2月17日

 7時に起きる。あっという間に出発の日だ。身体がずっしり重い。同じタイミングで目を覚ました知人が「昨晩、9時半に寝てたけど」と教えてくれる。まずは昨晩買っておいた焼きそばパンを食べたのち、2月6日のテープ起こしを進める。それをプリントアウトして、風呂に湯を張り、つかりながら原稿の構成を考える。しばらく海外なので、このタイミングで久しぶりに垢すりもする。蕁麻疹なのか、描いた場所が虫刺されのように膨らむことが続いているので、まずはそっと擦ってみて支障がないか確認し、擦る。久しぶりなのでぽろぽろ出てくる。これが“虫刺され”の原因だったのではと疑う。

 風呂上がりに入念にストレッチをして、知人と一緒にアパートを出て、「砺波」。満席だが、今日はここで食べるほかないと思って待つ。5分ほどで席が空き、まずは餃子とビール。知人はずっと『プロフェッショナル仕事の流儀』を眺めているが、僕の席からはテレビが見えず。チャーハンとチャーシューメンとビールを追加し、一ヶ月留守にすることを伝える。アパートに戻り、酔いを冷ましながら荷造りをする。知人は15時過ぎに出かけてゆく。昨日届いていた『P』誌の原稿――僕が海外に行く関係で素早くあげてもらって申し訳ない――に目を通し、少し修正を加える。

 それを送信したところでケータイが鳴る。出てみると「市場界隈」の原稿を送っておいた「大和屋パン」のお母さんだ。あんた、封筒にゴム印で押してある電話番号が間違ってたよと言われ、驚く。間違っていることに気づかないまま一年以上使っている。仕方がないから原稿に赤字を加えて郵便で送ろうとしていたところで、添え状にも携帯番号が書かれているのを見つけ、電話してくれたのだという。昨日のお昼過ぎにお店あてに電話をかけたところ、「まだ時間がなくて読めてないのよ」とおっしゃっていて、僕は海外に出かけてしまうので担当編集の方に電話で確認してもらう必要あルカもと心配していたので、今日連絡をいただけてホッとする。「あのゴム印、早く作り直したほうがいいよ」とお母さんは笑っていた。

 あっという間に日が暮れてしまった。バタバタと荷物をまとめて、パスポートさえ忘れてなければともう一度確認してアパートを出る。千代田線で大手町に出て、鋼鉄ビルディングを小走りで目指す。羽田空港行きのバスにギリギリで乗車すると、ほとんどお客さんは乗っていなかった。19時半に羽田空港国際線ターミナルに到着。まずはポストカードを探す。「伊東屋」で便箋とポストカードを購入したところで、友人のA.Iさんがいるカフェに向かう。フリースを着て、そんな荷物抱えて、旅に出るって感じで羨ましい、とAさんが言う。Aさんは旅に出るわけではなく、皆を見送りにきたのだ。一昨日飲んだとき、皆で出発前に寿司を食べられたらという話になったのだが、よくよく考えれば今日旅に出るのは8人で、その人数で寿司屋に入れるのか、そもそも皆が寿司を食べたいと思うのか自信がなくて、とりあえずAさんと寿司を食べることにする。

 案内されたのは去年の2月、FさんとAさんと一緒に食べた席だ。あのときは国内線で札幌に出かけるのに、わざわざ国際線ターミナルに移動して、時間ぎりぎりまでここで寿司を食べたのだった。Fさんがサーモンばかり食べていたことを思い出して、普段食べないサーモンを食べる。かんぱち、ボタンエビ、あとは何を食べただろう。ビールを1杯、それに熱燗を一本飲んで、最後にまぐろを食べて店を出る。ちょうど集合時刻の21時で、エールフランスのカウンターに向かおうとしたところで、やっぱり私が皆を見送りに行っても、皆「何で?」ってなる気がするとAさんは言って、集合場所の少し手前で別れる。皆と合流して、600ユーロぶん両替して、出国手続きに向かう。今日から三週間は日記を休む。そのあいだのことは、日記ではないけれど、手紙形式のドキュメントに書き残す。