて、全員二人組。ひと組だけ壮年の二人組もいる。ヤバい、めちゃくちゃ綺麗じゃんと早速海を写真に収めている。スーツケースを引き、宿に「チェックイン」(ぼくが宿泊する部屋の鍵は開けておいてもらっていたので、そこに転がり込む)。しばらく仕事をして、正午近くに桟橋まで散歩に出る。同じ便でやってきた人たちは、浜辺にちょこんと座って過ごしている(臨時休業の影響でビーチパラソルの貸し出しも中止されている)。桟橋のあたりで、Tさんが竿を投げている。近くに立って海を眺めると黒い塊があちこちに見える。そこにTさんはルアーを投げ入れるが、今日は一向に食いつきがなく、「完全にバカにされてる」と竿を起き、車で休んでいる。宿に引き返し、買っておいた冷やし中華を平らげる。

 15時10分、再び桟橋へ。向こうからフェリーが近づいてくるのを眺める。15時15分にフェリーは接岸し、乗客が降りてくる。宿のYさんの姿もある。荷物がたくさん積まれていて、島の人たちと海運会社の人たちで、せっせと運び出す。その中に、ぼくが近所の酒屋「伊勢五本店」から発送したクール宅急便もあり、受け取る。前回の滞在時、フェリーが欠航になったものの、ちょうど本島に渡る用事があり船を出すUさんに同乗させてもらったお礼にと、Uさんのお宅まで日本酒を届けにいく。玄関の前でカメが草を食んでいた。宿に戻ると、Yさんが島外から持ち帰ってきてくれたいくつかの資料を見せてくれる。それをじっくり拝見しているうちに、日が傾いてくる。

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4月18日

 4時半に目を覚ます。5時に鳴ったアラームを止めて、何度かスヌーズが繰り返されたあとで布団から這い出す。シャワーを浴びて、知人に「行ってくるで」と声をかけ、6時5分にアパートを出る。かき氷屋さんの前には、もう並んでいる人の姿がある。そういえば3月下旬にも、この時間から並んでいる人を見かけたような気がする(そして、同じ人だったような気もする)。スカイライナーに乗り、空港第2ビル駅へ。成田空港第3ターミナルは、3月下旬に比べると閑散としている。ぼくは普段マクロな視点で物事を考えることはないけれど、人は社会に影響されて行動しているのだなと感じる。スーツケースを広げ、「飛行機の中は寒いかしら」と荷物を整理している人を見かける。飛行機に乗ったことがほとんどないのだろうか。今この時期に移動している人たちは、一体どんな理由で移動しようとしているのだろう(もちろん、ぼくも移動しているひとりだけれども)。

 ジェットスター303便はほぼ定刻通りに離陸した。ベルト着用サインが消えたところで、荷物を出そうと立ち上がると、真後ろの席の乗客がマスクをずらして過ごしている。ぼくの席は3Cで、一つ前の2のAからCは誰も座っていなかったので、キャビンアテンダントに確認をとった上で2Bに移動する。WEB「H」の原稿を完成させ、福島で携わっている企画のドキュメントに向けたテキストを練る。15分遅れで飛行機は那覇空港に着陸する。荷物をピックアップして、スカイレンタカーの送迎バスに乗り込んだ。窓を開けてあるとはいえ、ぎゅうぎゅうに乗せられて不安になる。後列に家族連れが座っている。「思ったより寒いから、水族館に行ったあとは泳ぐんじゃなくて砂遊びだね」と、若い父親がこどもに言って聞かせている。「このまま糸満に行くのかな?」と思い始めたところで、バスはようやくレンタカーショップに到着する。ここでも10分ほど待って、ようやく借り受ける。

