4月23日

 6時過ぎに目を覚ます。コーヒーを淹れ、洗濯物を干す。シャワーを浴びて頭を3ミリに刈り、横手のテープ起こしを少しだけ進める。横手滞在中に、「ネット回線のギガを使い果たしたので、低速化します」とメッセージが届いていて(横手で宿泊したホテルは古い格安の宿だったので、Wi-Fiがなく、テザリングしていたせいで容量を使い果たしたのだろう)、これから旅先で過ごすとき、たとえばジョギング中に音声コンテンツを音声が途切れることなく聴けるようにと、あれこれダウンロードしておく。

 12時15分に家を出て、日暮里へ。スカイライナーは残り211席と表示されていた。僕が乗車した8号車には、僕以外は中国からやってきた団体客で埋まっていた。成田空港に到着すると、改札近くのファミリーマートで幕の内弁当を買った。チェックインして荷物を預け、保安検査場を通過し、弁当を平らげる。保安検査場を通過した先のエリアでコンビニ弁当を食べるのは初めてだ。今日は那覇行きではなく、石垣行きの便だからか(それも日曜の夕方に到着する便だからか)わりと空いている。最近のコンビニ弁当は量が少ないから、石垣空港に到着する前に腹が減り、最後の20分くらいはパソコンを閉じ、目も瞑って省エネモードで座席に座っていた。石垣空港にはフードコートと土産物店はあるもののコンビニがなく、おにぎり一個くらいでいいんだけど、と探し回るも適当な食べ物を見つけられなかった。かまぼこ(たらし揚げ)を買おうかとも思ったけど、650円ぐらいのパックしかなく、そんなにかまぼこを食べたら夕食にあれこれ食べられなくなってしまうので、我慢して路線バスに乗った。

 19時20分ごろにバスターミナルに到着し、ホテルにチェックイン。荷物を置いて、すぐに外に出る。石垣だと「やふぁやふぁ」というお店が好きなのだけど、日曜日は定休日だ(最近はいつも定休日の日にしか石垣に滞在できていない)。あれこれ迷って、「まる波」という店に入り、まぐろの刺身とぐるくん唐揚げと生ビール。テレビでは『千鳥のクセスゴ!』が放送されている。枠とタイトルが変わり、内容も少し変えることにしたのか、芸人たちが山梨県の航空学校にサプライズ訪問し、ネタを披露する、という企画を放送している。芸人が登場すると、学生たちは歓声を上げる。ただ、スタッフは「芸人だけだと盛り上がらなかった場合にそなえて、保険をかけていた」と、芸人に続いてJO1のメンバー3人が登場した。さっきとは比べ物にならない歓声があがる。そのVTRをスタジオで観ていたニューヨーク屋敷が、「JO1、全然本気出してないのに(芸人よりすごい歓声を浴びている)」「まだ8人残しとるのに」と、ぽんぽんコメントしている。「まだ8人」と、すぐに出てくるのがすごいなと感服する。登場した芸人の1組は怪奇!YesどんぐりRPGで、YouTubeを観ているから、まるで知り合いみたいな気持ちで応援してしまう。

 20時50分、「島そば一番地」へ。ここは3度目くらいか。昔ながらのそば屋という感じというか、(観光客で賑わっているものの)観光客相手という感じがなくて、落ち着く。まずはかまぼこ盛り合わせと八重泉(1合)を頼んだあと、最後に島そばを啜る。あっさりした味でおいしい。明日は泡盛の取材だから、島の泡盛を(限定醸造のような銘柄も含めて)扱っているお店がないかと探し歩いたのだが、見つけることはできなかった。繁華街を歩いて目につくのは、こう、リゾート感と開放感のある居酒屋と、民謡酒場みたいなところと、泡盛を置いてなさそうなバーと、爆音で音楽が響いている酒場だ。観光地とは土地の演技である、という危口さんの言葉をまたしても思い出す。

 結局どこにも入らず、コンビニで酒を買ってホテルに引き返す。コンビニの中も、繁華街も、酒場も、観光客とおぼしき人たちをたくさん見かけた。マスクをつけている人の割合は東京より格段に低く、というかマスクをつけている人なんてほとんど見かけなかった。「旅先だから」ということなのだろうか。旅先は、日常を離れて羽を伸ばせる、羽目を外せる場所としか認識されていないのだろうか。その土地にはその土地の歴史があり、生活があるということは、旅行客の目に映っているのだろうか。これは石垣を訪れるたびに感じていることだけれども、この島を訪れる観光客の大半は、ただ「リゾート」を非日常として楽しんでいるだけではないのかと考えてしまう。