8時には目が覚めてしまう。こんなにも眠いのに、いよいよ時差ボケだ。昼、京王多摩川へ。昨日と今日は東京蚤の市が開催されており、そこに「古書信天翁」が出店するということで、納品もかねて遊びにやってきたのだ。想像以上の人出に面食らいつつ、古書店が出店する場所へ。サキ先輩は仮眠をとって休憩中で、一緒に店番をしていたセトさんやムトーさんにご挨拶。お腹が減ったので屋台が立ち並ぶエリアに行ってみると、お昼時とあってどこも行列だ。ホットドッグとビールという気分だったが、その屋台には長い行列がある。並ぶこと自体は問題ないのだが、列がのびた屋台は最後尾の客が「ここが最後尾です」という旗を持って立たねばならず、旗を持つことなく食べられる冷やしわかめうどんを食す。競輪場では選手がふたり、自転車で流している。

 再び古書店街へ。今度はセトさんが仮眠をとっている。あらためて、古書店というのは大変な商売だ。14時10分、会場内で曽我部恵一のライブがあるというので、ビールを買って観に行く。ライブはもうすでに始まっていた。曽我部さんを観るのは久しぶりだが、サングラスをかけて「さよなら!街の恋人たち」を弾き語っている。「夏が来てるってだれかが言ってたよ」。今日にうってつけの歌だ。最後まで聴いていたかったが次の予定があるので、2曲ほどで会場をあとにする。

 新宿を経由して六本木に出て、今日も六本木アートナイト。というよりも、今日も六本木ヒルズアリーナで「TOWER」を眺める。しばらくパフォーマンスは行われないようで、「TOWER」自体も休止しているが、なぜか椅子は埋まっている。かといって作品を眺めているわけでもなく、ただじっと座って次のパフォーマンスを待っている人たちだ。椅子は埋まっているのに誰からも視線を向けられず、ただそこに佇んでいる「TOWER」の姿はとても良かったけれど、誰がアートを必要としているのだろう。作品を観ることで、自分の中の価値基準が揺らいでしまうほどのものがアートではないのか。昨晩から僕が眺めている風景は、そこで発表されるものを眺めて、写真に収めてコンプリートすることを目的にしているとしか思えない人たちが多数派だ。一体このイベントで何が生み出されるのだろう。何が変わるのだろう。日本人は、と限定する必要もないのかもしれないけれど、皆スタンプラリーが大好きだ。それはあくまでコレクションすることが目的であり、アートを観て何かが変わることに期待する人なんてごく少数派だ。

 夕方、最後のパフォーマンスが始まる。みあん(青葉市子と青柳いづみ)が舞台に登場し、歌い始める。その曲を歌うということは知っていたけれど、安室奈美恵の「Say the ward」が印象に残る。昨晩登場した柴田聡子も安室奈美恵の「Baby Don’t Cry」を歌っていたけれど、それは安室ファンだという作家からのリクエストなのだろうか(と勝手に思っていたけれど、そうではなく、偶然その曲を歌うことになったのだと後日知る)。昨日からぶつくさ言いながら過ごしていたけれど、最後に皆で「たてもの」という歌を合唱する姿は印象的だった。