 まずは浮島通りの駐車場にクルマを止めて、「赤とんぼ」へ。タコライス(中)を買って、その場で食べながら、お店のお母さんと相談事。市場界隈を歩いたのち、再びクルマに乗り込んで浦添の「小雨堂」という古本屋を目指す。「日本の古本屋」で検索した気になる資料が在庫ありになっていたのだが、今日は営業していなかった。方向転換をして、「BOOKSじのん」で9000円ほど資料を買って、沖縄自動車道に入り、北上する。15時45分に本部町立博物館にたどり着く。展示を見学したのち、すぐ隣にある図書館に移動し、資料を探す。複写は司書の方に依頼する方式だが、閉館まで30分を切っているので、差し当たって必要な15枚だけ複写してもらって、残りは後日受け取りにきますとお願いする。 図書館の壁に、本部町の戦跡が貼り出してある。戦争中に多くの人が逃げ込んだ八重岳に登ってみようと、クルマを走らせる。想像以上の急坂を上がり、展望台からあたりを見渡す。伊江島の城山が正面に見えるが、水納島は見えなかった。

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 山の中は鬱蒼としていて、道によっては落ち葉や小枝が散らばっていて、なんだかそわそわするので戦跡を見てまわるのはやめにして、案内表示に頭を下げながら山を降りる。そのまま瀬底大橋を渡る。何度も近くを行き来してきたけれど、瀬底島に渡るのは初めてだ。瀬底ビーチを目指して進んでいくと、建設中のヒルトンホテルが海辺に佇んでいた。ビーチはまだ遊泳禁止だが、駐車場(1日500円とだけ料金が表示されている)にクルマを止めて、ビーチまで歩く。ビーチの近くに路駐しているレンタカーを何台か見かけた。ちょうど日が傾きかけていて、夕日が水納島のほうに沈んでいく。この瀬底ビーチの近くに、拝所がある。水納島は聖域とされてきたそうだが、こうして太陽が沈んでいく方角にあるということも関係しているのだろうか。「MR.KINJO in MOTOBU OCEAN TERRACE」にチェックインして、「大鷲寿し」を目指す。ネットの情報だと、テイクアウトにも対応しているようだ。昨日の検査は陰性だったとはいえ、「東京からきました」と訪問するのは迷惑に思われるかもしれず、扉を開けたときの雰囲気でイートインかテイクアウトか決めよう――そう思って歩いていくと、お店には暖簾がかかっていなかった。やっぱりリスクを増やすのはやめておこうと、スーパーの「かねひで」に向かい、海鮮丼とお酒を買ってホテルに引き返す。

4月17日

 7時過ぎに目を覚ます。体温を測ると36.8℃でホッとする。昨日の鍋の残りと、冷凍ごはんを解凍し、朝ごはん。珍しく眠気が強く、9時頃まで横になっていた。10時半にアパートを出る。西日暮里駅で地下鉄からJRに乗り換えようとすると、エスカレーターがひどく混雑しているので階段で上がる。昨日の夜、19時ごろでも地下鉄が空いていたので、都知事の会見の効果が出ているのかと思っていたけれど、そういうわけではなさそうだ。秋葉原駅を出ると、改札のあたりや駅周辺で待ち合わせをしている人が多く、避けながらうねうね歩く。地図だとこのあたりのはずなんだけどと歩いていると、壁も扉もないところにPCR検査センターがあった。予約メールを見せて、電子マネーで支払いを済ませ、検査キットと同意書を受け取る。仕切りのあるブースに行くと、テーブルには「汚れたときはお知らせください」と書かれていて、誰かがブースを使うたびに消毒しているわけでもなさそうなので少し不安になり、テーブルには触れないように同意書に記入し、唾液を採取する。

