6月21日

 9時、洗濯物を抱えてホテルを出る。ポークたまごおにぎりの店の向かいにあるパンケーキ屋には行列ができている。並んでいるのは8人で、誰もマスクをしていなかった。「金壺食堂」の隣の路地にあるコインランドリーで洗濯。タイマーを42分にセットして、「セブンイレブン」(新天地浮島店)でサンドウィッチとアイスコーヒーを買って、パラソル通りで食す。10時半には乾燥まで終わり、引き返す。市場本通りと市場中央通りの境目あたりに、グループが佇んでいる。ひとりはオリオンビールのTシャツを着て、座り込んでいる。その向こうにだるだるのお腹が見える。通りのTシャツ屋さんで買った服に着替えようと、それまで着ていたTシャツを脱いで裸になっている。Tシャツには「OSSAN」の文字がある。仮設市場の前には「れ」ナンバーの車が横付けされていた。頼むからマナーよく過ごしてくれよと願う。

 しらばくホテルで涼んだのち、12時半に外に出る。坂を下っていると、自転車をこいで上がってくる人とすれ違う。あれ、あの顔には見覚えがと思っていると、向こうもこちらに気づく。やっぱり、「ジュンク堂書店」のM店長だ。挨拶しながらすれ違う。今日は日曜日だから、よく利用する店はほとんど定休日だ。どうしようか。沖縄に来てからまだそばを食べていないことに気づき、「足立屋」の向かいにあるそば屋に足を運んだ。「足立屋」がここでオープンするきっかけになったのは、「このあたりにおいしいそば屋があるから」と訪れたときに、貸し店舗の看板が出ていたからだ。その看板はずっと目にしていたものの、一度も入ったことはなかった。

 自分の除菌ジェルを取り出して、手を除菌して、壁にかかっているメニューを眺める。先客の器のサイズを確認して、大盛りにしようかと考えていると、「はい、430円ね」とソーキそばの並盛りが出てくる。細麺で、あっさりした味だ。食後、昨日取材の約束をとりつけていたお店に立ち寄る。もうちょっと後の時間がよさそうだったので、15時に再訪することにする。仮設市場をのぞくと、ベンチで『るるぶ』を熟読する二人組がいた。魚屋の前には外国人の団体客の姿もあった。中国語で接客する店員さんに、ガイドらしき男性が「上海語も話せるんですか」と驚いている。

 14時40分、「ファミリーマート」(国際通り中央店)。書評する本の中から、書評に必要になりそうなページだけコピーをする。分厚い本だから、酒場で広げづらいので、コピーを取っておく。店の外ではおじさんたちがコーヒー泡盛を飲んでいる。部屋に本を置き、まちぐゎーを散策する。今日は朝からしずかだ。基地で働いている人たちなのか、アメリカの人たちをちらほら見かける。マスクはつけていなかった。15時、取材。45分ほどで終わり、タクシー(第一交通/車番0185)を拾って古島に向かってもらう。「ニコニコレンタカー」(那覇新都心店)でレンタカーを借りる。レンタカー、返却から2時間空けないと次の客に貸し出さないようにしているようだ(最初は16時からのレンタルで申し込んでいて、15時からに変更してもらおうと電話したところ、「手配した車両は14時まで前のお客様が利用される予定なので、16時からしかお貸しできないんです」と言われた)。

 ダッシュボードには「消毒済みです」と書かれた紙が置かれている。車両の操作を案内されるなかで、「エンジンかけるときも、エンジンを切るときも、ここを二回まわしてくださいね」と言われる。聞き流しそうになったけれど、「前に、二回まわさずにエンジンを切ったお客様がいて、バッテリーが上がってしまったことがあるので、お気をつけください」と言われて、不安になり、「二回まわすって、どういうことですか?」と聞き返す。どうやらカチッ、カチッと二段階まわさないとエンジンが停止しないことを伝えたいらしく、ああ、二段階ですね?と聞き返すと、「ああ、そうです、二段階です、そう、二段階。そうだ、二段階。二段階」とちょっと笑いながら店員さんが繰り返す。そんなにしっくりきたならよかったです、と心の中で思いながら、ナビをセットする。

 Bluetoothを接続して、埋火『diorama』を聴く。たしかに夏に似合うアルバムだ。冷房の効いた車内で聴いていると、とても心地よい。糸満方面に向かっていると、瀬底島に「わ」ナンバーと「れ」ナンバーが次々曲がってゆく。16時55分、閉館間際の「ひめゆり平和記念資料館」にたどり着く。まわりの土産物屋はどこも閉まっていた。館内に入り、亡くなった方の写真と、プロフィール、それに亡くなった場所が記された部屋でじっくり過ごす。南部撤退後、自宅がすぐ近くにあったにもかかわらず、最後まで学徒隊と行動をともにしていた子。喜屋武海岸で大波にさらわれた子。避難する同級生たちに「お先にどうぞ」と道を譲り、それが最後の姿になった子。「私は皇国少女だ、殺せ」と米兵に詰め寄り、眉間を撃たれて即死した子。何事にも生真面目な態度であたり、生徒からは「神様」と呼ばれていた平良先生。この先生と学徒たちが荒崎海岸に身を潜めていたところ、6月21日の正午ごろに米兵があらわれ、自動小銃を乱射した。そこで2名が即死する。銃声と悲鳴で騒然とするなか、先生と学徒は手榴弾で自決している。

 17時25分、閉館のアナウンスが流れたので外に出た。資料館には5人くらいだけ見学者の姿があった。米須(西)の交差点を右に曲がる。海抜33メートルと表示されている、海はすぐそこなのに、そんなに高いのか。畑は土が耕されてあざやかな色をしている、そこにホースで水を撒く姿があった。サトウキビが茂っている。海岸線に近づくと、路上駐車の列が見えてくる。サーフボードを手に海に出ていく姿がある。舗装されていない道に入り、採石場の前を通過すると、荒崎海岸の入り口にたどり着く。そこには何台かクルマが駐車されていた。ここにクルマが駐車されているのはかなり珍しいことだ。やはり今日が6月21日だからだろうか。長ズボンで着てよかったなと思いながら、海岸に出る。そこに人影はなかった。人はどこに行ったのだろう。不思議に思っていると、ぼくのあとから海岸にやってきた人はサーフボードを手にずんずん進んでいく。ひめゆり学徒隊散華の地の碑の前に、しばらくたたずむ。30分ほど過ごしたのち、喜屋武岬に移動し、海を眺めた。

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 19時過ぎに喜屋武岬を出て、那覇方面に引き返す。名城ビーチのあたりに、ホテルか何かが建設されているのが見えた。そういえば新しい市場がオープンしたはずだと、糸満公設市場に立ち寄ってみる。7月11日から本格的にオープンすると貼り紙が出ている。近くには駐車場も建設中で、ここが無料で利用できるのであればお客さんも足を運びやすくなるだろう。駐車場の向こうには「足立屋」があった。「足立屋」はツマミが各店舗ごとに特色があるはずなので、お酒は当然飲まないにしても、せっかくだから立ち寄ってみようか。中の様子を覗いてみると、カウンターはわりと埋まっていた。那覇と違って、ここでは外の客が入ってくることに抵抗を感じるお客さんも多いだろうから、入店はあきらめる。路地にはスナックがいくつもあり、あかりが灯っている。いつか入ってみたいなと、通りかかるたびに思っている。20時半にレンタカーを返却し、「ローソン」(おもろまち駅前店)で缶ビールを2本購入し、飲みながら歩く。21時近くに「うりずん」の覗くと、今日はカウンターが結構埋まっている。白百合を2合飲んでから帰途につく。

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