2月4日

 7時50分に起きる。知人も同じ時間に目を覚ましたのに、テレビをつけて二度寝してしまった。彼女が観たかったはずの「MOCO'Sキッチン」を一人で眺める。『スッキリ!!』(日テレ)を観ながら朝食。トーストにハムを二枚乗せて食べる。テレビではジョニー・デップが結婚すると報じている。ハバマ諸島で式を挙げるそうだ。そのニュースの中で「ハバマ諸島をよく知る人物」としてコメントしていたのが叶美香だった。何の冗談だろうと思って眺めていたが、「ハバマには700ほど島がある」「無人島は500くらい」「島は安いものだと3億程度」と、本当に詳しくておかしい。食後はiPadで新聞を読んだ。「習主席、軍掌握へ本腰 福建省時代の人脈、中枢に登用」という記事が出ている。軍を掌握し、米軍に対抗しうる組織作りを進めるために、習近平の地方時代――「南京軍区」時代の人脈を登用しているそうだ。習近平の地方経験はここ数代の国家主席に比べて格段に長く、25年にも及ぶ。胡錦濤時代には退けられていた東シナ海防空識別圏構想を習近平が押し進めるのも、東シナ海に向き合う南京軍区の幹部との付き合いが影響しているのではという。色々なことが絡み合って世の中は動いているのだなあ。

 11時、集中して仕事をするべくドトールに出かけた。その道すがら、ケータイを取り出してみると圏外だ。途中でソフトバンクショップに寄ってみると、2日前からケータイが停められていたことが判明する。この2日間、歩いて5分の範囲でしか生活していなかったからまったく気づかなかった。すぐに支払いを済ませる。13時、アパートに戻って昼食。今日もまた麻婆豆腐丼を食す。15時過ぎまで構成仕事をして、池袋に出かける。宮城ふるさとプラザで日本酒(墨廼江と乾坤一)を購入して、副都心線に乗って横浜を目指す。電車の中で構成仕事を完成させて、メールで送信。初めて仕事をする人なので、どういう反応があるか緊張する。

 白楽という駅で電車を降りる。初めて降りる駅だ。改札前でマームの皆と待ち合わせて、サボテン荘にお邪魔する。今日はルイーサと一緒に鍋をするというので、誘ってもらったのだ。まずは荷物をおいて買い出しに出かける。細い路地に商店街が続いている。少し小倉を思い出す。こじんまりした昔ながらの商店の中に、ぽつぽつ酒場が混じっている。「橋本さんにとっては天国だね」と言われる。たしかに、ここを通って買い物に出かけると、2軒くらいハシゴしてしまいそうだ。業務用スーパーで買い物を済ませてサボテン荘に戻っていると月が見えた。ぎょっとするほど大きな満月が出ている。それに気づいた女子たちが、「あ、ちょっと待って!」とポケットを探っている。ケータイで写真を撮るのかと思いきや、皆財布を取り出し、月に向かってしゃかしゃか振っている。満月に向かって笑顔で財布を振ると、お金が貯まると言われているそうだ。初耳である。僕もいちおう皆の真似をしてみる。「橋本さんはちょっと笑顔が足りなかったかもね」と誰かが言う。

 皆で鍋を囲みつつ、先日WOWOWで放送された『小指の思い出』のDVDを観た。藤田さんは落ち着かない様子で、キッチンでポトフを作ったり、ときどき気になって様子を伺いにきたりする。鍋を囲んでいる中に出演者が4人もいるのだが、顔がアップで映ると笑ったり、「もう恥ずかしいからやめようよ」と言ったり、少し見きれると「今映った!」と場が沸いたりする。なんだか親戚の集まりみたいでおかしい。僕は『小指の思い出』を三度観たが、どの回も2階席から観たので、カメラを通じてみると発見が多くある。しかし、それにしても印象がまったく違っている。そして、今振り返ってみても、藤田さんの演出とは思えないほどにスロウで明瞭だ。ふと、隣で観ていた青柳さんが「やっぱ飴屋さんのこと、わからないや」とつぶやく。「わからない?」「うん。ここで飴屋さんが何でこの動きをしてるんだろうとか、わからないことがいっぱいある」――そう話していたけれど、しばらくすると「あ、そっか」と青柳さんは再びつぶやいた。僕には見えないものがたくさんある。『小指の思い出』を見終えたあとのことは、酔っ払っていたせいかあまり記憶に残っていない。