1月23日

 7時過ぎに起きる。ストレッチをして、8時過ぎにジョギングに出る。今日は晴れていて清々しい気持ち。1ヶ月前にジョギングを再開した頃は、1キロ走るのに7分半かかっていたけれど、5分半で走れるようになってきた。こうやって成果が目に見えて出ると楽しくなる。ファミリーマートで焼きそばパンを買って帰り、インスタントコーヒーを飲みながらリビングで食べる。ゲストハウスで僕が滞在している半個室、おじさんの臭いが漂い始めたので掃除をして、シーツなどを洗濯する。

 11時過ぎ、リビングで「市場界隈」の原稿を書き始める。昼、ファイリーマートでカップ焼きそばのUFO(大盛)と油味噌のおにぎりを買ってきてお昼ごはん。掃除をしていたゲストハウスの女性オーナーが「この匂いを嗅ぐと、焼きそば食べたくなるねえ」と笑う。これまで延長コードを床に貼り付けていたテープを剥がし、ケーブルプロテクターを取り付けている。ケーブルプロテクターなんて名前は知らなかったが、パッケージでその名を知る。

 13時、赤田呉服店の原稿を書き上げる。ファミリーマートでプリントアウトして、原稿を手渡す。市場界隈をぶらつき、他にどこを取材するか考える。気になっていたお店が二つ閉店し、一つは取材を断られてしまった。最初は「30軒取材しよう」と思って始めたけれど、このままだと27になってしまう。古くから営業している靴屋さん、カーテン専門店、帽子店、傘店……。昔の名残を残す専門店はいくつもある。でも、「カーテンだけを売っている!」ということで取材するというのは、ちょっと間違っている気がする。そうやって面白がるというのは、少なくとも僕の仕事ではないという気がする。

 どうしよう。あれこれ思い悩んでいるうちに、「よく考えたら、別に『30軒取材しろ』と言われたわけではなくて、自分が勝手に『30軒だと切りがいいかも』と思っただけだよな」と考え始める。そうやって考えると、まだ取材を確定できていないお店が3軒残っているけれど、それなら何とかなりそうだ。きになる人がいれば取材するにしても、数にとらわれるのはやめにしよう。そう考えただけで晴れやかな気持ちになり、ゲストハウスに戻る。リビングでぼんやりツイッターを眺めていると、思わず立ち上がってしまう。ZAZEN BOYSが「音源制作開始」とある。昨年12月5日に赤坂BLITZでライブを観た日、僕は日記(正確には日記ではないけれど)で「今のZAZEN BOYSがアルバムを作れば、これまでとはまったく異なるテイストになるのではないかと妄想し、勝手に期待を膨らませている」と書いた。もちろんいつかは新譜が聴けるはずと思っていたけれど、こんなに早くその日がくるとは。こんなに早くと言っても、前作から7年も経っているけれど。

 そわそわした気持ちのまま、取材依頼状を書く。15時、ゲストハウスの向かいにあるタオルのお店(依頼状は以前送っていて、面識もある)を覗き、取材できそうか様子を伺う。「ごめんね、ちょうど今配達に出ちゃって。2時間後くらいには戻ってくると思うから、また様子を覗いてみて。向かいだから、すぐだもんね」。お邪魔しました、またあとで伺いますと伝えて、ゲストハウスに引き返す。17時過ぎ、再びお店に足を運び、45分ほど話を聞かせていただく。ファミリーマートで缶ビールを2本買って、18時半、紙屋さんへ。この時間に話を聞かせてもらう約束をしていたのだが、お店のお父さんは通りに仁王立ちで待ってくれていた。パラソル広場に移動し、話を聞かせてもらう。最初に「これ、よかったら差し入れです」と缶ビールを手渡すと、ありがとう、もう始めてたんだよ、とお父さんは笑う。ビールが好きだと知っていたので、一緒に飲みながら話を伺うつもりだったけれど、渡し方が悪く、2本プレゼントした形になる。

 19時過ぎ、「足立屋」でせんべろセット。ビールと煮込み。隣の男性が乾杯を求めてくる。普段はお店で隣り合ったお客さんとコミュニケーションをほとんど取らないけれど、今日はそれが嫌だという感じがなく、乾杯して話をした。聞けば一歳違いで、お互い「倫」という文字が名前に入っているとわかった(だから嫌だという感じがしなかったということではなく)。近代文学が好きで、卒論は森鴎外だと言うので、鴎外記念館から徒歩1分の場所に住んでることを伝えると、「一度行ったことがあります」と言う。「市場界隈」のチラシを手渡したり、坪内さんが編集した『明治の文学』のことを教えたり。ビールを2杯、ホッピーを1セット飲んだところでお別れを言い、「足立屋」をあとにする。

 一度ゲストハウスに立ち寄ると、オーナーが帰るところだ。「橋本さん、23時くらいになったら、リモコンで電気を消灯してもらえますか」とオーナーが言う。前はタイマーで設定していたのだが、皆が勝手に設定を変えるから、タイマーはやめたのだという。20時45分にゲストハウスを出て、安里まで歩く。沖縄に到着して1週間が経つが、毎日こうして歩いている。「うりずん」の隣にある酒屋をのぞき、缶ビールを買うと、「このあたりに住んでるんですか」とお店のお母さんに尋ねられる。毎日ごんたを眺めているせいで覚えられていたようだ。21時に「東大」の前に並び始める。今日は晴れていて暖かかったせいか、すでに3組並んでいた。21時40分に入店し、ボトルを注文し、おでんをいただく。23時過ぎに店を出て、缶ビール片手に「消灯しなければ」と繰り返し思いながらゲストハウスにたどり着き、消灯。