9時過ぎに起きる。食パンの賞味期限が3日過ぎていたので、今日はウェルダンに仕上げる。昼はソースかつ丼を買ってきて、そこにボンカレーをかけて食す。以前はソースだけかかっていたのに、今日はタルタルソースがかかっている。これではカレーに合わないので、とりのぞいてからカレーをかけた。テレビをつけると、ギョッとするニュースが流れてくる。

空き家に行政代執行 所有者特定では全国初

 東京・葛飾区は3日朝、70代の女性が所有する空き家が倒壊する危険性があるとして、取り壊し作業を始めた。所有者が特定されている空き家への行政代執行は全国初。

 取り壊しが行われているのは、葛飾区宝町にある木造2階建ての空き家。区によると、この家には10年以上誰も住んでおらず、倒壊の恐れがあったため、所有者の70代の女性に老朽化対策を働きかけてきたものの、「高齢で気力がない」と話したため、今回行政代執行に踏み切ったという。

 倒壊しそうな家が自宅のすぐ隣にあれば「どうにかしてくれ」と思うだろう。でも、だからといって行政に誰かの家を壊してしまうのか。ここ最近、空き家対策の政策がガシガシ進められていることに危機感をおぼえる。自分の両親が亡くなったあと、僕の実家が空き家でぼろぼろになったとして、それが壊されてしまうのは何とも言えないところだ。所有し続けたければリフォームしろと言われるかもしれないが、そんな余裕があるとは限らないし、「リフォームをすれば別の建物だ」と感じてしまうかもしれない。

 別のニュースだと、こんなことを報じている。

“ゴミ屋敷”4軒所有 全国初の氏名公表

 自宅の敷地に大量のゴミをためているゴミ屋敷問題で、福島県郡山市は3日、全国で初めて所有者の氏名を公表した。

 郡山市には大量のゴミをため込む、いわゆるゴミ屋敷が4軒あり、市は3日、4軒すべてを所有する平野昭太郎氏の名前を公表した。「ごみ屋敷条例」に基づいて氏名が公表されるのは全国で初めて。

 世の中がどんどん正しくなっていく。

 18時、なんとか『S!』誌の構成を終わらせて、メールで送信。すぐに身支度をしてアパートを出て、六本木へ。今日は4月で閉店の決まっている「音楽実験室 新世界」で寺尾紗穂かせきさいだぁ&ハグトーンズによるライブが開催される。入場時のワンドリンクとして赤ワインのボトルを注文して、開演を待つ。予約した時点では2組しかクレジットされていなかった気がするが、最初にスペシャルゲストとして鴨田潤(イルリメ)が登場する。ライブを観るのは初めてだが、素敵な弾き語り。心が軽くなる歌声だ。春の陽気に誘われてピクニックにでも出かけているような気持ちになってくる。

 2組目として登場したのが寺尾紗穂だ。その名前を最初に知ったのは、森山さんが編集長時代の『QJ』だった気がする。そのコラムが気になって名前をおぼえて、文春新書から発売された『評伝 川島芳子―男装のエトランゼ』も買って読んだが、失礼ながら歌を聴いたことはなかった。昨年発売された『南洋と私』を読んで以来、再び気になるようになっていたところ、閉店前の「新世界」のスケジュールに名前を見つけ、聞きにきたのだ。

 ライブは予想以上に素晴らしかった。何曲目かに、寺尾紗穂さんは兵庫県の生野に伝わる子守唄を歌った。その子守唄が伝わっていた村は、今はもうダムに沈んでしまった。ダムが作られる前に、おばあさんが歌っているのを採取した譜面をもとに、寺尾さんは子守唄を歌った。生きてきた人間の奥深くに蓄積された何かを、探り当てようとするような歌。聴いていて思い出したのは、先月観た手塚夏子さんの公演における「民俗芸能」の話だった。