朝6時に起きる。今日は距離を伸ばし、これまでと違うルートをジョギングする。根津神社の脇を下り、不忍池を目指す。路地を走っていると、飲みに行きたくなる酒場をいくつか見つけた。まだ7時前だけれど、お年寄りはもう活動している。不忍池をぐるり。公園で体操している老人グループをいくつか見かけた。今は「誰かと一緒に」ということを考えることもできないけれど、年を重ねると誰かと繋がりたくなるのだろうか?

 豆腐とワカメの味噌汁を飲みながら、新聞を読む。今日は日本初の超高層ビル霞が関ビルの完成から五十年ということで、見開きの広告が出ている。それは完成記念式典の写真で、パイプ椅子に座る出席者は、一様にビルを見上げている。午前中はdマガジンで週刊誌を読んで過ごす。昼、鶏ササミほうれん草そば。食後、録画したBS世界のドキュメンタリー『プラスチック・チャイナ』を観た。中国はプラスチック廃棄物を輸入している。そうした廃棄物をリサイクルする山東省の工場が舞台となるドキュメンタリーだ。

 工場主である王坤は20代。農業では食べていけなくなった彼は、汚くてキツい仕事な上に儲からないが、「他にできることがない」とこの仕事を選んだ。その工場では彭文遠という男が働いている。彼はリウマチで畑仕事ができなくなり、山東省まで出稼ぎにやってきた。彼の娘・依姐はまだ幼いが、弟の子守をしながら仕事を手伝う。彼らは日本や韓国、アメリカやヨーロッパから輸入されたプラスチックゴミに囲まれて生活している。そこからリサイクルできるものを拾い集めて再生する。冬がくれば、ゴミの中から見つけてきた、外国の製品のパッケージが印刷されたビニールを壁に貼って寒さをしのぐ。

 ゴミ山は遊び場でもあり、外国の食品のチラシを眺めたり、洋服の値札を切符にしてままごとをしたり、靴のチラシを切り抜いて集めたり。工場主の王坤は「教育を受けさせなければこの環境を抜け出せない」と息子を学校に通わせ始める。だが、出稼ぎ労働者の彭文遠にはそんな余裕はなく、学校に行かせようとしない。王坤は依姐に「うちの養子になれば、お前も学校に通わせてやれる」と誘うが、彼女は俯いたままだ。映像からも彼女が学校に行きたい気持ちは十二分に伝わってくるが、「行きたい」と彼女は言えず、黙ったままでいる。番組の終盤、彭文遠はこどもたちを連れて四川省に帰ろうとするが、切符を買えるだけのお金がなく、呆然と座り込む。気まずい空気を察しないように、何もわかってないふりをするこどもたちの姿。何より驚いたのは、村にはこうした工場が5000以上あるということ。

 午後は『月刊ドライブイン』のテープ起こしを進める。18時半にアパートを出て、すずらん通りにある居酒屋「S」。82歳のお母さんが切り盛りするカラオケ酒場だ。先週このお店を訪れた際、隣に座ったお父さんが「よし、来週木曜日にうまい魚を食わせてやる!」と言っていたので、約束通りやってきた。お店に入るなり、「今日ね、あの社長さん、用事があってこれなくなっちゃったの」とお母さんが言う。「でも、『約束したんだから』って、お魚だけ持ってきたのよ」と、マグロとひらめの刺身を出してくれる。

 これまで瓶ビールばかり飲んできたが、今日は思い切ってボトルを入れる。焼酎のボトルは3500円と良心的だ。まだ他にお客さんがいなかったので、あれこれ話を聞きながら吉四六ソーダ割を飲んだ。やはりこのお店には取材として話を聞きたいところだ。このお店に限らず、界隈には取材したいお店がいくつかある。それをどうすれば面白い形にすることができるだろうか。そのフォーマットさえ考えつけば、すぐにでも取材したいところだ。連載が終わるとなると、取材したいテーマがいくつか浮かんできた。そういうテーマを、これまでは採算度外視で(どう届くかも度外視で)取材してきてしまったけれど、ちゃんとお金になり、多くの人に読まれるようにしなければ駄目だ。そんなことを、この歳になって初めて考えている。

 21時頃帰宅。知人が作ってくれた無印良品グリーンカレーをツマミに、赤ワインで晩酌。楽しみにしていたドラマ『コンフィデンスマンJP』(第1話)観る。脚本が古沢良太だということで期待していたのだが、どうしても乗り切れないところがある。細部が雑なところがある。たとえば航行中の飛行機の扉を突然開けるシーンがあるのだが、そんなことしたらひとたまりもないだろう。もちろんフィクションなのだから科学に基づく必要はないのだが、それを無視するのであれば小気味良さとバカバカしさが必要になる。でも、それほどの演出は感じられず、どうも小気味良くない。長澤まさみ東出昌大小日向文世というキャスティングもハマっていない(東出の大根ぶりは、ある意味ではふさわしいかもしれないが)。ドラマを観終わったあと、知人とふたり、誰をキャスティングすれば面白くできたのかをうだうだ話す。