5月10日

 8時過ぎに起きて、ゆで玉子を茹でる。昨日は半熟過ぎたので、今日は8分半茹でてみる。ちょうどいい具合だ。来週は北海道でロケがあるけれど、取材先が決まったと連絡がある。せっかくなので、僕に伝えられることはないかと、あれこれ調べ始める。調べだすと止まらず、『月刊ドライブイン』の頃に集めた資料などを振り返りつつ、ドライブイン越しに描くことができそうな北海道の戦後史をまとめてゆく。昼、昨日と同じようにマルちゃん正麺を食べて、作業を続ける。好評であれば第二弾、第三弾もありうるということだったので、グーグルマップで北海道のドライブインをすべてリスト化して、気になる店はピンの色を変えて、説明を加えておく。それが完成してメールで送信する頃には、すっかり日が暮れている。

 千代田線で新御茶ノ水に出て、成城石井で生ハムやサラダ、野菜チップスに赤ワインを購入して、総武線千駄ヶ谷へ。コンビニで缶ビールを買って、20時ちょうどに目的地にたどり着くと、まだ誰もきておらず、準備が進められているところだ。今日は先月のワークショップとプレゼンテーションの打ち上げだ。意気揚々とやってきたものの、ひとり、またひとりとやってくるうちに、心細くなる。他の方達は同じ業界に携わっている方達だけれども、僕だけその業界とは無関係だ。ただでさえ大人数の飲み会だと「話せる言葉がない」と思ってしまうのに、どうして意気揚々とやってきたのだろう。

 そんな気分が漏れてしまったのか、Yさんがある人を紹介してくれる。『ドライブイン探訪』に興味を持ってくれて、あれこれ聞いてくれる。ひとしきり話したところで、「ちなみに、××さんに取材されたことってあります?」と言われる。取材されたというのを、僕が取材する側かと思ってしまって、いや、取材したことはないですねと伝えると、「××さんがすごく興味ありそうな話だから、もし伝えたら、メルマガとかで橋本さんのことを取材してもらえるかも」と言われる。そんなふうに気を遣って言ってくださることに対して、なぜだか申し訳ない気持ちになる。

 ドライブイン巡りを始めたばかりの頃に、「ああ、それって××さんみたいな仕事だね」と言われたことを思い出す。『月刊ドライブイン』を出し始めたあとにも、ある雑誌の編集長と偶然酒場で会って、「それはどういう雑誌なの、××の後追いみたいな仕事だったら許さないよ」と言われたことを思い出す。ドライブイン巡りを始めた頃にはうまく言葉を返せなかったけれど、今では「そういうことではない」と思っている。それは、優劣の問題ではもちろんなくて、属性の違う仕事だと思っているということだ。だから僕は、その方に評価されることを特別嬉しいことだと思っているわけではなく(「特別視していない」というだけで、誰かに評価されることはとても嬉しいことではある)、どうしてもまごまごした返事になってしまう。2時間半が経ったあたりで、ひっそり帰途につく。