8時に起きて、トーストを食す。賞味期限を過ぎて水分がなくなってしまったのか、いつものように焼いていたら焦げてしまった。午後、知人と一緒にアパートを出た。まずは「ティーヌン」(早稲田店)に出かけ、ビールで乾杯する。いつものように生春巻きとラープ・ムーをツマミに飲んで、最後にトムヤムラーメンを食べた。

 バスで新宿に出る。ルミネとフラッグスをぶらついて、何か買いたくなるようなものはないか探してみる。一番気になったのはベトジャンだ。知人に聞くと、スカジャンやベトジャンが最近のトレンドなのだという(一体どこでそんな情報を知るのだろう)。結局何も買わずに店を出て、都営大江戸線に乗車する。知人には行き先を知らせていなかったのだが、上野御徒町で降り、「湯島天神梅まつり」と書かれたペナントが連なる道を歩いても「どこに行くの?」と言っている。

 湯島天神が近づいてくると、太鼓の音が聴こえてくる。梅まつりでは恒例の白梅太鼓だそうだ。太鼓に聞き入る人だかりを抜け、出店で甘酒を購入する。ベンチに腰掛け、頭上の白梅を眺める。その白梅だけが満開で、メジロが何羽も止まっていた。見物客には高齢者が多いが、皆ケータイで写真を撮っている。せっかくだから何か名物はないかと探したが、和菓子の出店は店じまいを始めていたので、そば焼きを買って食す。知人の地元には防府天満宮がある。防府太宰府天満宮では梅ヶ枝餅が有名だが、湯島ではまったく見かけなかった。

 日が傾いてきて、参拝客の列も短くなってきたのでお参りすることにする。熱心にお参りする人が多く、列はなかなか進まなかった。僕の前の人は、二礼、二拍手を終えると、深々と礼をする。10秒ほど経って頭をあげると、彼はもう一度二礼、二拍手を始めた。先に参拝を終えて待っていた知人と思わず目を見合わせてしまった。特に願い事のない僕が参拝するのも申し訳ないような気持ちになって、2回手を叩いて頭を下げ、すぐに次の人に順番を譲った。

 歩いて上野に出る。不忍池を通りかかると、何やら池の畔で作業している人たちが見えた。近づいてみると、枯れてしまった蓮を回収しているところだ。工事中の看板が出ていて、「蓮刈作業」と書かれている。不忍池では風物詩なのだろう。毎年こんな作業をしていたなんて、知らなかった。こうして人間が手を加える前は、蓮はどうやって片付いていたのだろう?

 アメ横でスカジャンを物色する。よほど買ってやろうかと思っていたが、試着しようかというところで「似合わないからやめなよ」と言われてしまう。値が張ることもあり、購入は見送って「たる松」へ。何杯か熱燗を飲んで、根津の「バー長谷川」でハイボールとたまごサンドウィッチを食べてアパートに帰った。

 酔っ払ってSNSを眺めていると、ある人が『文學界』を入手したと書いているのを見て、絶望的な気持ちになる。その人でさえ発売から1週間経ってようやく手に入れたのであれば、ほとんど誰も読まないだろう。駄目だ、書くということにまた見返りを求めている。誰かのことを見て書くことは、見て書きたいと思うからそうするのであって、相手に評価してもらうためではないのだと自分に言い聞かせる。