4月1日

 8時過ぎに起きて、米を研ぎ、炊飯器にスイッチを入れる。残りが少なくなってきた。お腹が減ったので、炊きあがりを待たず、冷凍してあったごはんを解凍し、たまごかけごはん。炊き上がったごはん、お昼に食べるぶんを残して、3パック冷凍しておく。コーヒーをたっぷり淹れて、まずは昨日撮影した写真を整理する。少し前に、ムトーさんから「はっちが撮った写真って、はっちだなーって感じがする」と言われたことがある。市場界隈のアーケードを写した写真を見て、そう言われたのだった。自分が撮った写真を自分が見ても、どこにそういう性質があるのか、よくわからない。インスタグラムを眺めていると、未映子さんがストーリーに写真を載せている。「元気だそうとタラを焼いただけでこんなんですよ」と、身がぼろぼろになったタラの姿。その写真に、われらのみえこよ!という気持ちになる。

 午前中は資料として必要な本を読んだ。雨が降っているので気分が晴れない。外出できない日がきたら、どうなってしまうのだろう。テーブルの左手に大きな窓があり、通りに面している。いつもは締め切っているカーテンを開けて、外の景色を眺めながら本を読んだ。時間が経つうちにカーテンを開けていることを忘れ、だらしない姿勢になっていることに気づき、閉める。正午過ぎにスーパーに出かける。ごはんが多めにあるからと、レトルトカレーを手にとる。雨の中をもう一度出かけるのは面倒だからと、晩のおかずも買っておく。すぐに食べる予定はないけれど、冷凍うどん(5個入り)も買ってしまう。このスーパーだと米は2キロのものしか売っておらず、2キロの袋を2つ購入すると買い溜めしているようで気が引けて、米は買わなかった。

 じゃがいもをレンジでチンして、ごはんの横に添え、レトルトカレーをかけて食べる。午後も引き続き読書。資料なので必要なところだけ、斜めに読んでしまう。参議院決算委員会で、首相が「今この時点で緊急事態宣言を出す状況にはないと考えている」と発言したというニュースが流れてくる。この政治家はいつからこうなってしまったのだろう。最初に政権を担った頃から、なにかしらの功績を挙げて歴史に名を残したいという気配が漂っていた。今こそリーダーシップめいたものを国民に示す好機であるにもかかわらず、ひたすら無策だ。いつからこうなってしまったのだろう?――そう考えているうちに、去年の11月で憲政史上最長任期の総理大臣になったことを思い出す。そこでもう糸が切れてしまったのだろうか。

 世が世なら暴動が起きていただろう。最近日露戦争の頃のことを調べていたこともあり、日比谷焼打事件のことが思い出される。しかし、今の状況下では、そんなふうに集まることさえできない。琉球新報の連載のことを考える。すでに取材してあるお店は1軒あるから、それで1回は書ける。でも、渡航できるうちに他にも取材しておかないと、ロックダウンとなればしばらく休載せざるを得なくなる。ジェットスターのサイトを開き、値段を確認すると、ゴールデンウィークあたりでも5千円台のチケットがある。しかし、この時期に「取材のために」と移動することを、どこまで正当化できるか心許なくなる。

 18時頃まで本を読んで、きんぴらごぼうと、こんにゃくの炒め物を作っているうちに知人が帰ってくる。餃子は知人に作ってもらう。つい最近の『マツコの知らない世界』で「お取り寄せ餃子の世界」をやっていたらしく、そこで紹介されていたやりかたで作るのだと息巻いている。焼き上がった餃子は、たしかにいつもよりぱりっとしてる。いくつかバラエティ番組の録画を観る。21時過ぎになって「QJWeb」の記事が公開される。今年の1月26日に、京都・紫明会館で開催された弾き語りライブを皮切りに、カネコアヤノのツアーをずっと追いかけていた。ライブを観て、すぐに原稿を書き始めて、2日後には完成させる――そんな日々を2月の終わりまで続けていた。

 記事には、「取材・文・写真」として僕の名前が入っているが、それとは別に、「編集」とクレジットが入っている。編集とは一体何を指すのだろう。ツアーが始まってから、どの公演でどのポイントに触れながら、どの曲に言及しながら書くのがよいか、ひとりで頭を悩ませながら過ごしていた。リアルタイムで原稿を送り続けても、ほとんど感想らしい感想ももらえなかったけれど、それでも「これを今記録しておかなければ」と書き綴ってきた。この企画も、「ライブのルポを書きませんか?」と依頼があったわけではなく、昨年のパンダ音楽祭で彼女が歌う様を目の当たりにしてから、「この人のことを言葉にしなければ」と思い立ち、いくつかの偶然が重なって本人と話す機会を得て、ツアーに同行させてもらえることになった。交通費や宿泊費が出るわけでもなく、それでも「今観ておかなければ」と急き立てられるように書いたルポの一部がこうして日の目を浴びることになり、嬉しいというより、ほっとしている。

qjweb.jp