 11時40分にはアパートに戻り、鯖缶とトマト缶のパスタでお昼ごはん。いつもビールと一緒に食べているので、食べるとお酒が飲みたくなるけれど、仕事が詰まっているので我慢する。午後、荷造りをしながら、WEB「H」の原稿を書く。日が暮れたあとはビールを飲みながらも、19時まで原稿を書き、ホッケを焼いて晩酌にする。知人のリクエストで始まったばかりのドラマ『リコカツ』観る。Twitterで『愛の不時着』との相似を指摘する声を見かけたけれど、『愛の不時着』はおそらく運命を信じ込んで邁進するドラマだとすれば、『リコカツ』は運命だと思い込んだことのメッキが早々に剥がれたところからドラマが始まる(ぼくは『愛の不時着』を観ていないけれど、知人に確認したら大体当たっていた)。演出は古いけれど(自衛隊員とファッション誌編集者のキャラクターがあまりにもプロトタイプ過ぎるから、自衛隊員とファッション誌編集者は怒るべきだと思う)、価値観のまったく異なる人同士がどうやって一緒に生きていくのかを描こうとするドラマだと感じる。瑛太演じるキャラクターの価値観はあまりにも時代遅れではあるけれど、こういう価値観で生きている人は今も確実にいる。その価値観を肯定するドラマではないだろうし、これからどんな展開になるのか楽しみだ。今季もドラマを山ほど録画しているけれど、大半のドラマは途中で耐えきれなくて再生を止めてしまう。ただ、松たか子主演のドラマと、この『リコカツ』は最後まで観ると思う。

4月16日

 7時過ぎに目を覚ます。知人は頭が痛いと体温を測っている。渡航が近づいているのでぼくも測ってみると37.1℃。この体温計だと平熱が36.8℃くらいではあるけれど、やや高めだ。昨日の夕方買い物に出たとき、漁サンで出かけてしまって、刺身を作ってもらうあいだ外で待つことになり、思いのほか寒い中佇んでいたせいだろう。念のためにと薬を飲んで、今日の予定を立て、ネットで注文できそうな資料を探す。日曜から遠出するのに、今日食材を買っても余らせてしまうからと、セブンイレブンでちゃんぽんを買ってきて平らげる。午後から五反田の古書会館や渋谷のタワレコに行くつもりでいたけれど、このまま体調が下向いてしまうと検温で引っかかってややこしいことになりかねないからと、ポカリを飲んで横になり、原稿を練って過ごす。

 それでも15時半にはアパートを出て、国会議事堂前駅へ。官邸前と議員会館前でそれぞれデモ(?)が開催されていたけれど、メッセージを聞き取ることはできなかった。国会図書館に入り、資料を検索する。「海洋博」で検索すると膨大に出てくるので、そのすべてをチェックできそうにもなく、気になる記事をオンラインで閲覧し、複写申請。紙の本からの複写は「ただいま50分ほどお時間いただいております」とアナウンスしていたけれど、インターネットからの複写は5分ほどで出てくる。

 半蔵門線と都営新宿線を乗り継ぎ岩本町駅に出て、古本屋さんへ。ネットで検索すると気になる資料があり、来店は予約者のみとあったので電話をかけてみたところ、今日の夕方ならと返事をいただいてやってきた。海洋博関係の資料、ちょっと手が出せない行政的な資料や、会場でスタンプを集めたものまで、あれこれ見せていただく。どうして海洋博に関心をと尋ねられ、素直に答える。このお店はオリンピックや博覧会の資料を専門に扱っているのだという。「夕方以降なら」というのも、市場に行くからというのが理由だったとのこと。今日は金曜日だから、前に取材させてもらった会の日だ。ということは、僕が取材した日にも、この店主の方もきっといらしたのだろう。

 2冊だけ(それでも6600円)購入し、白菜とコーヒー豆を買って団子坂を上がる。今日は冬のコートを羽織って出かけていたので、身体が暖まったのか、アパートを出たときより元気になった気がする。念には念をと、夜はとり野菜みそ鍋で暖まりつつ、晩酌。酒を飲みたいと思えるくらいだから、きっともう大丈夫だろう。鍋を平らげたあと、こんなことでもないと滅多に買わないフルーツ(オレンジ)を切り、知人と分ける。普段の生活で「フルーツが食べたい!」と感じる瞬間はゼロに近い。皆、「食べたい!」と欲する瞬間があるのだろうか。それとも、健康のことを考えて、食べるようにしているのだろうか。あるいは、季節のものとして楽しんでいるのだろうか。

