朝7時に起きて、ジョギングに出る。昨日の日記に書き忘れていたが、ここ最近、どうも走れなくなっていた。走り始めて2ヶ月近く経つというのに、以前よりペースも落ちてしまって、距離も走れなくなっていた。頻繁に走り過ぎていて疲労が蓄積されてしまったのかと思って数日走らずにいたが、それでも改善されない。それで昨日は入念にストレッチをしてジョギングに出たのだが、あきらかに身体が軽く、最速記録をマークしてしまった。ストレッチをサボっていたのが原因だったようだ。今日も入念にストレッチをしてから走り、不忍池をぐるり。ネギを買い忘れていたので、豆腐だけのシンプルな味噌汁で朝食をとる。

 午前中はこまごました用事を片づけて、中華料理店「砺波」でお昼を食べようとアパートを出たのだが、今日は定休日だった。中華の口になっていたので、気になっていたけれど入ったことがなかった「毛家麺店」。毛沢東の顔が大きく描かれており、レトロな外観もあいまって、若者がやっているニューウェイブな店だと思い込んでいたが、中国人とおぼしきご夫婦が厨房に立っている。そしてレトロ風にあつらえた建物ではなく、本当に昔ながらの建物だ。生ビールと担々麺をいただく。クリーミーでうまい。食べながら『spectetaor』のつげ義春特集をパラパラ読んだ。

 17時、有楽町のビックカメラでA・Iさんと待ち合わせ。Aさんはギタレレを抱ていた。天気も良いことだからオープンエアーな席で飲みたいなと思い、とりあえずガード下の店に入る。そこからだと空が見えないことに、席についたあとで気づく。生ホッピーと白ワインで乾杯。店員さんの接客もずいぶん素っ気なく、最初に頼んだ料理を食べ終えたところで店を出ることにする。今日も公園で飲みたいと思っていたので、最初からそのつもりではあったのだが。

 コンビニで缶ビールと白ワインのボトルを買って、今日は日比谷公園ではなく皇居外苑を目指す。僕が東京で好きな風景の一つは日比谷の交差点から二重橋にかけての風景だ。今まではそんなことを考えても見なかったけれど、その風景を眺めながら飲むことはできないかと考えたのだ。お堀を眺めながら――という場所にはベンチがなかったけれど、松林の中にいくつもベンチが並んでいる。こんなに贅沢な空間なのにほとんど人がいなかった。適当な場所に腰掛け、改めて乾杯。

 Aさんはギタレレを取り出して、習ったばかりだというコードを弾いて練習している。「これは何の曲でしょう?」と言われ、少し考えて「天国」と答える。僕の耳が向井さんに傾いているだけかと思っていたが、正解だった。Aさんが向井さんの曲を弾きたいと思ったということに嬉しくなる。安室さんの「say the ward」も練習しているところだというので、やっぱり「don’t wanna cry」を演るべきじゃないかと再び主張する。前にもそれを伝えていたのだが、あの原曲をどうギタレレに落とし込めばいいかわからないと言うので、今の「say the ward」の弾き方のままやっても成立すると思いますよと歌ってもらうと、やはり良い。

 ほどなくして日が暮れた。松林の向こうに内堀通りがあり、ヘッドライトが音もなく流れてゆく。川こそないけれど、こうして何かが流れている風景を眺めながら飲むのは最高だ。トイレもわりと近くにあり、そこに向かうたびビル街も見える。こうした風景を贅沢だと感じるのは、向井秀徳の世界に浸りすぎているのかもしれないけれど、とにかく愉快な気持ちだ。ZAZEN BOYSの「東京節」が浮かんでくる。21時を過ぎると少し寒くなってきたので引き上げて、東京駅を通り過ぎて日本橋に出て、「お多幸」。今日はAさんを励まそうと思って、どこで飲むか昼過ぎから頭を悩ませていた。そこで思い浮かんだのがここだった。ここの「お多幸」はトマトのおでんがある。Aさんは以前トマトのおでんが好きだと言っていたことを思い出し、ここを選んだ。Aさんは自分がそんな話をしたことも忘れていたらしく、ごく普通にトマトのおでんを平らげる。