朝9時に起きる。午前中は個人的な仕事を進める。今日はテープ起こしだ。昼、ゼンパスタを作ってみる。少し前に、「イタリアでゼンパスタが流行っている」とテレビでやっていた。日本人の女性と知り合ったコックさんが、日本の食材を使ってパスタを作ったところ、話題を呼んだのだという。その食材というのはしらたきだ。しらたきをスパゲティ代わりに使うことで、カロリーを大幅に減らせる上、しらたきは腹持ちもよく、食物繊維が豊富だから便通もよくなるという(食べ過ぎると腸閉塞になるが)。市販のパスタソースをレンジでチンして、水を切ったしらたきと合える。これだけだ。簡単で良いが、しっかり水切りをしても少し水っぽくなる。何よりぬるい。横着をせず、パスタソースとしらたきを混ぜてフライパンで温めたほうがよさそうだ。

 夕方、急な坂をのぼり稽古場へ。最後までたどり着けたので、ぜひ観てもらいたいと言われてやってきたのだ。すさまじいことになっている。何より途中でAさんが朗読するフレーズがすごい。これはあとになって気づいたことだが、それは宮澤賢治の「生徒諸君に寄せる」という詩だ。その詩はまさに、今年のバージョンを象徴しているように感じる。

 諸君よ
 紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
 諸君はその中に没することを欲するか
 じつに諸君は此の地平線に於ける
 あらゆる形の山嶽でなければならぬ

 宙宇は絶えずわれらによって変化する
 誰が誰よりどうだとか
 誰の仕事がどうしたとか
 そんなことを言ってゐるひまがあるか

 新たな詩人よ
 雲から光から嵐から
 透明なエネルギーを得て
 人と地球によるべき形を暗示せよ
 
 新しい時代のコペルニクス
 余りに重苦しい重力の法則から
 この銀河系を解き放て

 衝動のやうにさへ行われる
 すべての農業労働を
 冷く透明な解析によって
 その藍いろの影といっしょに
 舞踏の範囲にまで高めよ

 新たな時代のマルクス
 これらの盲目な衝動から動く世界を
 素晴らしく美しい構成に変へよ

 新しい時代のダーヴヰンよ
 更に東洋風静観のキャレンジャーに載って
 銀河系空間の外にも至り
 透明に深く正しい地史と
 増訂された生物学をわれらに示せ
 おほよそ統計に従はば
 諸君のなかには少なくとも千人の天才がなければならぬ
 素質ある諸君はただにこれらを刻み出すべきである

 潮や風……
 あらゆる自然の力を用ひ尽くして
 諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ

 ああ諸君はいま
 この颯爽たる諸君の未来圏から吹いて来る
 透明な風を感じないのか