4月15日

 6時過ぎに目を覚ます。コーヒーを淹れて、茹で玉子を作る。午前中は打ち合わせに向けて、メモを書き出す。13時、サッポロ一番塩らーめんに豚こま、もやし、ニラ炒めをのっけたやつを2人前作り、知人と平らげる。13時半にアパートを出て、バスで音羽二丁目へ。大きい部屋しか空いていなくて、仰々しくてすみませんと言われながら会議室に案内していただく。窓の外には、よく歩いたことのある風景が俯瞰できる。14時過ぎから打ち合わせ。小一時間で終わり、部署の方達とも名刺交換。和やかに談笑しながら、これは誰の視点の世界を見ているんだろうかと不思議な感じがする。これは自分以外の誰かの視点だとしか感じられない。

 そのまま帰るにはふわふわした感じがするので、有楽町線東池袋に出て、缶ビールを飲みながら都電沿いを南下する。「古書往来座」を訪ねると、セトさんとのむみちさんがWEB「本の雑誌」の北澤さんの回の感想を伝えてくれる。あの野球選手の話のところがよかったとセトさん。最後に坪内さんが出てくるところも――坪内さんとは書いてないけど――あそこもよかったとのむみちさん。読んでもらえて嬉しい。何冊か本を買って、池袋駅に向かう。「三省堂書店」の書評コーナーを見ると、ぼくが書評した『弱い男』も並んでいる。その隣にあった田中小実昌の文庫を買って、無印良品洗顔用の泡立てネットを買い、千駄木まで引き返す。

 知人とは「伊勢五本店」という酒屋で待ち合わせをしていた。駅を出て路地に入り、坂の上を見上げると知人が待っていたので、坂を駆け上がる。酒屋に入り、手土産にする酒と、自分で飲む酒を選ぶ。奥能登の白菊という酒の瓶が目に留まる。白い菊があしらわれたシブめのラベルで、昔ながらのデザインのようではあるのだけれど、どこか今の感覚も反映されているように見える。隣にはもっとバリっとしたデザインの酒瓶があり、よく見るとそれも同じ酒蔵のものだったので「やはり」と思い、バリっとしたデザインのほうを手土産に、やや古風なほうを自宅用に買って帰る。

 18時過ぎ、近所の肉屋で惣菜(煮込み)とピクルスを買って、一度部屋に戻り、皿を持って再び出かける。「たこ忠」で一杯やりながらテイクアウト用の刺身を作ってもらうつもりでいたけれど、カウンターは満席だ(そうでなくとも、賑やかに飲み会を開催している人たちがいたから、敬遠していた気もするけれど)。ひらめと初がつおの刺し盛りと、かたくりのおひたしを注文し、外で待つ。知人のオンラインミーティングが終わるのを待って、ささやかに祝杯。奥能登の白菊、飲んだ瞬間は「あ、これ、甘ったるいやつかな」と感じるほど、良い香りが広がるのだけれども、甘ったるさが残ることなく消えていく。これはうまいなと漏らすと、「旨みがありながらすっきりした味わい」と、知人はラベルの言葉を読み上げる。なるほどその通りの味だ。テレビを観ながら酒をたらふく飲んだあと、ふとTwitterに目をやると、平民金子さんがYouTubeのURLだけ投稿している。開くと寿司が映し出される。「何がいちばんおいしいか、わかる?」の声に、「エビやろ」とぼくが言うと、隣で知人が「いや、アジやろ」と言う。

4月14日

 6時過ぎに目を覚ます。コーヒーを淹れて、冷凍ごはんをチンして、たまごかけごはんを平らげる。午前中はWEB「H」の原稿を書き進める。今日は雨だが、洗濯物が溜まっているので、洗濯機をまわしてコインランドリーへ。12時過ぎだが、もう小学生たちが下校している。あるひとりの男の子に、教員らしき大人が寄り添って歩いている。一年生だろうか。横断歩道を渡るところまで同行して、きちんと手を挙げて渡るところを見届けて、教員らしき人は学校に引き返していく。乾燥機にかけているあいだ、ノートパソコンを広げて仕事をする。厚手の衣類はまだ乾いていないけれど、パンツなど薄手のものはもう乾いているので、先に取り出しておく。知人の下着も入っているので、泥棒だと勘違いされないかと、いつもそわそわする。

