2月3日

 自分にできる仕事は一体何だろうかと考え始めたせいか、昨晩は4時過ぎまで眠れなかった。7時50分に目を覚まして、知人が淹れたコーヒーを飲みつつ朝日新聞を読む。そうだ、昨日で加藤君の死刑が確定されたのだ。僕は彼と同い年だ。14歳のときにも、17歳のときにも、同世代が大きな事件を起こした。同世代が「透明な存在」だの「キレる17歳」だのと分析されながらも――いや、同世代が分析されているからこそ、その不安定な年代をやり過ごして、どうにか大人になったはずだった。だからこそ加藤君の事件には衝撃を受けたのだ。彼の事件は、当時、ワーキングプアの問題と関連づけて語られもした。しかし、僕が印象的だったのは、雇用形態がどうであれ、彼が暮らしていたのは派遣先の会社が借り上げていた築浅のマンションだったということだ。ワーキングプアの問題と関連づけられるような状況にありながらも、マンションに暮らしている。広々としたその部屋で、ただインターネットをして過ごす時間というものに、僕は何か同時代性のようなものを感じてしまった。学生時代に同世代が起こした事件を、どう眺めていたのか。その生活環境をどう感じていたのか――色々気になることはあるけれど、たしか死刑が確定されると接見のみならず手紙のやり取りも制限されるはずだから、今となっては後の祭りだ。

 10時半、眠気覚ましに湯につかることにする。風呂の中では、iPadで定期購読を始めた『ニューズウィーク』(日本語版)とを読んでいた。『NEWYORKER』も一緒に購読を始めたものの、当然ながら英語なのであまり読み進められない(しかし電子版なのでタップすれば辞書が引けるので便利だ)。風呂に入っているあいだにチャイムが鳴り、急いで服を着てドアを開けると、宅急便の配達員が立っている。昨日、コーヒーミルをアマゾンで注文していたのだ。ここ半月ほどで、急激にアマゾンを利用するようになってしまっている。12時、昼食。丸美屋の素(辛口)で麻婆豆腐丼を作って食す。久しぶりに自宅で米を炊いたせいで加減がわからず、つい食べ過ぎて眠くなるが、何とか気合いを入れて構成仕事に取りかかる。

 16時、気分転換がてら散歩に出た。ツタヤに入り、ビリー・ホリデイセロニアス・モンクを借りる。昨秋イタリアを訪れたとき、宿舎にビリー・ホリデイのCDが置かれていた。それを聴きながら大富豪をしたことをふと思い出し、借りることにしたのだ。セロニアス・モンクは、最近のインタビューでその名前が出たので、聴いてみることにする。帰りに甘いものでも買おうとファミリーマートに立ち寄ると、謎のスイーツばかり並んでいる。恵方巻きのようなロールケーキが4種類、スイーツコーナーを埋め尽くしている。“節分スイーツ”だそうだ。恵方巻きが席巻して何年も経つが、節分スイーツというのまで登場したのか。レジ横にある栗まんじゅうを購入して、アパートに戻ってコーヒーを淹れた。

 19時、ビールテイスト飲料を飲みつつ夕食の支度を始める。今日はキャベツとアンチョビのパスタにした。最近パスタをよく食べているのは、少し前に川上未映子さんがウェブで「スパゲティ再訪」というテキストを書いていた影響である(http://www.mieko.jp/blog/2014/12/22/716.html)。スパゲティを半分に折ると、茹でやすくなり、さらに食べやすくもなると書かれており、「そんなわけないだろう」と思いつつ試して以来、すっかりパスタを食べる頻度が増えている。食後はツタヤで借りてきた『仁義なき戦い』を観た。数年前はもっと素朴にシビれていた気がするが、今は「やれんのう」という気持ちが強く浮かぶ。少しイスラム国のことを考えた。23時頃に帰宅した知人に恵方巻きを食べさせる。知人が「食べたい」というので、コンビニで買っておいたのだ。知人は山口出身だが、地元にいるときは恵方巻きを食べる習慣は皆無だったという。僕は隣の広島の出身だが、小さい頃から恵方巻きを食べていた。ただ、我が家では「無言のまま一本食べる」という習慣は無視されていて、食べやすいサイズに切り分けて食べていた。つまりただの太巻きである。だから、今日もひと口くらい分けてもらうつもりでいたのに、知人は無言のまま完食した。