 乾燥を終えてアパートに戻り、14時過ぎ、お昼。サッポロ一番塩らーめんに、豚こまともやしとニラ炒めをのっける。15時半にアパートを出て、国会議事堂前。国会図書館、今は事前申し込みで抽選に当たらないと入館できないけれど、16時以降は予約なしでも入れるというので、その時間めがけて向かうと、行列ができていた。ただし消毒・検温で時間がかかっているだけで、すんなり入館できた。島に関する資料、見つけられるものはすべてさらっておく。あっという間に当日複写の締め切り時刻になり、すべりこみでもろもろ複写する。ドライブインのことを調べているときにもずいぶん資料を探したけれど、自宅にもっとスペースがあれば、『旅』のバックナンバーはすべて揃えておきたいところ。読み返すたびに(つまり自分の関心が少し移ろうたびに)あらたな発見がある。

4月13日

 5時過ぎ、怖い夢で目を覚ます。怖いといっていいのか、友人が創作に苦しんでいる、その気分に触れる夢だった。昨日のシマチョウの脂が胃に残っているのか、もたれた感じがする。換気扇をまわしっぱなしにしておいたキッチンには、まだ焼肉の匂いが残っている。

 まだ企画がどう進展するかはわからないけれど、出版に向けて企画を打診した以上は、あらためて島に行かなければという気持ちが高まる。もちろんぼくが「ルポライター」だということは島の皆さんに伝わっていて(ルポライターという肩書きを名乗ったわけではないけれど、前に滞在したときに『市場界隈』をお渡ししていたので、その肩書きで認識されていた)、この島のことを書きたいと思っている旨は伝えていたけれど、近いうちに書くつもりだということを伝えて、承諾をいただく必要がある。それに、いくつか聞きそびれたこともある。5月に入ってしまうと沖縄に出かける余裕がないかもしれないので、もう、思い切って――と、こないだ泊まった宿に電話をかけ、日曜と月曜にもう一度泊まりにいきたいこととを伝える。ちょうど誰も予約が入ってないし、またゆっくり話しましょうと言ってもらい、すぐに飛行機とレンタカーの手配をする。

 気づけば14時、急いで支度をして部屋を出る。まずは千代田線で綾瀬に向かい、取材したら面白いかもとぼんやり考えていたお店に立ち寄る。立地からしても、お店の感じからしても、これまでの取材とは趣きが異なるものにはなるだろう。でも、「趣き」を求めて取材するのはどうなんだろうと思い悩みながら買い物をして、店をあとにする。近くには公園があり、ポールに貼り紙が出ている。そこには「1年前を思い出そう。」とあり、イラスト屋のイラストが添えられている。「今、私たちができることは?」「トコトンやりきろう!/●外出自粛/●マスク・手洗い・消毒・換気/●三密回避/●テレワーク/●昼夜を問わず/マスク飲食 黙食 個食 静美食」と書かれている。埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県と張り紙の最後に書かれている。なんだかやりきれない気持ちになる。

 千代田線で新御茶ノ水に出て、古書会館で資料をもらったのち、「東京堂書店」と「三省堂書店」をのぞく。なにか書評によさそうな本はないかと探す。S.Kさんの本が新刊台にあり、ビニールで覆われていて立ち読みできないようになっている。タイトルを検索すると、やはり始まったばかりの展覧会と同じタイトルだ。図録だろうかと思いながら購入し、半蔵門線で大手町に出て、16時35分には会議室にたどり着く。本の山を眺めても、これは是が非でも自分が書評をという本は見当たらず、さきほど買った「図録」(正式には図録ではなく、展覧会にあわせて刊行された作品集)だけ回す。ビニールにくるまれていただけあって、繊細な本だから、少しどぎまぎしながら時折行方を追っていると、本の山を積み上げていた委員の方がそれを倒し、「図録」が床に投げ出されているのが視界に入り、思わず席を立ちそうになる。回覧を終えて戻ってきた本は、角が少しよれている。